業務量調査のメリットとは?方法や実施する際のポイントを解説

2025.03.11

業務量調査のメリットとは?方法や実施する際のポイントを解説

業務量調査とは、企業の業務量を把握するため、従業員一人ひとりの業務内容を調査することです。業務量調査をおこなうことで、業務にかかる時間や頻度などが明確になり、組織として抱える課題や無駄が浮き彫りになるでしょう。その調査結果をもとに、業務改善や人員配置の最適化などを検討すれば、組織全体の生産性向上につなげられます。 今回は、業務量調査のメリットや方法のほか、実施する際のポイントなどを解説します。

業務量調査とは

業務量調査とは、組織やチームの現状の仕事を数値化し、全体像を把握するためにおこなう調査です。具体的には以下の項目を洗い出し、どれだけの量が発生しているのかを計測します。

<業務量調査の項目>
・業務の種類:「事務作業」「クレーム対応」「商品開発」「営業活動」など、どのような業務が発生しているかを分類する
・内容:業務がどのようにおこなわれているかを細分化し、業務フローを明確化する
・頻度:業務がどのくらいの頻度で発生するのか(1日に何件、1週間で何回など)を把握する
・時間:1回の業務にかかる所要時間を計る
・必要な人材やスキル:どのようなスキルや資格を持つ人が担当しているのか、もしくは担当すべきなのかを調べる
・総労働時間や残業時間:どの程度の時間外労働が発生しているか、それはどの業務が原因となっているのかを明確化する

これらを把握することで、「その業務は本当に必要なのか」「最適な担当は誰なのか」「人手不足や過剰配置はないか」などが明確になり、組織が抱える課題を見つける足掛かりになります。
また、無理なく仕事を進められるかどうかを判断する材料にもなるため、労働環境の改善や従業員の負担軽減にも役立つでしょう。

業務量調査をおこなうメリット

業務量調査を実施することで、業務の優先順位付けができる、最適な人員配置が実現するなど、さまざまなメリットがあります。業務調査を実施する具体的なメリットをご紹介します。

業務に優先順位がつけられる


日常業務が忙しくなると、必要な業務とあまり必要ではない業務の見分けがつかなくなることがあります。業務量調査によってどの業務にどれだけの時間が割かれているかが明確になるため、「優先度が高い業務」「いずれは廃止や削減しても問題ない業務」などが可視化されます。
その結果、優先順位をつけて効率良く作業を進めることができるようになり、重要な業務にリソースを集中しやすくなるでしょう。時間をかけるべき業務に経営資源を投入することで、売上増や品質向上といった成果が期待できます。

最適な人員配置が実現


業務量調査をおこなうことで、どの部署でどれだけの業務が発生しているかがわかり、その遂行に必要なスキルや人数も把握できます。
データにもとづいて「ある部署の業務が増えてきたので担当者を増やす必要がある」といった判断ができるため、人材の配置転換や増員・減員の検討に役立ちます。また、業務量が多すぎる部署の業務を別部署へ振り分けることで、従業員の負荷を平準化でき、長期的に見ても従業員の満足度や定着率の向上が望めるでしょう。

属人化の解消が可能


「特定の従業員が不在になると業務が滞る」「その人にしかできない業務が多い」といった属人化は、組織のリスク要因のひとつです。業務量調査をおこなうと、誰がどの業務を、どれだけのボリュームで対応しているかが見えるため、属人化している仕事が一目瞭然になります。
属人化している業務が判明したら、ドキュメント化やマニュアル整備、スキル共有といった改善策を実施可能です。結果として、突然の退職や長期休暇などによる業務停滞リスクを軽減し、組織として安定した生産性を維持できるようになります。

外注する業務を選別できる


業務量調査によって自社の業務を見える化できれば、外注する業務を選別しやすくなるでしょう。自社の人材やリソースで対応できない業務や、定型化しているが作業負担が大きい業務などを把握することで、アウトソーシングやBPOといった解決策が検討できます。業務内容やそれにかかる時間、コストなどが把握できていることで、スムーズにアウトソーシングやBPOを導入できる可能性があります。

業務量調査の方法

業務量調査には、おもに次の3つの方法があり、組織や業務の種類、調査に割けるリソースなどによって最適な方法は異なります。それぞれのメリットや特徴を踏まえて、適切な方法を選択しましょう。

実測法


実測法とは、実際の作業時間を、観察や計測ツールを用いて計測する方法です。現場に立ち会ってストップウォッチなどで時間を測ったり、ITツールを使って作業ログを自動取得したりして、定量的なデータを集めます。

実測法は、製造ラインでの単純作業や、コールセンターでの電話対応時間など、同じ手順で毎回おこなわれる定型作業の計測に向いています。繰り返し発生する業務であれば、観測がしやすく比較もしやすいでしょう。
一方で、非定型の業務(内容が日々変わるケース)やクリエイティブ業務などには、あまり向いていません。また、実際に観察する場合は調査員が必要となり、手間とコストがかかる点にも注意が必要です。

実績記入法


実績記入法は、調査対象となる従業員自身に、一定期間の業務記録をつけてもらう方法です。Excelやワークログ管理ツールなどを使って、以下のような情報を報告してもらいます。

<実績記入法で従業員に記録してもらう業務>
・取り組んだ業務の内容
・業務の頻度(1日何回、1週間で何件など)
・1回あたりにかかった所要時間

従業員が自己申告する形のため、現場への周知徹底やフォーマットの統一が重要です。漏れや誤記録を防ぐために、記入ルールや管理方法をしっかりと設定する必要もあります。

実績記入法のメリットは、業務内容の詳細を本人が把握して報告するため、幅広い業務の実態を捉えやすい点です。ただし、申告者の主観や記憶に依存するため、実測法に比べると誤差が生じやすい点には注意が必要でしょう。また、従業員の記録負担が増えることも考慮しなければなりません。

推定比率法


推定比率法は、部門やチーム全体での総労働時間から逆算し、「どの業務にどのくらいの時間がかかっているのか」を推定する方法です。
部署やチーム全体の勤務時間(残業を含めた総勤務時間)を把握し、その時間を各業務の比率に応じて割り振っていきます。比率をどのように決めるかは、ヒアリングや経験則などが軸となるため、正確性にはやや欠ける面がありますが、大まかな業務量のイメージを短期間でつかむうえでは便利な方法です。

推定比率法は、「実測や実績記入が難しい」「従業員の負担を減らしたい」「まずは業務のざっくりとした全体像を見たい」といったシーンで活用されます。正確性を補うためには、ほかの方法との併用やスポットでの実測などによるデータ補完が望ましいでしょう。

業務量調査を実施する際のポイント

いざ業務量調査をおこなうとなると、従業員にとっては日常業務に加えて、調査という作業が増えることになります。スムーズに調査を進め、成果につなげるためには、以下のポイントを押さえておきましょう。

目的や意義の周知


業務量調査をおこなう背景や目的、調査結果をどのように活用するのかをしっかりと社内に共有しましょう。「なぜこんなに面倒な記録や作業が必要なのか」がわからない状態では、従業員の協力が得られません。

特に、長期にわたる記録を求める場合、調査の意義を理解してもらえないと、「負担が増える」という不満が生まれがちです。定期的な説明会やメールでの周知、上司からの直接説明などを通じて、業務量調査が将来的に自分たちの働き方を楽にする取り組みであることを理解してもらいましょう。

普段どおりの業務遂行


業務量調査で得たいのは、あくまで「普段の業務実態」です。そのため、調査対象者が「上司に見られている」「調査データが評価に響くかもしれない」といった心理的圧力を感じると、普段よりも業務時間を短く見積もったり、本来の仕事と異なる行動をとったりする可能性もあるでしょう。

そうしたバイアスを減らすためには、調査結果を能力調査や評価に直結させないルールを明確にし、徹底することが大切です。可能な限り、個人が特定されにくい形でデータを扱うなどの配慮も効果的です。

ITツールの活用


調査にかかる手間を最小化し、正確なデータを効率的に集めるには、ITツールの活用が役立ちます。勤務時間管理システムやプロジェクト管理ツールを導入すれば、自動的に作業時間の計測やタスクの進捗管理がおこなわれます。

ITツールのなかには、ログイン・ログアウト記録やPCの使用時間、アプリケーションの稼働状況などを取得して分析するものもあります。ただし、従業員が「監視されている」と感じないように、導入時の説明や活用ルールの設定を慎重におこなう必要があるでしょう。
ITツールの目的は管理ではなく、あくまでも業務改善にあることを明確に示すことがポイントです。

結果の分析


業務量調査は、データを集めること自体が目的ではありません。最終的には、そのデータから課題を抽出し、改善策を検討して実行に移すことがゴールです。

たとえば、「A部署の残業時間が増加傾向にあるのは、月末の請求書処理に時間がかかっているからだ」という分析結果を得たなら、「なぜ月末処理に時間がかかるのか」「作業を分割できないか」「自動化できる部分はないか」などを、さらに掘り下げる必要があります。
データ分析においては、単に数字を見るだけでなく、現場の声や具体的なフローも照らし合わせながら原因を追究し、改善に結び付ける意識を持つことが大切です。

業務量調査を専門家に依頼する

業務量調査は業務に従事する社員や管理職も巻き込む必要があり、煩雑で時間のかかる作業です。調査や分析の知識を持つ人が社内にいるとも限らず、調査担当者の負担も大きいことから、専門家に依頼するケースもあります。専門家への依頼は、おもに以下の2つのケースがあります。

コンサルティング会社に依頼する


業務量調査は、コンサルティング会社に依頼することが可能です。業務改善や業務可視化などを請け負うコンサルティング会社などでサービスを提供しており、調査そのものだけでなく、社内向けの調査目的の周知説明会や、結果の分析なども任せられる場合が多いようです。
独自のアンケートシートやツールなどを利用しており、自社でおこなうよりも効率的に業務量調査を進められる場合があるでしょう。ただし、業務量調査と改善提案や戦略策定などがパッケージになっていることもあるため、調査だけを依頼できるかは確認の必要があります。どこまで依頼するか、事前に検討したうえでの相談が必要です。

BPOを利用する


業務量調査の必要がある場合、BPO(Business Process Outsourcing)を利用する方法もあります。BPOは業務プロセスの一部または全部を外部の受託企業に代行してもらう方法で、アウトソーシングの一種です。
BPOの特徴は、単なる業務の代行ではなく、業務改善や業務効率化などを目指す点です。そのため、開始する前には業務量調査で課題を洗い出し、依頼する範囲や内容などを決定していきます。業務量調査の目的も業務改善や業務効率化であり、BPOを利用することで調査の目的が果たせ、同時にその後の改善策の実行ができるでしょう。

<関連記事>
BPOとは?|メリットや委託できる業務、導入の注意点を解説

業務量調査を業務改善につなげよう

業務量調査は、企業や組織の生産性向上を目指すうえで、非常に有効な取り組みです。具体的に「誰が」「どの業務に」「どれくらいの時間をかけているのか」を可視化することで、業務の優先順位を見極めたり、人員配置を最適化したり、属人化を解消できたりといったメリットがあります。

得られたデータを分析し、必要な改善策を立案・実行してこそ、業務量調査の真価が発揮されます。定期的に業務量を見直す文化が根付けば、時代の変化や組織の拡大に応じて柔軟に業務をアップデートすることが可能となり、持続的な成長と働きやすい環境づくりに寄与できるでしょう。

リクルートスタッフィングのBPO(アウトソーシングサービス)のご支援は、業務調査の専門家であるプロジェクトデザイナーが、お客さまの業務を徹底的に洗い出すことからスタートします。漠然と自社の業務に課題を感じていたり、業務効率を向上させる方法で悩んでいたりする場合は、ぜひお問い合わせください。

リクルートスタッフィングのBPO(アウトソーシングサービス)

派遣のご依頼はこちら お問い合わせはこちら