「ピグマリオン効果」を発揮させるための6つのポイント

2021.07.07

「ピグマリオン効果」を発揮させるための6つのポイント

「周囲の期待が高成長につながる」というピグマリオン効果。円滑なコミュニケーションをはかり、高いモチベーションを維持した人材を育成するために、この「ピグマリオン効果」を狙ったマネジメント方法が注目を集めています。期待するだけで本当に部下は成長するのでしょうか。今回はピグマリオン効果を活用するためのポイントをまとめました。

ピグマリオン効果とは

期待によって成長が促進される現象

ピグマリオン効果とは、「他者から期待されることによって成果が向上する現象」を指す心理学用語です。
アメリカ合衆国の教育心理学者ロバート・ローゼンタールらが1968年に発表した報告書で示唆したもので、1963年から1964年にかけておこなわれた一連の実験によって検証されましした。たとえば、以下のような実験です。

サンフランシスコのある小学校で普通の知能テストを実施し、担当教師には「今後成績が伸びる学習者を割り出すための特別な検査」と説明します。その後、テストの結果とはまったく関係なくランダムに選ばれた生徒のリストを担任教師に示し、「これが今後、成績が伸びる学習者たちである」と伝えました。すると数ヶ月後、その生徒たちの成績が実際に向上したのです。

この実験結果から、リストの生徒たちの可能性に期待をかけたことによって担当教師の言動が変化し、当の生徒たちもその期待を意識したことで成長が高まったという考察が導き出されています。

ピグマリオン効果は、提唱者の名や実験の内容から、「ローゼンタール効果」とも「教師期待効果」とも呼ばれています。

「ピグマリオン効果」という名称の由来

ピグマリオンは、ギリシャ神話に登場する人物の名前です。キプロス島の王ピグマリオンは自らが彫刻した象牙の女性像に心を奪われ、その想いが報われることを切に願います。すると女神アフロディーテが祈りに応えて女性像に命を与え、2人は結ばれました。
この「期待し続けたことでよい結果が得られた」という伝説が、「ピグマリオン効果」という名称の由来となっています。

ピグマリオン効果の反対はゴーレム効果

他者からの期待がプラスに働くピグマリオン効果とは逆に、「他者からの期待度の低さがマイナスに働く現象」を、ゴーレム効果といいます。これを提唱したのもピグマリオン効果と同じくロバート・ローゼンタールで、教師と生徒を対象とした実験により、教師から期待されなかった生徒は結果的に成績が低下したことが報告されています。

「周囲から期待されていないと感じると自己評価が低くなり、自分自身に期待できなくなる」
「モチベーションの低下やネガティブな思考がパフォーマンスを低下させ、成果を上げられなくなってしまう」
といった負の連鎖を説明するときに使われるのがゴーレム効果です。

「ゴーレム効果」という名称の由来

ゴーレムというのはユダヤの伝承に登場する泥でできた人形を指します。ゴーレムはそれを作った聖職者の命じるままに動きますが、額に刻まれたemeth(ヘブライ語で真理)という文字からeの文字を削るとmeth(死)となり、元の泥に戻ってしまうとされています。この「他者からの影響で力を発揮できなくなる現象」が、「ゴーレム効果」という名称の由来です。

ピグマリオン効果を出すためのポイント

ピグマリオン効果もゴーレム効果も、「他者の態度によって人間のパフォーマンスが上下する可能性」を示唆しています。
ビジネスマネジメントの現場で、部下や後輩の成長によい影響を与える上司とそうでない上司がいるとすれば、前者の言動には「ピグマリオン効果」が、後者の言動には「ゴーレム効果」が働いているのかもしれません。

では、ピグマリオン効果を最大限に活かし、部下や後輩の成長を促す「期待の仕方」とは、どのようなものなのでしょうか。大切なポイントを6つにわけてご紹介します。

1.期待を言葉にする

まずは、期待する気持ちを態度で示すだけでなく、「期待している」とストレートに言葉にして伝えることが大切です。その際、相手の長所や実績、それまでの成長ポイントなど、期待している理由や根拠を添えると、より期待感が伝わりやすくなるでしょう。

2.自主性を尊重し裁量を与える

「この業務に関しては本人の考えで判断し処理してもよい」という裁量の範囲を広げることで、信頼と期待を表すことができます。そして一度裁量を与えた分野に関しては、細々とした指示や要求、命令をできるだけ控えることも大切です。「本当に自分を信じて任せてくれている」という実感が持てるよう、本人の自主的な行動を肯定的に見守りましょう。

3.目標達成のプロセスも褒める

人は、褒められると嬉しいものです。根拠なく褒めすぎることは現状に甘んじて成長が止まる可能性があるため注意が必要ですが、要所要所で努力を認めて褒めることで「プロセスも見てくれている」という安心感が生まれ、モチベーションも維持しやすくなります。たとえ期待どおりにならなくても怒りや焦りの感情は抑え、課題や目標の内容が正しく伝わっていない可能性も考えて、わかりやすく方向性を示しましょう。

4.「成功」を体験させる

最初から大きな成果を求めるのではなく、本人の能力に合わせたハードルをその都度設定し、乗り越えさせることで成長を促しましょう。この場合のハードルは低すぎると成長にはつながらず、高すぎて越えられないと自信を喪失してしまいます。成功体験を数多く重ねることで自信が生まれ、より大きな成果に向かっていく気概が育まれます。

5.過剰な期待でプレッシャーをかけない

本人の意思や実力を考慮していない過度な期待や、「上司側の理想を押し付ける」タイプの期待はピグマリオン効果につながらず、むしろマイナスの結果を生む可能性があります。プレッシャーを与えるだけの期待ではなく、本人のやる気を引き出し、成果の向上をサポートするための期待となるよう意識することが大切です。

6.公正に評価する

期待され、がんばって得た成果が、人事考課(従業員の業務成績や勤務態度などを評価し昇給や昇進の判断基準とする制度)に公正に反映されることも重要です。評価につながらないと、「がんばっても無駄」というあきらめ感が定着してしまう恐れがあるためです。本人の努力と成長によって会社に与えた利益が正当に評価されるような環境づくりを促進していきましょう。

まとめ

周囲の期待がよい影響をもたらす「ピグマリオン効果」について、その概要と活用例をご紹介しました。「ピグマリオン効果」は、ビジネスの現場で活用しやすい考え方です。「高すぎる期待」や「褒めすぎ」がマイナスに作用する可能性に留意しつつ、正しく活用することで、人材育成や業績向上につなげていきましょう。

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