派遣スタッフのテレワーク実態調査|生産性の向上を目的においた設計を

2020.12.03

派遣スタッフのテレワーク実態調査|生産性の向上を目的においた設計を

目次

近年、テレワークという働き方が大きな注目を集めるようになっています。リクルートスタッフィングでは、コロナ禍で派遣スタッフにテレワークを導入した企業と、テレワークを経験した派遣スタッフに緊急アンケートを実施し、派遣テレワークの実態調査を行いました。テレワークの前と後とでは、感じたメリット・デメリットに違いはあったのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

コロナ禍での派遣テレワーク実態を緊急調査

IT技術を活用して自宅やサテライトオフィスなど、オフィス以外で働くテレワークが広がっています。少子高齢化による労働人口の減少により深刻な人手不足に陥っている今、多様な働き方を認めることで多様な人材を活用することは、企業にとって事業継続を左右するキーポイントのひとつといえるでしょう。

2020年は、新型コロナウイルス感染拡大という未曾有の危機に直面し、計らずしてテレワーク導入の勢いが一挙に加速しました。その流れは、自社の社員にとどまらず、派遣スタッフにも及んでいます。

そこでリクルートスタッフィングは、派遣スタッフのテレワーク実態を把握するため、派遣スタッフにテレワークを導入した企業と、実際に在宅勤務を経験した派遣スタッフを対象にアンケートを実施しました。

調査概要


◇調査目的

テレワークを経験した派遣スタッフおよび派遣スタッフをマネジメントする派遣先担当者の業務の生産性やコミュニケーションの変化など実態を把握することにより、テレワーク活用のあり方を考える
◇調査対象者

テレワークを経験した20〜60代の男女派遣スタッフ。n=7,093
テレワーク経験のある派遣スタッフのマネジメントをし、かつ自身もテレワーク経験のある20〜60代の派遣先担当者(経営層、管理職、一般の正社員)。n=500
◇調査対象企業

従業員100人未満、100〜299人、300〜999人、1000人以上
◇調査期間

派遣スタッフ:2020年6月24〜30日、派遣先担当者:2020年7月8〜10日
◇調査方法

インターネット調査

テレワークを導入した派遣先企業・派遣スタッフの割合

コロナ禍でテレワークを経験した派遣スタッフに、「コロナ以前にもテレワークで業務をしたことがあるか」を聞きました。また派遣先企業には、テレワークを導入した時期について聞きました。

派遣スタッフの約9割、企業の約8割がコロナ禍をきっかけに初めてテレワークを実施

【派遣スタッフへ】今までテレワークを経験したことはありましたか?(n=7,093)  右【派遣先企業担当者へ】テレワークを導入した時期はいつですか?(n=2,061)

新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに、約9割の派遣スタッフが初めてテレワークを経験、8割近くの派遣先企業が初めてテレワークを導入したことがわかりました。企業側も働く側も、コロナ禍に後押しされて新しいワークスタイルに挑戦したケースが多いようです。

<派遣スタッフ>テレワーク実施前に不安だったこと

派遣スタッフのほとんどが「初めてのテレワーク」という状態でしたが、テレワークを始める前にどんな不安を抱いていたのでしょうか。

【自宅の環境」【業務効率】【「コミュニケーション】に不安

【派遣スタッフへ】テレワークで就業するにあたり、どのような不安がありましたか?(複数回答)

「ネットワーク環境やパソコン、コピー機など、ハード環境がオフィスのように整っていない自宅で、オフィスと同じように仕事をこなすことができるのか」「独立した仕事部屋がなくても仕事に集中できるのか」など、自分の生活の場に仕事を持ち込むことへの不安を多くの派遣スタッフが感じていたようです。

<派遣先企業担当者>テレワーク実施前に不安だったこと

一方、派遣スタッフを受け入れている企業の担当者は、派遣スタッフのマネジメントにおいてどのような不安を抱いていたのでしょうか。

【業務効率】【業務・コンディション管理】【コミュニケーション】に不安

【派遣先企業担当者へ】テレワークで、派遣スタッフのマネジメントをするにあたり、どのような不安がありましたか?(複数回答)

「時間を持て余してしまうことはないか」「進捗状況を把握できるか」「仕事の指示を的確に行えるか」など、顔が見えない派遣スタッフに遠隔で仕事を依頼する側の悩みが見て取れました。

また、離れた場所で仕事をしていると、派遣スタッフのちょっとした悩みや体の不調に気づきにくくなります。「メンタルや心身のコンディションの把握」のほかに、「派遣スタッフが相談しにくくなるのでは」との不安も見られました。

<派遣スタッフ>テレワークを実施してみて実感したこと

では、派遣スタッフは実際にテレワークを実施してみて、どのようなことを感じたのでしょうか。リアルな感想も聞いてみました。

【生産性】約6割は「どちらともいえない」「在宅のほうが業務が進む」と回答

【派遣スタッフへ】テレワーク実施中の業務の進み具合(生産性)について、オフィス勤務時と比較して答えてください(単一回答、n=7,093)

「オフィスのほうがネットワーク環境がいい。自宅ではタイムラグや処理が落ちることがある」
「オフィスだと、すぐに人に聞けるから」などの理由から、「オフィスのほうが業務が進む・やや進む」答えた人は約4割でした。自宅のハード&ソフト環境に起因する理由が目立っています。

それに対して、「在宅のほうが業務が進む・やや進む」「どちらともいえない」という回答が半数以上ありました。
「電話応対もないし、業務に集中できる」
「満員電車のストレスがなくなったので疲労感が減った」
など、目立ったのはおもに時間的かつ精神的なメリットだったようです。

【業務指示】約6割が「どちらともいえない」「在宅のほうがわかりやすい」と回答

【派遣スタッフへ】勤務先からの業務指示のわかりやすさ(方法、頻度、指示される内容など)について、オフィス勤務時と比較して答えてください(単一回答、n=7,093)

業務指示のわかりやすさについては、
「言葉のほうが文字よりニュアンスが伝わりやすい」
「近くにいるので相談がてら声をかけやすい」
などの理由で、「オフィスのほうがわかりやすい・ややわかりやすい」と答えた派遣スタッフが約4割いました。一方、
「わからないことは常にチャットで聞くので、オフィスとあまり変わらなかった」
「業務指示が書面で残るのでリマインドしやすい」
など、テレワークに好印象を持った人もいたようです。

<派遣先企業担当者>テレワークを実施してみて実感したこと

一方、 派遣先企業の担当者は、テレワークにどのような実感を持ったのでしょうか。派遣スタッフと同様の質問を投げかけてみました。

【業務効率】約8割の派遣先企業が、「どちらともいえない」「在宅のほうが良くなった」


【派遣先企業担当者へ】テレワークと通常勤務(対面)との比較 業務効率は?(単一回答、n=500)

派遣先企業の担当者に、業務効率についてオフィスワーク時との比較で尋ねたところ、15.6%が「在宅のほうが悪くなった」、約8割が「どちらともいえない」「在宅のほうが良くなった」と回答しています。

【マネジメント】約7割の派遣先企業が、「どちらともいえない」「在宅のほうが良くなった」


【派遣先企業担当者へ】テレワークと通常勤務(対面)との比較 本人との日々のコミュニケーションは?(単一回答、n=500)

派遣スタッフへの指示のしやすさ、コミュニケーションの面では、7割強が「どちらともいえない」「在宅のほうが良くなった」と回答しており、初めてテレワークで派遣スタッフのマネジメントを経験した人が多いなか、半数以上はオフィスと変わらず仕事が行えている様子が伺えます。テレワークを始める前は、さまざまな不安を抱いていたものの、実際に実施してみるとテレワーク効果を実感できた担当者が多かったようです。

<派遣先企業担当者>コロナ前と後にテレワークを導入した企業の比較

オフィスと在宅での派遣スタッフのマネジメントについて、コロナ前からテレワークを導入していた企業とコロナ後に導入した企業別に質問してみました。

【業務効率・業務指示・コミュニケーション】コロナ前から導入していた企業のほうが効果を実感。正社員と派遣スタッフのマネジメントに差はなし

【派遣先企業担当者へ】テレワークと通常勤務(対面)との比較 業務効率は?(単一回答、コロナ前にテレワーク導入/派遣スタッフ:n=141、正社員:n=137、コロナ後にテレワーク導入/派遣スタッフ:n=358、正社員:n=344)

【派遣先企業担当者へ】テレワークと通常勤務(対面)との比較 業務指示のしやすさは?(単一回答、コロナ前にテレワーク導入/派遣スタッフ:n=141、正社員:n=137、コロナ後にテレワーク導入/派遣スタッフ:n=358、正社員:n=344)

【派遣先企業担当者へ】テレワークと通常勤務(対面)との比較 本人との日々のコミュニケーションは?(単一回答、コロナ前にテレワーク導入/派遣スタッフ:n=141、正社員:n=137、コロナ後にテレワーク導入/派遣スタッフ:n=358、正社員:n=344)

「業務効率」「業務指示のしやすさ」「日々のコミュニケーション」いずれも、コロナ前からテレワークを導入している企業のほうが、「良くなった」と感じている人の割合が大きくなっています。また、テレワークで正社員をマネジメントすることに関しても同じ質問をしたところ、派遣スタッフと変わらないことがわかりました。

<派遣スタッフ>コロナ前と後にテレワークを経験した派遣スタッフの比較

一方、コロナ前からテレワークを経験していた派遣スタッフとコロナ後にテレワークを経験したスタッフとの間で、業務効率や業務指示のわかりやすさについて違いは見られたのでしょうか。

【生産性】【業務指示】テレワーク経験の長いほうが「良くなった」率が高い

【派遣スタッフへ】テレワーク実施中の業務の進み具合(生産性)について、オフィス勤務時と比較してどうですか?(単一回答、コロナ前からテレワークを経験n=506、コロナ後にテレワークを経験n=587)

【派遣スタッフへ】勤務先からの業務指示のわかりやすさ(方法、頻度、指示される内容など)について、オフィス勤務時と比較してどうですか?(単一回答、コロナ前からテレワークを経験n=506、コロナ後にテレワークを経験n=587)

コロナ前からテレワークを経験していた派遣スタッフからは、コロナ後にテレワークを実施した派遣スタッフと比べて、「生産性」「業務指示のわかりやすさ」ともに、テレワークのほうが「良くなった」という声が多くあがってきました。
テレワークの経験の差が、生産性の向上に影響することが伺えます。

コロナ終息後もテレワークを希望するか

コロナ禍で多くの派遣スタッフや派遣先企業が初めてテレワークを経験したようですが、コロナ収束後もテレワークを希望する人・企業は多いのでしょうか。

約8割の派遣スタッフがテレワークの継続を希望


【派遣スタッフへ】コロナ収束後に希望する働き方は?(単一回答、n=7,093)

8割近くの派遣スタッフが、コロナ収束後も「テレワークを希望する」と答えています。初めてのテレワークに、多くの人が何らかのメリットを感じ、新しいワークスタイルに前向きなようです。

約9割の企業が今後も派遣スタッフのテレワークを推進


【派遣先企業へ】コロナ収束後の派遣スタッフへの在宅勤務(テレワーク)導入意向(単一回答、n=500)

一方、派遣先企業としても、「コロナ収束後も推進していく」という回答が9割近くになりました。「働き方改革」によるテレワーク推奨という背景もありますが、コロナ禍を機にテレワークを導入してみた結果、今後も継続の意向を示している企業が多いようです。

コロナ収束後もテレワークを希望する理由

コロナが収束した後も、テレワークを希望する派遣スタッフとテレワークの活用を考えている派遣先企業。それぞれテレワークにどのようなメリットを感じているのでしょうか。

<派遣スタッフ>テレワークを希望するいちばんの理由は「通勤ストレスの軽減」

【派遣スタッフへ】コロナ収束後の今後の働き方について回答した理由は?(複数回答)

テレワークを始めた時期にかかわらず、派遣スタッフは、通勤に伴うストレスや疲労から解放されることを大きなメリットとして感じているようです。

一方、「在宅でもオフィスと同じように働けるから」「会社より自宅のほうが集中できるから」という理由に関しては、コロナ前のテレワーク経験有無の差があらわれました。オフィスで働くときと同じ業務パフォーマンスを発揮するためには、テレワークで仕事をするというスタイルに慣れる必要があるようです。

<派遣先企業>テレワーク導入時期によって継続希望理由が異なる

【派遣先企業担当者へ】コロナ収束後の在宅勤務(テレワーク)導入以降理由(複数回答、コロナ前にテレワーク導入n=127、コロナ後にテレワーク導入n=305))

派遣先企業が今後もテレワークを希望する理由は、テレワーク導入時期によって回答に違いが見られました。コロナ前から導入していた企業は、「スキルの高い派遣スタッフを紹介してもらえそうだから」や「本人のモチベーションがあがるから」がおもな理由となり、「生産性の向上」を目的としていることがうかがえます。一方、コロナ後に導入した企業では「全社的にテレワークの方針がでているから」が最も高く、テレワークの目的に大きな違いが見られました。

まとめ

今回の調査では、「業務効率」「業務指示のしやすさ・わかりやすさ」「コミュニケーション」のいずれにおいても、テレワークがもたらす効果に従業員と派遣スタッフの差はほぼないことがわかりました。そして、テレワークによる効果を大きく左右するのは、「テレワークの経験期間」であるといった点も明確になりました。

テレワークを導入することがゴールではなく、生産性を高めるためのツールのひとつであることを認識するとともに、自社にはどのようなテレワークが適しているのかを探ることが大切なようです。

リクルートスタッフィングでは、新型コロナウイルス感染症が拡大する以前の2019年より、派遣スタッフのテレワークを推進しています。今後もテレワークを活用し、多様な働き方の実現を目指します。

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