ブラックボックス業務を可視化。BPOで進める現場改革

※本記事は日経ビジネス電子版Special 2025年9月19日掲載の内容を当社で許諾を得て公開しております。

リクルートスタッフィング
BPOデザイン部 部長
2003年リクルートスタッフィング入社。営業推進部で営業予算管理や部門管理会計の仕組みを強化したのち、カスタマー戦略部長・デジタルコミュニケーション部長を歴任。2024年より現職。
( 聞き手:日経ビジネス発行人 松井 健 )
労働力不足とDX推進によりBPO需要が加速
ー まず、御社が展開するBPO事業の概要についてお聞かせください。
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)は、企業の業務プロセスを一括して外部に委託するサービスです。派遣会社が人材派遣サービスを通じて労働者を派遣するのに対し、BPOは業務全体を包括的に引き受け、運用まで担う点が特長です。当社では、人材派遣事業で培った現場理解力と業務設計力を生かし、業務の棚卸しから設計、運用までを一貫して提供しています。特に、属人化しやすい「非定型業務」や、現場対応が不可欠な「オンサイト業務」に強みを持ち、労働力不足やDX推進の流れを背景に、急速にニーズが高まっています。
ー 「非定型業務×オンサイト」領域にはどのような課題があるとお考えですか。
DX(狭義のデジタル化)とは本来、業務を標準化し、蓄積したデータを活用して自動化へとつなげるものです。ところが、多くの企業がその入口でつまずいています。業務フローが可視化(マニュアル化・手順書化)されず、属人的な“ブラックボックス”状態に陥っているのです。「非定型業務」とは、こうした標準化されていない業務のことを指します。文字通りの純粋な非定型業務は委託が難しいかもしれませんが、現状は可視化・定型化されていないものの、丁寧に分解すれば手順化できるケースは少なくありません。一方、「オンサイト」はリモートで完結できない現場作業を伴う業務です。こちらも業務を分解し、デジタル化やチーム体制の再設計を行うことで改善が可能になります。
業務調査はDX停滞を打破する架け橋
ー 御社はBPO導入の前段として「業務調査」に力を入れています。その重要性を教えてください。
業務調査を行わずにデジタル化や委託を進めても、本質的な生産性向上は望めません。現状の業務構造を変えないままでは、委託やIT活用の余地がある潜在的領域に踏み込めないからです。このDX停滞を打破する“架け橋”が業務調査です。
当社の業務調査では、顧客先社員へのインタビューを通じて業務を洗い出し、分類・定量化・優先順位付けを行います。そのうえで、正社員・契約社員・派遣社員・BPO(委託)のいずれが適切かという出口を見極め、一部デジタル化も含めた最適な組み合わせに落とし込みます。コンサルのようにゼロから全てを設計するのではなく、現場の課題を踏まえて、誰がどの業務をやるのが効率的か、という出口に合った実行可能性の高い提案を行えるのが特長です。
ー 実際に業務調査を経てBPOに至った事例を教えてください。
ある食品業界企業では、営業社員が在庫管理や受発注、納品管理、問い合わせ対応を抱え、営業のコア業務である顧客折衝に時間を割けていないという悩みを抱えていました。事務社員にはベテランが多く、属人化して業務の割り振りが標準化されていないという課題もありました。そこで業務の切り分けを目的とした業務調査を行った結果、営業社員の業務のうち約55%がノンコア業務として委託化が可能と判明しました。また調査の中でフローの見直しポイントも分かり、社員の方がそれぞれのやり方で実施していた受注報告のメール作業もRPAツールを使うことで、月間120時間の短縮となり、生産性向上へとつながりました。

規制と業務負荷が生む、新たなBPO市場
ー 今後、どのような業界にBPOの需要拡大を見込んでいますか。
不動産や建設業の現場事務、旅行業、金融などの業界は法制度に基づく事務手続きがあり、社員がコア業務以外に時間を取られるというケースもあります。また、昨年11月に施行された「フリーランス新法」により、今後は契約書作成や履歴管理などの手続きが増えることが予想されます。こうした煩雑な契約管理や文書管理は当社が得意とするBPO領域であり、需要の拡大を見込んでいます。
ー 今後の展望をお聞かせください。
労働力不足とDX推進は今後ますます加速します。しかし、部署ごとのタコツボ化や個人への業務の属人化を放置すれば、真の業務改革には至りません。より広い視野で業務を横断的に見直し、フラットに業務フローを設計しなおす必要があります。当社の業務調査は、その出発点となる材料を提供するものです。現場に根差した調査で「この業務を横串にさせるのでは」という具体的な提案につなげ、社内調整を後押しします。こうした動きを促す“改革のきっかけ”として、ぜひ当社の業務調査を活用していただければと考えています。

1994年筑波大学卒業後、日本経済新聞社に入社。日経産業新聞編集長などを経て、24年より日経ビジネスなど経営誌の発行人を担う経営メディアユニット長。