年5日の年次有給休暇の確実な取得促進

2021.04.15

年5日の年次有給休暇の確実な取得促進

働き方改革の一環として労働基準法が改正され、2019年4月1日から年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年5日については付与日から1年以内に使用者が時季を指定して取得させることが義務づけられました。派遣労働者の場合、使用者は派遣元ですが、年次有給休暇を取得する際には派遣先企業との連携が必要となります。今回はこのルールの基本的な考え方についてわかりやすくご紹介します。

年次有給休暇はすべての雇用形態に付与される権利

年次有給休暇は労働基準法第39条で規定された労働者の権利であり、業種や業態を問わず、また正社員、派遣労働者、パートタイム労働者といった雇用形態にかかわらずすべての労働者に付与されるものです。

年次有給休暇の発生要件

年次有給休暇とは、一定の要件を満たした労働者に対して心身のリフレッシュを図るために付与される休暇を指し、「有休」「有給休暇」「年休」などさまざまな呼び方があります。

年次有給休暇が付与される要件は以下の2つです。
(1)雇い入れの日から6ヶ月経過していること
(2)全労働日のうち8割以上出勤していること

年次有給休暇の付与日数

年次有給休暇の日数は当初6ヶ月間継続勤務で10日、その後も同様の要件を満たすことによって2年6ヶ月までは勤続1年ごとに1日ずつ増え、3年6ヶ月目からは勤続1年ごとに2日ずつ増えて最高20日間となります。

継続勤務年数ごとの付与日数

継続勤務年数ごとの付与日数

派遣労働者についても同様です。同一派遣元で6ヶ月継続勤務し(派遣先が同一でなくても可)、継続勤務中の8割以上出勤した段階で、派遣元から10日の年次有給休暇が付与されます。

年次有給休暇の比例付与

所定労働日数の少ない派遣労働者には、所定の労働日数に比例した年次有給休暇が付与されます。
所定労働時間が週30時間未満で、週の所定労働時間が4日以下または年間の所定労働時間が216日以下である場合は、通常労働者の年次有給休暇の日数と所定労働時間を比例計算した日数が付与されることになります。

2019年4月から年5日の年次有給休暇取得を義務化

年次有給休暇の取得率は近年緩やかな上昇傾向にありますが、依然50%台という水準にとどまっています。この状況を改善するため、2020年にその取得率を70%にすることなどを目標として労働基準法第39条が改正され、使用者に年次有給休暇を取得させる義務が生じました。

時季指定義務の対象者と内容

時季指定義務の対象となるのは、法定の年次有給休暇が10日以上の労働者です。
年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に、5日については時季を指定して取得させることが使用者の義務となっています。

たとえば2019年4月1日に雇用契約を締結した場合、6ヶ月後の10月1日が年次有給休暇付与の基準日となり、その日から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させる必要があります。

年次有給休暇の基準日と取得義務の期間

年次有給休暇の基準日と取得義務の期間

時季指定の対象にならないケース

派遣労働者やパートタイム労働者でも付与日数が10日以上ある労働者は時季指定義務の対象となりますが、当年の付与日数が10日未満で、前年からの繰り越し分と合わせて10日以上となる場合は対象になりません。

また、すでに5日以上の年次有給休暇を請求・取得している労働者に対しては使用者が時季指定をする必要はなく、また、時季指定することもできないとされています。

派遣労働者の時季指定による年次有給休暇取得のフロー

派遣労働者の場合、使用者は派遣元であり、年次有給休暇の管理や時季指定義務は派遣元にあります。
しかしながら実際の取得に際しては就業している派遣先企業の理解と協力が必要不可欠であり、派遣先企業と派遣元の綿密な連携により実効性を高めていくことが求められています。

改正労働基準法による時季指定義務の概要

改正労働基準法による時季指定義務の概要

派遣元は年次有給休暇の時季指定にあたり、あらかじめ派遣労働者の希望を聴取しなければならず、また、できるかぎり希望に添った取得時季になるよう努める必要があります。

なお、年次有給休暇は勤務日(労働日)にのみ、取得できるものです。契約書によって休日とされている日に年次有給休暇を取得することはできません。

まとめ

ワークライフバランスを重視した働き方改革を推進し、年次有給休暇の取得率を上げるために改正された労働基準法第39条。社員はもちろん派遣労働者も気持ちよく年次有給休暇を取得できる環境をつくり、心身ともにリフレッシュしてもらうために、各人の意向をうまく採り入れ、時季指定義務の実施を計画的に進めましょう。

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