子どもたちのにぎやかな声とともに開催されたのは、子育て中の方向けにライフキャリアやライフスタイルを考えるらしさオフライン。らしさオフラインとしては、初めて子連れOKで、託児スペースを設けての開催となった。子育てと仕事の両立など、迷いの多い方を対象に、スリール株式会社の堀江敦子さんが、著書『新・ワーママ入門 自分らしい働き方・育て方が見つかる』のワークシートを用いながら、「モヤモヤ」を書き出すワークや自分の理想の姿の見つけ方など、これからの生き方のヒントを教えてくれた。

講師:堀江 敦子さん

スリール株式会社代表取締役社長。日本女子大学社会福祉学科卒業。大手IT企業勤務を経て、25歳で起業。両立支援や意識改革を得意とし、企業の研修・コンサルティング、大学・行政向けにライフキャリア教育を実施。「子育てしながらキャリアアップする人材・組織を育成する」をテーマに、人材育成事業を展開。内閣府男女共同参画会議専門委員、厚生労働省イクメンプロジェクト委員、東京都文京区ぶんきょうハッピーベイビー応援団委員など、複数行政委員を兼任。千葉大学教育学部の非常勤講師も務める。著書に『自分らしい働き方・育て方が見つかる 新・ワーママ入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

大学生から企業のマネジメント層まで「悩んでいる」

「アンケートによると、みんなキャリアに悩んでいるんです」

と、堀江さんは切り出す。堀江さんの会社スリールが実施したアンケート調査によると、大学生の71.2%が「将来が不安」、出産経験のない働く女性の92.7%が「育児と仕事の両立が不安」と感じているそう。また、企業側も「マネジメントが困難」といった悩みがあるとのこと。

特に、働く女性には「復帰した後の生活が想像できない」「仕事を頑張りたい気持ちがあるけど、どのようにバランスを取れば良いのか分からない」「今後どんな風に子どもは成長するのだろう?」といった悩みが多い。

参加者に対して「いま、どんな気持ちでいるかを共有してみてください」と堀江さんが示したのは、全員に配られている「モヤモヤ吐き出しシート」。

・今の満足度は何点?
・理由:
・どんなことにモヤモヤしている?
・仕事のこと:
・プライベートのこと:
・将来のこと:

上記の項目を数分で書き、隣の人とシェアする時間が設けられた。

ライフキャリアは3つの軸で考える

その後で、堀江さんは脳の構造について紹介した。

「キャリアのこと、子どものこと、周囲の環境について、すべて同時に考えていませんか? すべて同時に考えると、悩みが複雑化してしまいます。ライフキャリアを考える上では、『自分の特徴』『子どもの特徴』『サポート環境』をそれぞれ整理することが大切です」

その中で、まずは、「自分の特徴」から考えていく。

「人が行動を起こせない原因は、『なりたい姿』や『アクション』が明確でなく、今できる状況にないこと。だから、なりたい姿を描いて、今の自分からなりたい自分へ向かうためのアクションを明確にする必要があります」

そこで、今日のオフラインを通して、自分がどんなワーク&ライフを望んでいるかを描き、子どもも自分もハッピーになる方法を知る。そして、なりたい自分になるための第一歩にしてほしいと堀江さんは語る。

ワークをする前に、キャリアの定義を解説した。「狭義のキャリア」は職業生活上の職業内容や経歴、地位や役割などを指していたが、「広義のキャリア」では「生涯において個人が果たす役割」を指すという。例えば、「こども」や「親」「学生」「余暇人」「市民」「家庭人」などだ。それは、少子高齢化や働き方の多様化といった社会背景に加えて、変化の時代において自己の確立が必要とされていることに起因する。

広義のキャリアが意味する「人生の役割」は、「労働」「愛」「学習」「余暇」という4つの役割がある。

「この4つのすべてがキャリアになり、自分の価値につながっていきます。私は、前職のマーケティングリサーチ、親の介護、大学時代に学んだ福祉、余暇でやってきた小さな子どものお世話、すべてが今の会社にいかされています」

と堀江さん。すべてがキャリアになっていくという実例だ。

VISIONシートとアクションシートでこれからの自分を描いていく

参加者の方それぞれの役割を形作っていくために、まずは用意された「VISIONシート」に3年後の姿を書くワークを実施した。自分やパートナーの年齢などを書くスペースの下には、自分の願望を妄想で書く欄がある。

この欄は、9つのマス目からなり、「仕事以外での交友関係」「仕事で関わる人」「趣味・学び・熱中しているもの」「住まい・地域について」といった項目に分かれている。言葉で書く他、「絵」も描いた方がなおいいという。3年後のイメージが具体化しやすく、感情が前向きに動かされるからだという。

(『新・ワーママ入門 自分らしい働き方・育て方が見つかる』より抜粋)

具体的に項目を埋めていくワークの時間をとった後、隣の人とシェアする時間が設けられた。

次に、VISIONシートに対する「アクションシート」。ここには、VISIONに向かうために、次の項目を記入していく。

・新しく始めたいこと
・続けること
・やめること
・知りたいこと(今わからないこと/疑問なこと)

「洗い出せれば後はやるだけです」と堀江さんは言う。

両立神話の誤解を解き、人を巻き込んでいく

終盤では、堀江さんが著した書籍にも紹介されている「両立神話」などを解説した。両立神話とは造語で、「夫は外で働き、妻は家の中にいるのが日本の歴史的な姿だ」「3歳までは母親が子どもを見ないと発達に影響がある」など、よく言われるが実は誤りであり、働く女性を苦しませる原因となる言説のこと。ひとつひとつの誤解を解いていくことが、子育てをしながら働く女性の苦しい気持ちを減らしていくことになる。

さらに、キャリアを考える3つの軸のうち、「自分の特徴」以外の2つ「子どもの特徴」「サポート環境」については、子育ての「プロジェクト進行表」や「病気など緊急時のセーフティネット」などを用意することを推奨した。

病児保育などのセーフティネット以外に、サポート環境として人を巻き込むことが必要になる。その際には、次の順序で話すことが大事だ。

1.Vision(理想の想い)を話す
2.それに向けて、自分は頑張っているけど難しいことを話す
3.相手に協力してほしいこと、実施してほしいことを話す
+相手へのメリットを話す

「パートナーに協力をしてもらいたい場合などは、このようにしてプレゼン、交渉をしてみてください」と堀江さん。子どもも自分もハッピーになるために、これらのワークで「なりたい自分になるための第一歩」を踏み出してみよう。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)
カメラマン:坂脇 卓也(さかわき たくや)

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