皆さんから寄せられた困りごとを解決するこのコラム。今回の困りごとは、「自己嫌悪の日々で、仕事を辞めたくなってしまう」についてです。

落ち込んだとき、さらには、ゆっくり休む時間も取れないとき。あなたは、どう気持ちを整えていますか?

職場のメンタルヘルスを研究されている関屋裕希さんが、そんなときおすすめする「気持ちの立て直し方」をご紹介します。

働くうえで感じている困りごとも募集しています。詳細は記事の最後をご覧ください。

Q. ミスしてしまい落ち込む。仕事自体は嫌ではないのに、辞めたくなる。

ミスをしてしまったり、要領よく仕事をこなせない自分が嫌になり、自己嫌悪に陥ってしまう。あとから入った人が、自分よりもスムーズに仕事をしていて、比較してしまい、ますます落ち込んでしまう。 仕事自体は嫌ではないのに、毎日落ち込むことが辛く、辞めたくなってしまう。(50代)

仕事がうまくいかず、自分を責めてしまうとき

お悩みを送ってくださって、ありがとうございます!

落ち込むことが続くと、少しずつ元気が出なくなってしまいますよね。

「落ち込む」という感情は、エネルギー切れのサインでもあります。

エネルギーが切れている状態なので、自分をゆっくり休ませて、エネルギーを回復させていく、というのが理にかなった対処法なのですが、それもなかなか簡単なことではありません。

私たちは、ミスしたり、うまく仕事をこなせないと、「なんでうまくやれないんだろう」「もっとこうすればよかったのに」と自分を責めてしまいがちです。

ただ、人間は責められるとエネルギーを奪われてしまいます。

他者から責められても、エネルギーは減っていくのですが、自分で自分を責めたときにも、同じことが起こります。

もしかしたら、以下のような悪循環が起きているかもしれません。

【1】仕事でうまくいかないことがある
【2】落ち込む(エネルギー低下)
【3】自己嫌悪(自分を責める)
【4】さらにエネルギー低下
【5】1にもどる

この悪循環の中にいると、自分の【うまくいっていないところ・できていないところ】にばかり注意が向いてしまいます。日々の出来事や自分の【できているところ・よいところ・うまくいっているところ】は見過ごしてしまう“偏ったものの捉え方”になりがちです。

こんなときには、あえて、後者の【できているところ】に目を向けるアプローチがおすすめです。

「できているところ」に目を向けるとは?

できているところに目を向けるには、「自分の強みに注目する」という方法があります。

「強み」というと、「〇〇ができる」といったスキルや能力を思い浮かべる方が多いかもしれません。ですが、心理学では、内面的な資質や性格的な強みを指す「徳性」と呼ばれるものもあります。以下の表をご覧ください。

▼心理学に基づいた「徳性(性格的な強み)」を測定する無料の診断ツール『VIA-IS』。そこで紹介されている強み一覧

たとえば「節度の“思慮深さ”」や「知恵の“見通し”がもてること」などは、仕事経験が長いからこそ培われていく強みかもしれません。

「要領よく仕事ができてなくて」と悩まれていますが、「周囲より早く判断できない」のではなく、「経験からくる判断力の精緻化(せいちか)」ゆえに、時間がかかるのかもしれません。

結果的には、手戻りが少なくなるなど、よい面もありそうです。

当たり前にやっている・できていること=強み

また、強みというのは、自分にとっては「当たり前にやっていること・できていること」なので、自分では気づきにくいことがあります。

一緒に仕事をしている人や、以前一緒に働いていた同僚、友人からフィードバックをもらうのもおすすめです。

また、日常的にできることとしては、仕事終わりや寝る前に、1日を振り返って、「よかったこと」を3つ書き出すという方法もおすすめです。

続けていくと、「できているところ」「よいところ」「うまくいっているところ」を探すアンテナが育っていきます。

■今日のよかったことは?小さなことでOK!

・ランチに選んだメニューがおいしかった
・同僚が笑顔で挨拶してくれた
・電車の乗り換えがスムーズだった など

相談者さんは、「仕事自体は嫌ではない」とのこと。それも得がたい強みのひとつだと思います!

そして、落ち込んだときには、自分をゆっくり休ませてあげることも忘れないでくださいね。

他の人と自分を比べてしまうことを手放す方法は、下記の過去記事もご参照ください。

▼比べてしまう気持ちを自然と手放す方法

働くうえで感じている困りごとを募集しています

以下のアンケートフォームより、働くうえで感じている困りごとをぜひ教えてください。一部抜粋してこのコラム掲載を通して回答いたします。

■受付方法
こちらよりお待ちしています。

■受付期間
2026年1月26日(月)まで

■注意事項
・いただいた内容は、本企画のみに使用いたします。それ以外の目的では一切利用いたしません。
・全ての困りごとに対する回答はお答えいたしかねます。ご了承ください。

回答者:関屋 裕希さん
福岡出身。臨床心理士。公認心理師。博士(心理学)。東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員・精神保健学分野 客員研究員。大学院時代は「怒り感情」をテーマとした研究に従事。専門は産業精神保健(職場のメンタルヘルス)であり、心理学の知見をもとに、ストレスマネジメントに関する講演、企業の組織的なストレス対策に関するコンサルティング、執筆活動を行っている。著書は『感情の問題地図』『モチベーションの問題地図』(技術評論社)など。

▼これまでの「らしく働くための相談室」
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