自分で考える力を日常生活のなかで養うための、ちょっとしたヒントをお届けするこのコラム。前回のコラムでは考えるクセを身につけるためのヒントをお伝えしました。新しい生活様式がこれからのスタンダードになりそうななか、先が見えない不安で心がしんどくなることもあるでしょう。今回は前向きになるために、あなたが『いま』できることをお伝えします。

コラム執筆:狩野 みきさん

慶應義塾大学、東京藝術大学、ビジネス・ブレークスルー大学講師。考える力イニシアティブ THINK-AID 主宰、子どもの考える力教育推進委員会代表。慶應義塾大学大学院博士課程修了。20年以上にわたって大学等で考える力・伝える力、英語を教える。著書に『世界のエリートが学んできた「自分で考える力」の授業』『ハーバード・スタンフォード流「自分で考える力」を引き出す練習帳』(PHP研究所)『プログレッシブ英和中辞典』第5版(小学館)など多数。TEDトーク “It’s Thinking Time”(英文)。二児の母。

「自分で考える」コラムも今回が最終回です。今回は、以下の2つの質問について考えながらお読みください。

質問1 今日、自分の力でどうにかできること・変えられることは何?
質問2 将来、自分はどうなっていたい?

なぜこの2つについて考えていただくかというと、閉塞感いっぱいの毎日に、(ほんの少しだけでも)勇気が湧いてくるはず、と信じているからです。

コロナで大変だけれど、少しの間がんばれば以前の生活が戻ってくる…5月ごろまではこう信じて生活していた人は多いと思います。ところが「少しの間」は少しではなくなり、いつまでたっても先が見えず、「正直、疲れたよ」と弱音を吐きたくなることもあるかもしれません。

以前、ある精神科医から「弱音を吐くこと、ネガティブになることは全然悪くない!」と言われたことがあります。思いっきり落ち込むことで先に進むことができる、ときにはネガティブもいいんだよ、とおっしゃっていました。

私も「疲れたよ」と叫びたくなることが定期的にあります。リモートでの仕事は慣れないし、それに伴って事務仕事は増えるし、こんな制約ばかりじゃワクワクする予定もないし—と思い続けて数ヶ月。

ところが先日、ネットでハッとするアドバイスを目にしました。

「自分の力でどうにかできること・変えられることを日々、ちゃんとやること。そして、『自分は将来こうなっていたい』という未来予想図を描いて意識を向けること」

これは、『TED 驚異のプレゼン』などの著者として知られるカーマイン・ガロ氏が、インターネット・バブル後にとある会社のCEOから言われた言葉だそうです。

この言葉はコロナ禍の今でも十分応用が効くと思います。ソーシャル・ディスタンス、マスク着用などでできないことがどんなに多くても、自分の力で“できる”ことは何か、考えてみる。と同時に、将来どうなっていたいか、未来予想図を具体的に描く。

実際に考えてみると、「あれもこれもできないと思っていたけど、実は『できる』ことはけっこうあるのかも」「将来に向けて、がんばろう」と前向きになれる気がします。みなさんにもぜひ考えていただきたいと思い、「2つの質問」として冒頭に書かせていただきました。みなさんはどんなことを思いつきましたか。

質問1の「今日、自分の力でどうにかできること・変えられること」には何があるでしょうか。たとえば、スマホの壁紙を変える、食卓の椅子の位置を変える、とか。家で思いっきりおしゃれしてみるとか。えー、そんなちっぽけなこと?と思うかもしれませんが、「そんなこと」だけでも、目に映る景色が変われば気持ちも変わります。「できないことだらけ」と思っていた毎日だけれど、実は自分で選択できることが多くあることに気づけます。

質問2の「将来、自分はどうなっていたい?」は、「ロサンゼルスに別荘を持つ」なんて壮大な夢でも、「来年は給料1割アップ」のようなものでも何でもOK。「いつ」「どこで」「どのように」をなるべく具体的に考えると、ますます気持ちが上がりますよ。

未来予想図を考えたら、その予想図に近づくために今できることは何か、を考えます。ちなみに私の未来予想図は、「お気に入りの服を着て、レストランで美味しいものを食べながら、友人と『コロナのときは大変だったね』と笑顔で話すこと」です。これを将来実現するためには健康でないといけないし、自由にできるお金も必要だし、レストランに存続してもらわないといけない。そのためには体調管理をしっかりして、社会がこれ以上大変なことにならないようやるべきことをやり、仕事をしっかり続けていけるようにしなければなりません。

コロナ禍を生きていくためには、情報とどう付き合うか、も大事です。ウソだか本当だかわからない情報に流されないための、効果的な質問を用意しておくこと。たとえば、「xxがコロナに効く」などの情報を目にしたら、「もしもこれを信じたらどうなる?」「人にシェアしたとして、責任を負える?」「実行したらどんな危害がある?」「自分以外の人はどう思うかな?」などと自問してみてください。

ストレスを感じているときは判断が鈍るものです。ストレスの多い毎日でも、「この質問さえ投げかければ、自分でちゃんと考えられるし、前向きになれる。だから大丈夫」と思えるといいですね。クリティカル・シンキングは、辛いとき、苦しいときに自分を守ってくれる、お守りのようなものなのかもしれません。このコラムを通じて、あなたが少しでも明るい気持ちになれたらうれしいです。

第1回:「今だからこそ、相手の立場を想像する」
https://www.r-staffing.co.jp/rasisa/entry/202006303425/

第0回:「クリティカル・シンキングはなぜ必要なのか」
https://www.r-staffing.co.jp/rasisa/entry/202007143501/

第2回:「さまざまな視点から考える」
https://www.r-staffing.co.jp/rasisa/entry/202008113933/

SPECIAL SITE
ABOUT

あなた「らしさ」を応援したいWorkstyle Makerリクルートスタッフィングが運営する
オンラインマガジンです。

JOB PICKUPお仕事ピックアップ

リクルートスタッフィングでは高時給・時短・紹介予定派遣など様々なスタイルの派遣求人をあつかっています

Workstyle Maker

『「らしさ」の数だけ、働き方がある社会』をつくるため、「Workstyle Maker」として働き方そのものを生み出せる企業になることを目指しています。