働き方改革関連法の背景と目的

2021.02.02

働き方改革関連法の背景と目的

「働き方改革関連法」は、少子高齢化や長時間労働、雇用形態による処遇格差といったさまざまな課題を解決し、一人ひとりの意欲や能力が十分に活かされる「一億総活躍社会」を実現するためにつくられた法律です。今回は、「働き方改革関連法」の成り立ちや背景についてまとめました。

働き方改革とは

複数の法律を横断的に改正する「働き方改革関連法」

「働き方改革関連法」は2018年6月に成立した法律で、正式名称を「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」といいます。「働き方改革関連法」という新しい法律ができたのではなく、働き方改革を推進するために、以前からあった労働基準法、労働契約法、労働者派遣法など、8つの労働関係法を横断的に改正することを含めた総称です。

これらの法律は、これまでにも社会情勢の変化などによって適宜改正されてきましたが、今回は「働き方改革」というひとつのテーマに沿って一気に改正が進められ、2019年4月より順次施行されています。

最終目標は「一億総活躍社会」の実現

働き方改革によって目指すものは、「一億総活躍社会」の実現です。
「ニッポン一億総活躍プラン」の概要では以下のように示されています。

一億総活躍社会とは、「女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、障害や難病のある方も、家庭で、職場で、地域で、あらゆる場で、誰もが活躍できる、いわば全員参加型の社会である 平成28年度厚生労働白書|特集1|一億総活躍社会の実現に向けて

「働き方改革」が急がれるおもな背景

国が働き方改革を推進し「一億総活躍社会」を目指す背景には、生産年齢人口の減少や長時間労働、雇用形態による格差などの問題があります。

生産年齢人口の減少

生産年齢人口(15歳〜64歳)は1995年をピークに減少に転じています。一方で総人口に占める65歳以上人口の割合は増加し、年々「少子高齢化」が進んでいます。

この状況はさらに進み、総人口に占める生産年齢人口の割合は、2020年6月1日時点の59.3%から2060年には51.6%まで減少すると見込まれています。※国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(出生中位・死亡中位推計)

こうしたなか、高齢者の就業者数は2004年から16年連続で増加しています。主要国との比較でも高齢者の就業率は高く、「働けるうちはいつまでも」働きたいという高齢者が4割を超えるなど、就業意欲も高くなっています。

子育てや介護、性別、年齢などの壁に阻まれず、それぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる環境を整備することが急務とされています。

長時間労働

日本の労働者1人あたりの年間総実労働時間はおおむね1,700時間台で緩やかな減少傾向にありますが、これは労働時間の少ないパートタイム労働者の比率が上がっていることが要因とされ、一般労働者(パートタイム労働者を除く常用労働者)についてはほぼ横ばいの2,000時間台での推移となっています。

働き方改革の目指す「ニッポン一億総活躍プラン」においても、「長時間労働は仕事と子育てなどの家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参画を阻む原因」としていて、長時間労働を是正していくことが労働の「質」を高め、多様なライフスタイルを可能にしていくと示唆しています。

正規・非正規雇用労働者間の格差

パートタイマーやアルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託社員などの「非正規雇用労働者」は男女ともに緩やかに増加しており、2019年平均で役員を除く雇用者全体の38.3%になっています。

「非正規雇用に就いたおもな理由」についても変化が見られ、男女ともに「正規の職員・従業員の仕事がないから」と回答した「不本意非正規雇用労働者」の割合は低下しています。一方で「自分の都合のよい時間に働きたい」といった理由が増えてきています。女性においては「家事・育児・介護等と両立しやすい」という理由も増加傾向にあります。

ただし、賃金やスキルアップの面で正規雇用労働者との格差は大きく、たとえばフルタイム労働者を100とした場合のパートタイム労働者の賃金は、欧州諸国でおおむね70〜80%以上であるのに対し、日本では60%を切る水準となっています。

正社員以外に教育訓練を実施している事業者は正社員の約半数

 事業所における教育訓練の実施状況

事業所における教育訓練の実施状況「平成30年度能力開発基本調査(調査対象年度は平成29年度)」/厚生労働省

また厚生労働省によると、スキルアップの面でも正社員以外に教育訓練をしている事業所は、正社員の約半数という結果が出ています。
このような格差の解消を推進し、多様な働き方を自由に選択できるようにすることで、労働参加意欲や労働生産性を高めることが期待されています。

働き方改革の具体的プラン

働き方改革の具体的なプランは、とても広い範囲に及んでいます。

1.同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
2.賃金引上げと労働生産性向上
3.罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正
4.柔軟な働き方がしやすい環境整備
5.女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備
6.病気の治療と仕事の両立
7.子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労
8.雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援
9.誰にでもチャンスのある教育環境の整備
10.高齢者の就業促進
11.外国人材の受入れ
※「働き方改革実行計画」平成29年3月28日 働き方改革実現会議決定を元に作成

とくに非正規雇用の待遇改善については、身近な話題として大きく取り上げられています。
これは、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者)との「不合理な待遇の差」をなくすための規定(いわゆる「同一労働同一賃金」)で、おもにパートタイム・有期雇用労働法と労働者派遣法(以下、派遣法)が改正されています。

また、ここでいう「待遇」には、賃金をはじめ、福利厚生や教育なども含まれています

まとめ

「働き方改革関連法」は単なる法改正ではなく、さまざまな課題を解決することでよりよい環境をつくり、「一億総活躍社会」を実現するための大規模な施策であることをご紹介しました。労働基準法や派遣法、パートタイム・有期雇用労働法をはじめとした改正法についてご不明な点があれば、リクルートスタッフィングまでお気軽にお問い合わせください。

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