日本の労働マーケットもVUCAの時代| これからの企業に求められること

2020.12.03

日本の労働マーケットもVUCAの時代| これからの企業に求められること

新型コロナウイルスなどの疫病や自然災害、またAIの急速な進化などによって、将来がどう変化していくのかを予測することが困難な状況が続いています。このような状況を示す言葉として「VUCA(ブーカ)」があります。「VUCA」という言葉が示す意味、VUCAの時代を迎えた日本の労働マーケット、そして今後、企業に求められることを知ることで、企業としての対策や自身の働き方を考えるきっかけになるかもしれません。

VUCA(ブーカ)の時代とは

VUCA(ブーカ)とはどんな状態を示すのか見ていきましょう。

VUCAとは将来予測が困難な状態

  • V:Volatility(変動性)
  • U:Uncertainty(不確実性)
  • C:Complexity(複雑性)
  • A:Ambiguity(曖昧性)

VUCA(ブーカ)とは、これら4つの単語の頭文字をとった造語です。元は冷戦終結後の複雑化した国際関係を示す軍事用語でした。現在では、私たちを取り巻く社会やビジネスの環境が複雑さを増し、想定外の出来事が次々と起こるために、将来の予測が困難になっている状態を示す言葉として使われるようになりました。

「VUCA」を構成する4つの単語が示す社会の状況について、それぞれ解説します。

技術革新によるVolatility(変動性)

社会やマーケットの変化が予測不可能な状態にあることを示しています。IoTや5G、自動運転など、新しい技術が次々と登場し、マーケットや人々の生活様式も急激に変化しています。

それまで高付加価値とされていた商品やサービスが新たな技術の創生によって独自性を失い、急激に一般化してしまったり、画期的なビジネスモデルが市場の変化によってわずか数年で衰退してしまったりすることがあります。

将来予測を困難にするUncertainty(不確実性)

新型コロナウイルスなど、人類にとって未知の疫病が地球規模で流行したり、地球温暖化による気候変動によって大きな災害が頻繁に発生したりするようになっています。このような事象を予測し、それらに備えることは困難です。

このように不確実性が大きな状況では、ビジネス上の見通しを立てることが難しくなります。また、終身雇用や年功序列といった日本型の雇用にも変化が見られ、個人の働き方でも不確実な要因が増えてきています。

グローバル化によるComplexity(複雑性)

経済のグローバル化によって、ひとつの企業や国だけで問題を解決することが極めて困難になってきています。国境を越えてビジネスを推進するときには、海外の人々の価値観や文化、商習慣、法制度について十分に理解しておくことが必要です。

また、インターネットの普及によって、国境を意識することなくさまざまなコミュニティや組織と接点を持つことができるようになったため、ビジネスはより複雑性を増しています。

絶対的な解決策が見つからないAmbiguity(曖昧性)

これまでに見てきた変動性や不確実性、複雑性が組み合わされることによって、前例のない課題に直面することが多くなっています。
課題解決に向けて有効な策を見出すことがますます困難となり、過去の実績や成功事例に基づいた判断も通用しない、曖昧性の高い状況です。

VUCA時代、企業に求められていることは多様性の受け入れと活用

日本の労働マーケットがVUCAの時代を迎えた背景には、労働力人口の減少や「働き方改革」による働き方の変化、技術革新による企業が求める人材要件の変化があります。また、女性や高齢者のみならず、多様な人材の受け入れと活用も求められています。これらを実現するために、企業として取り組んでいきたいことについて見ていきましょう。

「相互補助的×異質性が高い」環境づくりへ

多様性を受け入れるイメージ

「日本的経営」といわれる企業の職場環境は、「画一的で同一性が高い」という特徴がありました。「同質性」の高い職場では、同じような考え方や価値観を持つ社員が多く、組織としての一体感も生まれやすいといわれます。

しかし、変動要素が多く正解のないVUCAの時代では、このような従来型の組織でこの先の変化を乗り越えることは難しくなるともいわれています。

そこで求められているのが、「相互補助的で異質性が高い」環境への変化です。性別や年齢、国籍、文化の異なる多様な人材の登用と活用を進めていけば、それぞれの持つ知識やスキル、多様な価値観や考え方によって、課題の解決に向けて多角的な意見を求めることができ、商品やサービスへのイノベーションも活発化すると期待されています。

多様性の活用が企業にもたらすメリット

企業が多様性を活用すると期待できるメリットについて紹介します。

優秀な人材が集まる

能力や経験は十分あるのに、環境のせいでそれを発揮する場を失っている人も多いようです。たとえば、育児や介護のために仕事をセーブしている人のなかに、時短やリモートでなら働けるという人がいるかもしれません。働き方に柔軟性を持たせることで、こうした優秀な人材が集まりやすく、離れにくい環境が生まれます。

生産性が向上する

働く時間や場所の制限を取り除くことにより、生産性の向上を望めるという利点もあります。たとえば短時間労働の人は、働く時間は短いものの、「目標の時間までに仕事を終わらせる」という強い意志を持って業務にあたるので、仕事の生産性が高くなるという傾向があるようです。

また、コロナ禍で急速に普及したテレワークの導入が生産性の向上につながっている人もいます。通勤時間の削減をはじめ、ワークライフバランスも改善することから、余計なストレスが減り、集中して業務に取り組めるようになったという声も多く聞かれます。

革新的なアイデアが生まれる

価値観や考え方において多様な人材が集まることで、従来の型にはまらない革新的なアイデアが生まれる可能性が高まるといわれています。業務プロセスの抜本的な改善や創造性の高い取り組みが活発になり、最終的には企業全体の活性化が期待できます。

多様性を活用するために企業が準備するべきこと

企業が多様性を活用するために準備することについて見ていきましょう。

テレワーク環境の整備

ネットワーク環境を整備することによって、働く時間や場所を限定しない柔軟な働き方をサポートすることができます。出産や育児、介護など、ライフスタイルの変化による影響を受けることなく、業務を続けられることが期待できます。

時短勤務・フレックスタイム制度の検討

1日の所定労働時間を原則6時間とする短時間勤務制度を設けることによって、育児や介護に時間を割きたい従業員や、プライベートとの両立を図りたい従業員の離職を防ぎ、貴重な戦力として活用することができます。

また、フレックスタイム制の導入によって、通勤ラッシュ時間を避けることができたり、体調によって日々の労働時間をコントロールできたり、よりストレスのない環境で働いてもらえるようになります。

従業員の能力を伸ばす教育の場の提供

多様な働き方を実現するためには、従来の研修やセミナーというスタイルだけではなく、従業員が自らの意思でスキルアップや自己啓発に臨める環境を用意する必要があります。

それぞれの働き方によって、自らの能力向上に対する意識にもばらつきが生まれがちですが、教育の場や機会を継続的に提供することによって、それぞれの向上心を刺激し、能力向上に対する意識のばらつきの解消に努めることができます。

人材と業務のポートフォリオ(組み合わせ)の見直し

変化の激しいVUCAの時代に企業が成長し続けるためには、これまでの人材活用の方針も見直しをする必要がありそうです。

「コア業務は社内で、ノンコア業務は外部に」という縦割りの分け方ではなく、「この業務を任せるには誰が最も適しているのか」という視点から、社内外の人材を活用するチーム形成が求められています。柔軟な体制を整えることで、より多様性を活かした組織づくりが可能となるでしょう。

「コア業務」と「ノンコア業務」の分担イメージ

まとめ

先の読めないVUCA時代の企業に求められることをひとことでいえば、「時代のニーズに対して変化し続けられる企業体質」ということではないでしょうか。かつての成功体験にとらわれず、多様な働き方を含めた社会の変化に対応していく柔軟性が、これからの強い企業づくりにつながっていくのかもしれません。

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