「アルムナイ(退職者)ネットワーク」が注目される理由と活用メリット

2021.05.27

「アルムナイ(退職者)ネットワーク」が注目される理由と活用メリット

人事戦略のひとつとして注目されている「アルムナイネットワーク」という言葉をご存知でしょうか。もともと「卒業生」「同窓生」を表す英語から派生し、企業の退職者やOB・OGを意味するようになった「アルムナイ」。そのネットワークを積極的に活用しようとする企業の狙いと動向、今後の可能性についてご紹介します。

「アルムナイ」とは

企業の「アルムナイ」は、離職・退職者のこと

「アルムナイ」とは、英語で「卒業生」「同窓生」を意味します。高校や大学などでは、アルムナイを組織化した「同窓会」があり、卒業生向けのイベントや特典の企画、母校を支援する寄付の募集など、コミュニティ独自の活動をしているところが多いでしょう。

一方、企業においての「アルムナイ」とは、企業を離職・退職した人にあたります。そして今、その言葉は単に元社員を指すだけでなく、離職者を積極的にビジネスに活用していく人事戦略として、「アルムナイ採用」や「アルムナイ制度」といった言葉も生まれています。

OG ・OBと企業をつなぐ「アルムナイネットワーク」

「アルムナイネットワーク」とは、企業の離職者や元社員で形成されるコミュニティのことです。もともと日本では、定年退職した人を中心にした「社友会」というものを組織している企業が大手を中心にありましたが、学校の同窓会のような意味合いが強く、企業の人材戦略として積極的にビジネスに活用するためのコミュニティとはいえないものでした。

それに対して、近年注目されている「アルムナイネットワーク」とは、定年退職者以外の離職者や転職者を組織化したもので、元社員だけが交流しているケースと、企業に在職している社員も加わっているケースがあります。

「アルムナイネットワーク」には決まったスタイルや定義はありません。企業が運営するものと「アルムナイ」自身が運営するものに大別されます。前者においては、企業側が設けた会員限定サイトやオフ会を通して、企業の最新情報を定期的に発信したり、アルムナイとの情報交換を促進したりして、企業と離職者との良好なリレーションを維持しているケースが多いようです。

多様な人材がつながることで、アルムナイからの取引先紹介、アルムナイとの業務委託契約、アルムナイの再雇用など、単なる情報交換という域を超えて、新しいビジネスや人事戦略においてアルムナイネットワークを活用する企業が増えています。

「アルムナイネットワーク」が注目されている背景

終身雇用制度が一般的だった時代には、定年退職を迎える前に会社を辞めて転職する人を負のイメージで捉える風潮がありました。そんな日本において、「アルムナイ」に注目し、活用しようとする企業が増えている背景には、労働市場や働き方の変化があります。

労働人口の減少によって人材の確保が困難

労働人口の減少によって人材の確保が困難になってきている昨今、元社員の再雇用や再活用も人事戦略の一手段として必要になってきています。

日本の労働市場が流動化している

日本では終身雇用や年功序列といった従来の制度が崩れつつあります。「新卒から定年まで一つの企業で働く」という考え方は薄れ、キャリアアップやキャリアチェンジのための転職が一般的になり、人材の流動性が高まっています。
再雇用や再契約も「出戻り」というイメージではなく、受け入れ側・受け入れられ側ともにやりやすい環境になってきています。

働き方の多様化に対応できるようになった

労働人口が減少しているなかで、「多様な働き方を容認し、さまざまな人材を活用する」ことが企業にとって重要になっています。フルタイム勤務の正社員だけにとどまらず、業務委託や時短社員、在宅ワークやダブルキャリア(副業・複業)など、多様な働き方の受け入れが進んでいます。アルムナイネットワークを利用した採用の例では、出産・育児のために一度退職をした社員が、家庭との両立が可能な職場環境になったことで復職をするといったケースも多く見られます。働き方や雇用に関する考えが柔軟になったことも、アルムナイネットワークが活用されている理由のひとつです。

「アルムナイネットワーク」を活用する企業メリット

企業による「アルムナイネットワーク」の活用は、採用の面にとどまらずマーケティングの観点などからもメリットが期待できます。

自社にマッチした人材を採用しやすい

元社員は、過去に自社の採用基準を満たすと判断された人材であり、実際の働きぶりやキャラクターも把握できているため、漠然とした期待値ではなく過去実績に基づいて採用することができます。また元社員は、自社の業務システムの使い方や業務フローを把握しているだけでなく、企業風土にも理解があるため、入社後すぐに職場になじみ、即戦力として活躍してもらえると期待されます。「社内の雰囲気が合わない」といった入社後のミスマッチが防げるのは、企業にとって大きなメリットでしょう。

採用・教育コストを削減できる

アルムナイネットワークを利用した採用では、求人媒体や人材紹介会社に対する採用コストを削減できます。また、教育コストに関しても、新人や転職者にかかるものと比較すると、大幅な削減が期待できます。

外部からの知見を獲得できる

「中にいるときはわからなかったけれど、一度外から眺めてみたら気づいた」ということがあるように、他企業や他業界に転職した人からの意見は客観性やあり貴重です。アルムナイならではの視点と知見から、斬新な発想や新たな事業の芽が生まれ、イノベーションが起こるかもしれません。

顧客やアンバサダー、パートナーになってもらえる

アルムナイネットワークを通じて自社商品の情報を提供することで、顧客になってもらえる、アンバサダーやパートナーになってもらえるなど、マーケティングのうえでもメリットが期待できます。
また、アルムナイと良好な関係を保つことで、「離職者ともよい関係を保っている」という企業イメージが広がり、人材採用や商談でもプラスになるでしょう。

組織が活性化する

「アルムナイ」が戻ってきた職場は、既存の社員の間で「一度辞めても戻ってくる人がいるほど、よい職場である」と認識されるでしょう。他社への転職を考えている社員も思いとどまるかもしれません。社員が自社に誇りを持つことで組織がより活性化すると期待されます。

まとめ

労働市場が流動化しているなかで、元社員とのつながりを保つ「アルムナイネットワーク」は、今後の人事戦略のひとつとして有効に活用できそうです。人材の再雇用制度という狭義にとどまらず、企業のブランディングやマーケティング、組織の活性化、新規事業の開発など、幅広い効果が期待できます。

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