ダイバーシティ&インクルージョンとは|取り組むメリット

2021.02.22

ダイバーシティ&インクルージョンとは|取り組むメリット

「ダイバーシティ」という言葉は聞いたことがあっても、ダイバーシティ&インクルージョン」はよくわからないという人も多いのではないでしょうか。競争が激化する市況下で、事業の成長を促す鍵となるのが「ダイバーシティ&インクルージョン」といわれています。その意味や「ダイバーシティ」との違い、企業にとってのメリットについてご紹介します。

ダイバーシティとは「多様性」

「ダイバーシティ&インクルージョン」を紹介する前に「ダイバーシティ」についておさらいしておきましょう。「ダイバーシティ」という言葉を聞いて、女性活躍をイメージする人も多いかと思います。日本では女性の社会進出を後押しするキーワードとして使われてきた感もありますが、本来「ダイバーシティ」とは、日本語に直訳すると、「多様性」という意味です。「多様性」とは属性も個性も価値観も均一ではないさまを表す言葉なので、女性という性別の属性はダイバーシティの一つの側面にしか過ぎないということになります。

「表層的ダイバーシティ」と「深層的ダイバーシティ 」

ダイバーシティには、「表層的ダイバーシティ」と「深層的ダイバーシティ」があります。

外見で識別できる「表層的ダイバーシティ」

性別や年齢、人種、民族、障がいなどのように外見で識別できるような違い、あるいは個人では変えることのできない属性は、「表層的ダイバーシティ」と分類されます。

外見では識別できない「深層的ダイバーシティ」

外から見て属性がわかりやすい「表層的ダイバーシティ」に対して、外見からは推し量りにくいのが「深層的ダイバーシティ」です。パーソナリティや考え方、価値観、習慣、宗教、性的志向、職歴、スキルレベルなどがそれにあたります。

さまざまな性別や人種の人材が働いていても、必ずしも本当の意味でダイバーシティがある組織とはいえません。逆に、たとえば社員全員が日本人男性であったとしても、個々の考え方や価値観、パーソナリティ、スキルレベルが異なっていて、お互いがその違いを認め、尊重しあっている組織であるなら、「ダイバーシティである」といえます。

ダイバーシティの歴史

アメリカから始まったダイバーシティ

ダイバーシティは、アメリカで始まったといわれています。そもそも人種や肌の色、宗教など多様な人がいるアメリカでは、多様性を受け入れて人材を採用する必要がありました。1964年には公民権法が設立され、人種差別の撤廃やマイノリティへの機会平等化が徹底された結果、多様な人材への機会均等やアファーマティブアクション(積極的差別是正措置)の義務付けが進みました。

人種や性別といった表層的なものだけでなく、価値観や考え方などに重点を置くダイバーシティが生まれたのは、1980年代であるといわれています。その後、1990年代にはダイバーシティの受容によって事業を発展させる企業が多く現れ、注目を集めるようになります。

日本でのダイバーシティは2000年代から

日本では、アメリカの影響を受けて1985年に「男女雇用機会均等法」、1999年には「男女共同参画社会基本法」が制定されました。日本に「ダイバーシティ」という考えが導入されたのは、2000年に日本経営者団体連盟(日経連)が「ダイバーシティ ・ワーク・ルール研究会」を発足させたことがきっかけといわれています。

2004年には経済同友会が「ダイバーシティ 」を人事・経営戦略として提起、少子高齢化が進み労働人口が減少してきたことも引き金となって、さまざまな企業でダイバーシティへの取り組みが進みました。しかし、当初は「ダイバーシティ=女性の活躍」として捉える企業が多く、その後、性別や年齢など表層的なダイバーシティは進んだものの、深層的なダイバーシティにまで至っていない企業も少なくないようです。

ダイバーシティ&インクルージョンとは

ダイバーシティが活かされている状態

ダイバーシティ&インクルージョンの「インクルージョン」とは、「包括」「包含」という意味の英語からきた言葉です。「ダイバーシティ」は、組織の中に多様な人材が集まっている状態、対して「ダイバーシティ&インクルージョン」は、多様な人材の能力や個性が活かされている状態を意味しています。

ダイバーシティ&インクルージョンが注目されている背景

日本の企業は、これまでみんなが同じ価値観を持つ同質性の強い組織づくりをおこなってきました。そこにダイバーシティという考え方を導入したことで、多様な考え方や価値観が混在することになりました。

しかし、多様な人材が集まり、お互いの違いを尊重しあう組織があるだけでは、ビジネスの発展を大きく加速させる機動力とはなりません。ダイバーシティを推進してきた大手企業が、近年「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉を用いてマネジメントに力を入れているのは、「ダイバーシティ」は個々の能力や個性が活かされてこそ、本来の目指す目的を果たせると考え始めたからです。多様な人材を戦略的に活かす視点とスキル、多様な人材が活躍できる環境を整えるマネジメントが必要とされています。

ダイバーシティ&インクルージョンが企業にもたらすメリット

優秀な人材を確保できる

高度な知識と高いスキルを持つ人材を確保することは、IT化とグローバル化が急激に進む高度情報社会で生き残っていくために必要不可欠です。そのなかで、「ダイバーシティ&インクルージョン」に本気で取り組む企業は、優秀な人材の目に魅力的に映ります。また、多様な人材にとって働きやすい職場環境があれば、条件面で就業をあきらめていた優秀な人材の確保も可能になります。

イノベーションが生まれやすい

同じような考え方を持つ人の集団からは、斬新な発想は生まれにくいものです。その点、異なる視点や価値観、さまざまな経験・スキルを持った人材が活かされている組織では、多角的な視点から意見が交わされることによって、革新的なアイデアや解決方法が生まれやすくなります。また多様な人材がいれば、多様化する消費者のニーズを迅速かつ的確にキャッチしやすくなり、新しい商品やサービスも生み出しやすくなります。

社員のモチベーションが上がる

自分の個性が尊重され、組織の中で活かされている実感があれば、つねにモチベーションを高く保って働くことができます。個々の高いモチベーションは、組織に活気をもたらします。

社員の離職率の低下と定着率アップ

リモートワークや時短勤務など、多様な働き方ができる環境を整えておくことで、離職を防ぐと同時に定着率を上げることが期待できます。

企業のイメージアップ

ダイバーシティ&インクルージョンを推進している姿は、柔軟で先進的な取り組みをしている印象を与えます。顧客や求職者から広く注目されることになり、企業イメージのアップにつながります。

まとめ


日本企業でも、「ダイバーシティ(多様性)」を受け入れる段階から、多様性を受け入れて活かすという「ダイバーシティ&インクルージョン」という考え方に進化してきました。企業にも働き手にもメリットがあるこの考え方は、今後、より多くの企業で取り組みが進み、実践されることが期待されます。

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