「中途採用一本足打法」の限界。企業の人材戦略に必要な「外部人材活用」とは

「中途採用一本足打法」の限界。企業の人材戦略に必要な「外部人材活用」とは

環境変化に対応する専門性を持つ人材の獲得は、企業の競争力を左右する重要経営課題となりました。一般社団法人 日本能率協会(JMA)が実施した「第45回 当面する企業経営課題に関する調査 日本企業の経営課題 2024」(※1)によると、現在の経営課題では「収益性向上」が重視されていますが、3年後には「人材の強化」が最上位に浮上しています。これは、企業が中長期の競争力を考えるうえで、人材の獲得や育成がより重要なテーマとして認識されていることを示しているといえるでしょう。 しかし現場では、採用競争の激化により、採用コストの負担が増している企業も少なくありません。それでも多くの企業の対策は中途採用や新卒採用の強化に偏っているのが実情です。人材獲得を巡る環境が厳しさを増す中、企業はどのように対応すべきなのでしょうか。本記事では、その環境変化と、新たな選択肢として注目される人材活用戦略について考えます。

※1 出典:一般社団法人 日本能率協会「第45回 当面する企業経営課題に関する調査 日本企業の経営課題 2024」

人材戦略が企業の競争力を左右する時代に

企業の人材獲得戦略は、いま大きな転換点を迎えています。とりわけ大手企業においては、「求める人材の獲得」がこれまで以上に重要な経営テーマとして浮上するようになりました。

かつて日本の大手企業にとって、人材獲得は「いかに求める人材を選び抜くか」という課題でした。しかし今、その前提は崩れ去っています。同調査「第45回 当面する企業経営課題に関する調査 日本企業の経営課題 2024」(※1)の結果を読み解くと、資本力のある大手企業ですら、人材枯渇に強い危機感を抱いている実態が浮き彫りになります。

現在の経営課題として最も多いのは、依然として「収益性の向上(47.9%)」です。しかし、視点を「3年後」に移すと、その景色は一変します。経営者が挙げる最大の課題は、収益性を抑えて「人材の強化」へと入れ替わるのです。

これは、目先の利益を出すこと以上に、「事業を継続・成長させるための『人』が足りない」という構造的な不安が、企業の屋台骨を揺さぶっていることを示唆しています。短期的には数字を追えても、中長期的には人材ポートフォリオが崩壊すれば、競争力を維持できないという切実な認識が広がっています。

注目すべきは、人材不足の波が「日本全体」を飲み込んだ後、ついに最後の砦であった大手企業の防波堤をも決壊させているという点です。

同調査の全体集計(全規模)では、すでに「現在」の時点で「人材の強化」が経営課題の第1位となっており、現場レベルでの悲鳴は常態化しています。一方で、これまで資本力やブランド力で優位に立っていた大手企業においても、「3年後」という極めて近い将来の最優先課題として「人材」が「収益性」を逆転しています。

「大手企業なら放っておいても人材が集まる」という時代は終わりました。深刻な生産年齢人口の減少により、大手企業こそが、その巨体を支えるための人材獲得に最も苦戦していることがうかがえます。

さらに、人事領域における課題の変化を分析すると、企業が抱く危惧の本質がより具体的に見えてきます。採用が難しくなった今、一度採用した人材をいかに定着させるかも、同様に重要な経営課題となっているのです。同調査「第45回 当面する企業経営課題に関する調査 日本企業の経営課題 2024」においても、「リテンション(定着・離職防止)」の重要度が急激に上昇しています(※1)。

大手企業が「3年後の最優先課題」として人材強化を挙げている背景には、「現在の人材で組織を維持できているうちに構造改革を終えなければ、数年後には挽回不能なフェーズに陥る」という逆算の論理(仮説)が働いていると考えられます。

採用難易度の上昇:一度自社に合った人材を失うと、同等の人材を二度と獲得できないリスク
育成が追いつかない:人材育成には数年の時間がかかり、今いる中核人材が3年以内に流出してしまえば、次世代を育てる「教え手」すら不在になり、組織の成長が止まってしまうという懸念

かつての大手企業は、安定した新卒採用と年功的な処遇によって、時間をかけて組織を厚くしていくことが可能でした。しかし、昨今のデータが示す「リテンション」への注力は、こうした伝統的なモデルが通用しなくなったことを示唆しています。

データが示す結論は明白です。人材獲得はもはや人事部の一施策ではなく、経営の根幹を揺るがす「リスク」そのものとなりました。

大手企業といえど、既存のブランド力に胡坐をかけるフェーズは過ぎ去りました。採用、育成、そして「いかに選ばれ続けるか」というリテンションまでを含めた人材マネジメント全体の抜本的な強化が必要といえるでしょう。

多くの企業が陥る「採用強化」という思考の罠

では、こうした深刻な人材課題に対し、企業はどのような手を打っているのでしょうか。
リクルートスタッフィングが実施した「大手企業向けの人材不足に対する対策」の調査(※4)によると、不足への対策として挙げられるのは「中途採用の強化」「新卒採用の強化」が圧倒的であり、依然として直接雇用の増員に依存している実態が見て取れます。一方で「派遣社員の活用」などは限定的な割合に留まっています。

この背景には、大手企業特有の「自前主義の呪縛」という仮説が浮かび上がります。「自社の文化を理解した生え抜きでなければ、重要業務は任せられない」という心理的バイアスが、手段を狭めている可能性です。しかし、人材マーケットが「求職者優位」へ構造変化した今、この「中途採用一本足打法」を継続することは、中長期的な経営リスクにつながりかねません。

中途採用の強化が困難を極めている理由は、単なる景気変動ではなく、日本の労働構造そのものにあります。厚生労働省がまとめた「令和7年版 労働経済の分析-労働力供給制約の下での持続的な経済成長に向けて-」(※2)によれば、有効求人倍率は長期にわたって1倍を超え、特に直近の新規求人倍率は2倍を超える高水準です。さらに同調査「令和7年版 労働経済の分析-労働力供給制約の下での持続的な経済成長に向けて-」(※2)では、2040年には生産年齢人口が2020年比で約1,300万人も減少するという推計を踏まえ、人手不足は一時的な波ではなく「長期的かつ粘着的」な課題へ変質したと指摘しています。

こうした環境下で、企業は以下の3つの壁に直面していると推察されます。

1. コストの青天井化: 専門性の高い人材の争奪戦により、紹介料や提示年収が跳ね上がっている。
2. エージェントに選ばれる企業へ: 企業が人を選ぶのではなく、紹介会社や求職者から「選ばれる」立場への逆転。
3. 要件の高度化: DXやAI、サステナビリティといった新領域では、そもそも市場に「即戦力となる正社員」が極めて少なく、募集をかけても空振りに終わるリスク。

もはや、従来通りの「正社員採用」というカードだけで戦い続けることは、戦術的な限界を迎えつつあると言わざるを得ません。

※2 出典:令和7年版 労働経済の分析-労働力供給制約の下での持続的な経済成長に向けて-(厚生労働省)

「外部人材活用」を戦略的なポートフォリオに組み込む

「採用一本足打法」の限界を突破する有効な仮説が、戦略的な外部人材の活用です。今日、企業が活用できる外部リソースは多岐にわたり、それぞれ得意とする役割が異なります。

・BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング): 定型化された業務プロセスを丸ごと外部に切り出し、効率化を図る。

・システムインテグレーター(SIer): ITインフラの構築やシステム開発を専門集団に一任する。

・フリーランス・士業・副業人材: 高度な専門知識や特定のプロジェクト推進にスポットで参画してもらう。

・人材派遣: 自社の指揮命令下で、実働(実装)をスピーディーかつ柔軟に支えてもらう。

なかでも、企業の現場に深く入り込み、社員と密に連携しながら「実務」を担うパートナーとしての派遣活用は、以下の3つの観点から大手企業の硬直化した人材戦略を補完するメリットがあります。

スピードの担保:
母集団形成から入社まで数か月を要する正社員採用に対し、数週間単位での派遣が可能。事業機会を逃さない「速度」を確保できます。

専門性の即時活用:
自社に知見がないDX、AI、サステナビリティといった新領域において、外部人材を起用することで、教育コストをかけずにプロジェクトを動かすことが可能です。

リスクの最適化:
直接雇用のミスマッチリスクを抑えつつ、プロジェクトの進捗や市場の変化に合わせて、必要な期間だけ柔軟に体制を最適化できます。

これらの多様な選択肢を最適に組み合わせるためには、発想を「欠員補充(人数合わせ)」から「スキルのパズル(役割分担)」へと転換することが不可欠です。

その第一歩として求められるのが、「今、自社の総合職が担っている業務」の徹底的な可視化と分解です。

従来の日本企業では、一人の総合職が「意思決定」から「事務作業」「専門スキルの実装」までを幅広く担うことが一般的でした。しかし、業務が高度化した現代において、この「何でも屋」的な働き方は限界を迎えています。

可視化の結果、自社社員が担うべき「事業の舵取り」や「コアとなる判断」と、外部の専門性に委ねるべき「高度な付帯実務」を切り分ける。その上で、どの領域をBPOに任せ、どの領域に派遣人材をアサインするかといった「人材の体制の最適化」を行うのです。

このように、社内・社外という枠組みを超えて、課題に応じて最適なスキルを組み合わせていく。こうした「内と外のハイブリッド編成」を戦略的に構築することこそが、人材枯渇時代において組織全体の生産性を最大化し、持続可能な成長を実現する鍵となります。

人材戦略の選択肢を広げる第一歩として

データが示す通り、「人材獲得」は、もはや待ったなしの経営課題です。しかし、採用市場の競争が激化し、リテンション(定着)の難易度も上がる中、正社員採用だけに頼る戦略は、構造的なリスクを孕んでいます。

「採用に疲弊し、事業が停滞する」という事態を避けるためには、人材戦略のポートフォリオを広げることが現実的な解となります。外部人材を単なる「補助」ではなく、戦略的な「パートナー」として定義し直すこと。それが、不確実な時代に大手企業が競争力を維持するための、新たなスタンダードになると考えられます。

派遣のご依頼はこちら お問い合わせはこちら