企業が「SDGs」に取り組むメリット|SDGsとCSRの違い

2021.08.31

企業が「SDGs」に取り組むメリット|SDGsとCSRの違い

ビジネスシーンにおいて「SDGs」という言葉に接する機会が増えてきました。企業としてSDGsに取り組むことの意義やメリットは、どこにあるのでしょうか。この記事では、SDGsとは何かをあらためて整理したうえで、企業が今後、SDGsにどのように取り組んでいくべきかを考えてみたいと思います。

SDGsとは

SDGs(エス・ディー・ジーズ)は、2015年9月に開催された第70回国連総会において、全会一致で採択された「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。

貧困や格差の拡大、ますます深刻化する気候変動など、地球上に山積する多くの課題を共有し、この星に生きるすべての人々の未来に光をあて、希望をもたらすための取り組みです。

2030年までに達成すべき世界共通の目標

2015年9月の国連総会では「持続可能な開発サミット」が開催され、「私たちの世界を転換する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。その前文には「このアジェンダは、人間、地球及び繁栄のための行動計画」であり、「より大きな自由における普遍的な平和の強化を追求するものである」ことが記されています。

また、193のすべての国連加盟国によって採択されたこのアジェンダには、2016年から2030年までの15年間に、国際社会が取り組むべき人類共通の課題として17の目標が掲げられています。それがSDGs(持続可能な開発目標)です。

「持続可能な開発」とは

「持続可能な開発」は、環境と開発に関する世界委員会(World Commission on Environment and Development)が、1987年の国連総会に提出した報告書のなかで取り上げた概念で、「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」を意味します。

現代の人々の欲求を満たすための開発が、将来の地球環境を破壊し、経済成長を阻害するものであってはなりません。そのため、環境と開発が相反するものと考えるのではなく、むしろ共存し得るものとしてとらえた節度ある開発が重要になります。

そして「持続可能な開発」には、発展途上国、先進国といった区分を越えて、すべての国々のあらゆる人々が協調し、それぞれが当事者として主体的に取り組むことが大切であり、その成果として誰一人取り残さない豊かな社会の実現を目指しています。

「社会」「経済」「環境」の課題に取り組む17の目標

「2030アジェンダ」では、以下のとおり17の持続可能な開発目標(SDGs)を掲げ、その下には169のターゲット、232の指標を定めています。
※下表は17の持続可能な開発目標/国際連合広報センターHP「持続可能な開発目標」および外務省HP「持続可能な開発のための2030アジェンダ」より構成

「社会」の目標 ◇貧困をなくす
◇飢餓をゼロに
◇すべての人に健康と福祉を
◇質の高い教育をみんなに
◇ジェンダー平等を実現しよう
◇安全な水とトイレを世界中に
「経済」の目標 ◇エネルギーをみんなに そしてクリーンに
◇働きがいも経済成長も
◇産業と技術革新の基盤をつくろう
◇人や国の不平等をなくそう
◇住み続けられるまちづくりを
◇つくる責任つかう責任
「環境」の目標 ◇気候変動に具体的な対策を
◇海の豊かさを守ろう
◇陸の豊かさも守ろう
「枠組み」の目標 ◇平和と公正をすべての人に
◇パートナーシップで目標を達成しよう

持続可能な開発を実現するためには「社会」「経済」「環境」という3つの領域の課題に取り組む必要があります。また、これらの課題解決に向けた取り組みを相互に連携し、調和させるための「枠組み」も不可欠です。

「社会」の目標

貧困と飢餓をなくすことは持続可能な開発には必須の要件であり、すべての人々により多くの機会を提供することで、格差を解消し、生活水準の向上に努めなければなりません。これらの目標は、発展途上国への支援のようにとらえがちですが、子どもの貧困や格差の是正、ジェンダー平等などは、日本においても無縁のものではありません。

「経済」の目標

すべての人が経済成長の恩恵を受けて、豊かさに満ちた暮らしを実現するための取り組みです。エネルギーやインフラの整備、まちづくりに関する課題などでは、日本がこれまでに積み上げてきた技術や知見を活用して、世界をリードしなければなりません。

「環境」の目標

気候変動への対処や天然資源の管理など、地球環境の保護に向けた取り組みになります。発展途上国と先進国では必ずしも利害が一致しない課題ですが、地球を破壊から守るために、国境を越えた協力体制の確立が求められています。

「枠組み」の目標

持続可能な開発を継続するための「枠組み」を示しています。平和で公正な世界を維持し続けること、すべての国のあらゆる人々が当事者として主体的に参加し、協調しあえるパートナーシップを築くことが、持続可能な「社会」「経済」「環境」の実現につながります。

以上のように17 の目標は、貧困や飢餓という課題から、気候変動、技術革新、働きがいといった課題まで広範に設定されています。そして、これらの目標は、各国の発展状況に関係なく取り組むべき、包括的で普遍的な内容であるといえます。

SDGsとCSRの違い

SDGsには、それを採択した国々の政府だけではなく、世界中の企業や個人が広く参画し、課題解決に向けた貢献が求められています。企業の社会的な貢献活動には、すでに多くの企業が取り組んでいるCSRがありますが、SDGsとはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、まずCSRについて整理し、SDGsへの取り組みがCSRに与える影響について見ていきたいと思います。

CSRは、企業の社会市民としての貢献

CSRは、Corporate Social Responsibilityの略称で「企業の社会的責任」と訳されています。企業が取り組むさまざまな社会活動のなかで、お客様や従業員、株主、投資家をはじめ、ビジネスパートナーや国、地方自治体、地域社会などの多様なステークホルダーから寄せられる声を聞き、その期待に応えることで、信頼を得るためにおこなう活動を「CSR」と呼んでいます。

企業も社会を構成する一員であると認識し、企業活動が社会に与える影響に責任を持って行動することで、広く社会からの信頼を獲得し、企業価値の向上と持続的な成長につなげていこうという考え方です。

この「CSRへの取り組みが企業価値や業績の向上につながる」という考え方はけっして理想や夢物語ではなく、社会的責任への取り組みが評価されている企業(銘柄)を選定した「CSRファンド」と呼ばれる投資信託が存在していることからも、企業にとって実利を伴う取り組みということがいえるでしょう。

SDGsへの取り組みはCSRへつながる

企業がCSRに積極的に取り組むのは、その行動がステークホルダーの信頼獲得につながり、自社の持続的な成長を促すものであるからといえます。また、それぞれの企業の持続的な成長は、結果として社会全体の持続性を向上させることになります。SDGsも持続可能な社会づくりをゴールとしているため、この点ではCSRとSDGsは同じ目的を持っているといえます。

CSRとSDGsとのあきらかな違いは、CSRに取り組む企業が、社会やステークホルダーの期待を察知して、信頼獲得につながる自らの行動を自由に選択できるのに対して、SDGsでは解決に向けて取り組むべき課題が、17の目標と169のターゲットによって詳細に明示されている点です。企業は自ら推進するビジネスをとおして、SDGsの達成に貢献できる道を探りながら行動していくことになります。

SDGsが掲げる17の目標は、国際社会が抱える地球規模の課題であり、SDGsの達成に向けた企業の取り組みは、社会やステークホルダーからの信頼を育み、CSRへとつながるものと考えられます。

たとえば、食品ロスの削減に取り組む企業は、資源保護や食品流通の合理化といった社会課題の解決に貢献する存在として、顧客や取引先、地域社会からの信頼を得ることになるでしょう。このようにSDGsに掲げられた目標は、企業がCSRに取り組む際の指針にもなります。

企業がSDGsに取り組むメリット

日本でのSDGs認知度は年々向上

SDGsへの参画意識が世界的な高まりをみせるなか、日本においてもSDGsに取り組む企業が増えています。日本でのSDGs認知度は年々向上し、社会や地球環境に配慮した事業を通じて、持続可能な社会の実現に貢献することを、企業理念として打ち出す企業も見られるようになりました。また、コーポレートサイトなどに自社のSDGsへの取り組みを公表する企業も多くなっています。

しかし一方では、SDGsに興味はあるものの、具体的な行動に踏み出せないでいる企業が多いことも事実です。ここでは、そのような企業がSDGsに取り組む直接的なメリットをご紹介していきます。

新しいビジネスの機会創出

SDGsが掲げる17の目標、169のターゲットに示された課題に目を向け、それらを解決するための製品やサービスの開発に取り組むことは、企業にとって新たな可能性を広げることにつながります。問題解決のために新規事業に参入したり、パートナー企業との協働の道を拓いたりすることによって、新たな事業機会を獲得することが期待できます。

企業イメージの向上

SDGsが掲げる目標は、社会全体で取り組むべき地球規模の課題です。そうした課題に真摯に向き合う姿は、社会に対する責任を果たす企業として高く評価され、企業イメージの向上につながります。顧客や投資家への効果的なブランディングとなり、売上や利益を向上させ、資金調達を容易にします。また、そのような企業で働いているという自負が、従業員の意識やモチベーションを高めることになります。

コストの削減

環境への負荷を抑えるために、省資源や省エネルギー対策を徹底することは、人や環境にやさしい企業としての社会的な信頼を増すと同時に、コストを削減する効果も期待できます。また、働きがいのある職場環境の整備に取り組むことは、従業員の満足度向上にもつながり、人材の定着率が高まれば、採用コストを抑えることも期待できるでしょう。

まとめ

企業が各方面のステークホルダーから信頼を得るためにも、CSRと同じように「自発的に社会的責任を果たす姿勢」で、世界的な課題であるSDGsに取り組んでいく必要があります。この地球に暮らす一人として、持続可能な社会の実現のために何ができるのかを、私たち一人ひとりが考えていきたいものです。

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