派遣労働者を特定する行為の禁止

2021.03.12

派遣労働者を特定する行為の禁止

労働者派遣法(派遣法)は、紹介予定派遣を除いて、派遣先企業が派遣労働者を選別すること(特定行為)を禁止しています。この禁止の理由を正しく理解し、労働者派遣の依頼時や職場見学を受け入れる際に、特定行為とみなされることのないように配慮することが大切です。

なぜ派遣先企業は派遣労働者を選んではいけないのか

派遣元と派遣先企業が結ぶ派遣契約は、労務の提供を目的とする契約であって、特定の労働者を派遣する契約ではありません。どの労働者を派遣するかは、派遣元が労働者の能力を評価して判断するため、派遣先企業が派遣労働者を選ぶことはできません。

ただし紹介予定派遣では、派遣先企業への直接雇用が前提となるため、面接をおこなうことが認められています。

特定行為とみなされる行動・発言

特定行為とみなされる行動の例

派遣法が禁止している「派遣労働者を特定することを目的とする行為」に該当するのは、以下のようなケースです。

  • 労働者派遣に先立って面接をおこなう
  • 履歴書の提出を求める
  • 派遣する労働者を若年者に限定する
  • 派遣する労働者の性別を限定する
  • 職場見学に委託元担当者を同席させる

職場見学で特定行為とみなされる質問事項

職場見学は、派遣労働者の希望に基づき、派遣労働者が就業場所を確認し、担当する業務の内容について詳しく知るためにおこなわれます。派遣先企業が職場見学を受け入れる際に、特定行為とみなされる質問事項について整理しました。

個人情報に関すること

氏名や年齢をはじめ、居住地(エリア)や出身地に関する情報、家族についての情報(家族構成や家族の職業など)、派遣会社での雇用形態(無期・有期)を質問することはできません。

職務遂行能力に関係のないこと

本人の健康状態や結婚・出産・離婚に関すること、宗教・信仰の有無、将来の転職希望、学歴、各職歴のあった勤務先の名称、退職理由などの情報を聞くことも禁止されています。

個人を特定する発言

「あなたに決めました」「ほかの候補者に会ってから検討するので」「いつから就業可能ですか?」といった派遣労働者を特定するような発言も避けてください。

特定行為は行政指導の対象

派遣労働者を特定する行為をした場合には、派遣法違反として派遣先企業が行政指導の対象になります。派遣労働者を特定する行為によって派遣労働者との雇用関係が曖昧になり、場合によっては派遣先企業が雇用主としての責任を問われるなど、派遣先企業と派遣労働者との間で労働問題が生じる可能性があるためです。また、職業安定法で禁止されている労働者供給事業に該当するおそれもあります。

「派遣労働者を特定する行為」でよくある質問

Q.依頼しているのは派遣労働者1名ですが、職場見学に同時に2名連れてきてもらえますか?

A.派遣先企業が労務提供を受けようとする派遣労働者が1名に限られる場合に、2名以上の派遣労働者を連れて行くことはできません。これは、派遣先企業による選考行為(特定行為)とみなされるためです。

Q.職場見学時に、派遣労働者に退職理由、志望動機、保有スキルなどを聞いてよいでしょうか?

A.いずれの質問も、派遣先企業が派遣労働者を選考していると誤解を与えてしまうので、そのような質問は避けてください。

Q.職場見学に来た派遣労働者に、その場で派遣先企業から「明日から来てほしい」と伝えてよいでしょうか?

A.どの労働者を派遣するかは、派遣元が派遣先企業の希望と労働者の能力をふまえて判断することになります。この場合も派遣先企業が派遣労働者を選考しているとの誤解を与えるため避けてください。

まとめ

派遣先企業が派遣労働者を特定することを目的とする行為を禁じるのは、派遣先企業にどの労働者を派遣するかを決定する役割が雇用主である人材派遣会社にあるためです。派遣法の主旨を正しく理解したうえで、派遣契約の締結にあたっては、特定行為によって派遣労働者との間に雇用関係が生じると誤認されないように努めましょう。

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