【図解】いまさら聞けない同一労働同一賃金 9つの質問

【図解】いまさら聞けない同一労働同一賃金 9つの質問

同一労働同一賃金は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。すでに施行は始まっているものの、複雑な事項が多く、理解をしきれていないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、2021年8月にリクルートスタッフィングで開催したセミナー、「いまさら聞けない“同一労働同一賃金” ~まだ間に合う 60分で解決 同一労働同一賃金~」の内容をもととして、同一労働同一賃金についてよく寄せられる質問に図表を交えて解説します。

【Q1】同一労働同一賃金とはなんでしょう?

日本における同一労働同一賃金は、「正規社員と非正規社員の不合理な待遇差の解消」を目的に制定されました。同一企業や団体の単位で待遇をそろえることによって、雇用形態に関わらず公正な待遇確保の実現をめざす取組です。

同一労働同一賃金とは

【Q2】同一労働同一賃金の施行はいつから始まっていますか?

同一労働同一賃金の施行は大企業・派遣契約への適用は2020年4月から、中小企業は2021年4月から、すでに開始されています。

同一労働同一賃金いつから?

【Q3】公正な待遇とは?何を基準にそろえればよいのでしょうか?

同一労働同一賃金を実現するうえで、待遇の公平性を図るふたつの基準が存在します。待遇を同じにする均等待遇とバランスを保つ均衡待遇です。

たとえば、「職務内容(業務の内容・責任の程度)」と「職務内容・配置の変更(転勤や職種を超えた異動)の範囲」が同じ場合は同じ待遇を求められることが均等待遇です。
一方で、違いが生じる場合は差に応じて待遇を考慮する必要があります。この待遇のバランスを求める考え方を均衡待遇と言います。均衡待遇には、職務内容や職務内容・配置の変更の範囲以外にも職務成果や能力といった事情が考慮されるケースもあります。

均等待遇・均衡待遇

【Q4】待遇とは給与のことですか?

同一労働同一賃金という言葉からイメージする待遇は、給与や賞与・各種手当といった賃金にかかわることを思い浮かべる方が多いかと思いますがそれだけではありません。たとえば、スキルアップや教育における研修を受けられるといった制度や福利厚生が該当します。

同一労働同一賃金で均等・均衡を図る待遇

【Q5】派遣にも同一労働同一賃金は適用されますか?

同一労働同一賃金は、いわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消を目指すもので、非正規労働者のなかに派遣労働者も含まれます。2020年4月に労働者派遣法が改正され、同一労働同一賃金における派遣としてのルールが制定されました。派遣労働者に対しての待遇確保のため、不合理な待遇差は禁止される規定が設けられています。

【Q6】派遣労働者に対する公正な待遇はどのように決めるのでしょうか?

派遣労働者における同一労働同一賃金は、以下の2つの方式から派遣会社が選択します。

  • 派遣先均等・均衡方式・・・派遣先の通常労働者との均等・均衡待遇を実現
  • 労使協定方式・・・派遣会社における労使協定に基づいて待遇を決める

派遣労働者に対する同一労働同一賃金

【Q7】派遣先均等・均衡方式とは具体的にどのようなものですか?

派遣先均等・均衡方式は、派遣先通常労働者(いわゆる正社員)と均等・均衡を図る方式です。そのため、派遣先において「どの社員と均等・均衡を図るか」、比較対象者を設定しなければなりません。

派遣先均等・均衡方式

比較対象者の選定には優先順位が制定されており、基準通り選定しなければいけません。該当者がいない場合は、徐々に優先順位を下げ、選定者を設定していきます。比較対象者を契約の途中で変更することは可能ですが、その場合はすみやかに派遣先から派遣元に情報を提供し直す必要があります。

比較対象者を決定したのち、当該者の賃金や施設利用などに関する情報を派遣元に提供します。

派遣先均等・均衡方式の情報提供項目

情報提供は書面・メールなどの記録に残る方法で派遣解約の締結までには完了しておくようにします。また情報提供内容は契約終了から3年の保存義務があります。情報提供が適切にされていない場合は派遣契約の締結ができないので注意が必要です。

【Q8】派遣元労使協定方式とは、具体的にどのようなものですか?

派遣元労使協定方式は、派遣会社が労使協定を締結し、協定で締結した待遇以上の条件で派遣労働者と雇用契約を締結する仕組みです。

派遣元労使協定方式

まず、過半数労働組合、または過半数代表者と派遣元事業主の間で一定の事項を定めたものを書面で締結します。
この方式を適用するには、労使協定の中に以下の3つの要件を満たすことが求められます。

  1. 賃金は一般労働者の平均的な賃金額と同等以上にする(賃金構造基本統計、または職業安定業務統計を基準とする)
  2. 賃金改善の仕組みを設ける
  3. 賃金以外にも通常の労働者との間で不合理な待遇差が生じないようにする

ここまでは、派遣会社の任務として進めていきますが、派遣契約を締結する前には派遣先均等・均衡方式と同様に派遣先から派遣元に情報提供をする必要があります。派遣先均等均衡方式と比較すると、情報項目数は少なくなります。

このように労使協定方式は派遣会社での遂行部分が多いですが、派遣先として派遣会社が適切な労使協定を締結されているかを確認することは必要です。定められた事項が守られていない労使協定を派遣元が締結していた場合は、労使協定方式は適用されずに派遣先均等・均衡方式が適用されます。また、契約を更新していくなかで、派遣スタッフの業務が変わったりスキルがあがったりすれば、賃金の見直しを検討する場合が出てきます。変化に併せてどのような基準でどの程度賃金に反映させるのかの仕組み作りが大切になってきます。

【Q9】派遣先均等・均衡方式と労使協定方式、どちらを使用している会社が多いですか?

現状は労使協定方式を選択しているケースが87.8%(※)と多数派になっています。労使協定方式は派遣会社がルールを設けて一定の基準を持って派遣するという方法のため、派遣先企業の情報提供などの負担が少ないということが理由の1つだと思われます。
厚生労働省『労働者派遣事業報告書に添付される労使協定書の賃金等の記載状況について』より

派遣先均等・均衡方式と労使協定方式の利用割合

派遣先均等・均衡方式と労使協定方式の違い

<参考>派遣先均等・均衡方式と労使協定方式の違い

まとめ

同一労働同一賃金施行の背景は、雇用形態に問わず均等均衡な待遇を実施することで誰もが納得して働ける社会の実現を目指すことです。待遇の差がある場合は合理的な説明ができるのかという面も人材活用においては考慮事項だと言えます。リクルートスタッフィングでは、派遣スタッフとの年1回以上の面談を実施し、業務変更の有無や仕事へのスタンス、業務施行能力、チームワーク力などの項目毎にまとめて派遣先企業にレポートとして振り返りを行っています。同一労働同一賃金をはじめ、派遣や人材活用に関してお困りのことがあれば営業担当にお気軽にお問合せください。

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