
皆さんから寄せられた困りごとを解決する、らしく働くための相談室。回答者は、職場のメンタルヘルスについて研究されている関屋裕希さんです。今回は感情の我慢について。相手との関係も悪化させない、対処法とは。
おせっかいやマウントを取ってくる人が職場にいる。でも、「仕事仲間だから」と我慢して良い顔をしてしまう。つらいが対処法がわからない。気にしなければ良いと言われても気にしてしまう。(50代)
感情の我慢は、心の不調につながることも
お悩みを送ってくださって、ありがとうございます!
相手の発言にモヤっとしながらも、「これからも一緒に仕事をする相手なのだから」と考えると、嫌な顔をするわけにもいかず、「気にしなければいい」と言われても、すぐにスッキリするわけもなく、それが少しずつ溜まっていくと、つらくなってしまいますよね。
「感情労働」という言葉があります。
看護師などの医療従事者、教員・保育士などの対人援助職、コールセンター・オペレーター・販売員・サービス業などの顧客と接する職業を指す言葉。
無礼な顧客が相手でも、「笑顔のサービス」を求められ、嫌な顔をすることができず、感情を押し殺す……その結果、メンタルヘルスの不調やバーンアウト(燃え尽き)を引き起こすことがわかっています。
例えば、以下のようなこと。
・イライラしているのに、笑顔で礼儀正しく対応しなければいけない
・自分も不安なのに、安心感のある態度をしなければいけない
自分の感情を偽って表現すること(表層演技と呼びます)が、私たちにストレスを与えます。
「我慢して良い顔をしてしまい、つらい」という相談者さんのお悩みにも近いものがあるのではと思います。まずは、「我慢しないこと」から始めてみるのがおすすめです。
とはいえ、そのまま相手に嫌な顔をしたり、反論して関係が悪くなってしまっては、新たな悩みの種をつくることになりかねないので、もう少し違った方法でいきましょう。
我慢しない、関係も悪化させない。その方法とは
思ってもみないおせっかいをされたり、マウントを取られたとき。いらだったり、動揺したり、気分を害したり、傷ついたり、がっかりした気持ちになるのは自然なことです。
こういった気持ちを「感じてはいけない」と抑え込んだり、なかったことにするのではなく、自分の中では、【嫌だと感じていること】を【それは感じてもオッケーだよ】と受け容れてあげてみてください。
私たちが「何を感じるか」と「感じたことをどう表現するか」は別のステップです。なので、「何を感じるか」という部分は自分に自由にさせてあげるのです。
相手に、「そういうことはもうしないでほしい」と言える状況であれば、それもよいのかもしれませんが、場合によっては、相手との関係はそのままにしておくという決断が賢明なこともあります。
ただ、それは「自分の感情を抑え込むべき」ということではありません。「何を感じるか」は自由に、そして、「どう表現するか」にはスマートな対応をおすすめします。
少し引いて職場を見渡してみるのも、一つの手段
そして、もう一つ試してみられそうであれば、相手のふるまいを「おせっかい」や「マウント」とは違う解釈ができないかな、と考えてみることもおすすめです。
例えば、
“おせっかいするのは、職場で自分の存在意義を感じられないためにとっている行動なのかも”
“マウントを取ってくるのは、何かで自信を失くしていて、安心したいための行動なのかも”
こうして、少し引いたところから、冷静な目で相手や職場を見渡してみると、違う世界が見えてくるかもしれません。

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