【抵触日】派遣受入期間の制限
2015年の労働者派遣法改正により、すべての業務で派遣先の「事業所単位」と派遣労働者の「個人単位」、それぞれ原則3年を上限とする派遣受入期間の制限が設けられました。このルールの運用に際して押さえておきたい基本的な考え方や、例外について詳しくご紹介します。
目次
「事業所単位」と「個人単位」2種類の期間制限
派遣労働という働き方およびその利用は臨時的・一時的なものであるという観点から、労働者派遣法(以下、派遣法)は、「常用雇用の労働者が派遣労働者に置き換えられること」また「派遣労働者の派遣就労の固定化」を防止するため、企業の派遣受入期間に上限を設けています。
事業所単位の期間制限 | 派遣先の同一事業所に派遣できる期間は、原則3年が上限 |
個人単位の期間制限(※) | 同一の派遣労働者を同一の組織単位に派遣できる期間は、3年が上限 |
派遣受入可能期間である3年を超える最初の日を「抵触日」といいます。たとえば2020年4月1日に就業を開始した派遣労働者の受入可能期間は2023年の3月31日までで、抵触日はそれを超える最初の日である2023年4月1日となります。
(※)「個人単位の抵触日」「組織単位の抵触日」「個人抵触日」などの呼び方がありますが、すべて同一組織における派遣利用の期間制限に関することを指します。
派遣法における「事業所」と「組織単位」の定義
「事業所単位の期間制限」は派遣先の事業所ごとに、また「個人単位の期間制限」は派遣先の組織単位ごとに派遣可能期間が判断されます。この場合の「事業所」と「組織」の定義は以下のとおりです。
「事業所」の考え方
派遣法における「事業所」とは、雇用保険の適用事業所と同様、次の3要件を満たす必要があります。
1.工場、事務所、店舗等、場所的に他の事業所から独立していること
2.経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有していること
3.一定期間継続し、施設としての持続性を有すること
この定義における同一事業所に派遣労働者を受け入れることができるのは原則として3年までです。
3年を超えて同一事業所に派遣労働者を受け入れようとする場合、派遣先は事業所単位の抵触日の1ヶ月前までに、事業所ごとの過半数労働組合に「派遣労働者の継続的受け入れの可否」について意見聴取をおこなう必要があります。
労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する労働者に意見聴取をおこないます。この手続きを経ることにより、さらに3年を限度として派遣期間を延長することができます。
「組織」の考え方
一方、個人単位の期間制限における「組織」の定義は、「業務としての類似性や関連性のある組織であり、かつその組織の長が業務の配分や労務管理上の指揮監督権限を有するもの」となっています。おもに「課」や「グループ」などが想定されています。
この定義における同一の組織で、同一の派遣労働者を受け入れることができるのは3年までです。
事業所単位の期間制限とは異なり、個人単位の期間制限の場合、派遣受入可能期間の延長は一切できません。また、派遣元を変えて継続して受け入れることもできません。
「派遣受入期間制限」の例外となる派遣労働者の属性と業務内容
事業所単位と個人単位の派遣受入期間を紹介しましたが、以下にあてはまる派遣労働者と派遣業務はその対象外となり、派遣受入期間の制限がありません。
無期雇用 | 派遣元と期間の定めのない(無期の)雇用契約を締結している派遣労働者 |
60歳以上 | 60歳以上である派遣労働者 |
休業代替業務 | 産前産後休業、育児休業、介護休業を取得する派遣先の労働者の代わりに同業務を代替しておこなう業務 |
プロジェクト業務 | 業務の開始、転換、拡大、縮小または廃止のための業務であって一定の期間内に完了することが予定されている業務 |
日数限定業務 | その業務が1ヶ月間におこなわれる日数が、当該派遣就業に係る派遣先に雇用される通常の労働者の1ヶ月の所定労働日数と比較して相当程度少なく、かつ、10日以下である業務 |
「派遣受入期間の制限」でよくある質問
Q. 社員が産休・育休に入るため、その期間、派遣を受け入れたい。業務はその社員がおこなっていた業務とそのほかの業務もお願いしたい。休業代替業務で受け入れできますか?
A.(期間制限のない)休業代替業務は当該社員がおこなっていた業務の範囲内でなければならないため、それ以外の業務を含む場合は休業代替業務で受け入れることはできません。当該社員と同じ業務範囲内であれば、休業代替業務での受け入れが可能です。
Q.「課」がない場合、組織単位をどう考えればよいですか?
A.ブランチやディビジョン、セクション、ルームなどの名称にかかわらず、組織の単位は業務としての類似性や関連性、その組織の長が業務配分・労務管理上の指揮監督権限を有するかなどの点から実態に即して判断されます。迷う場合は管轄の労働局に相談するのもひとつの手です。
Q. 事業所Aが新設ビルBにオフィス移転した場合、3年の起算日はリセットされますか?
A.いいえ。単なる住所変更であれば、同一事業所となり、リセットされません。
Q. 事業所単位の期間制限および個人単位の期間制限にはクーリング期間はありますか?
A.はい。クーリング期間は3ヶ月と1日以上空いていることが必要です。
まとめ
派遣労働という働き方およびその利用は臨時的・一時的なものであるという観点から、派遣受入期間には事業所単位と個人単位、2種類の制限が設けられていることをご紹介しました。派遣受入可能期間や延長する場合の意見聴取のフロー、留意点など、不明な点があればリクルートスタッフィングの担当までお問い合わせください。