ミドル・マネジャーの実態調査|役割変革の阻害要因と役割変革に必要なこと

2021.04.07

ミドル・マネジャーの実態調査|役割変革の阻害要因と役割変革に必要なこと

働き方改革、ダイバーシティ&インクルージョン、コンプライアンス、イノベージョンの創出、戦略推進と業績アップなど、ミドル・マネジャーが現場で舵取りを担う施策は多岐にわたっています。リクルートマネジメントソリューションズが実施した調査結果から見えてきた課題と、課題解決の糸口についてご紹介します。

ミドル・マネジャーの役割に関して実態調査を実施

企業の戦略にもとづいて現場でさまざまな舵取りを担い、「多重債務」状態ともいわれるミドル・マネジャーたちは今、現場で何を考え、何に悩んでいるのでしょうか。リクルートマネジメントソリューションズがおこなった実態調査から現代のミドル・マネジャー像が見えてきました。ここでは、調査結果からいくつかピックアップしてご紹介します。

◇調査対象
会社勤務の、部下をもつ課長相当の管理職(経験年数半年以上)
※年齢は20〜59歳
※勤務先の従業員規模は300名以上
※職務系統(営業・販売/企画・事務/開発)が均等になるように回収

◇調査内容
役割ごとの時間配分とその変革意向(業務マネジメント/方針づくり/部下マネジメント/対外的活動/プレイヤー業務)、仕事や職場・部下の状況、適応感など

◇調査方法
インターネット調査

◇実施時期
2020年3月

◇有効回答数
601名

◇回答者の属性
製造業36.7%、非製造業57.2%、その他・不明5.2%
※従業員規模:300名以上500名未満16.6%、500名以上1000名未満以上17.5%、1000名以上3000名未満24.6%、3000名以上5000名未満9.7%、5000名以上10000名未満9.5%、10000名以上22.1%
※課長になってからの期間:半年以上1年未満6.5%、1年以上3年未満21.5%、3年以上5年未満20.3%、5年以上10年未満22.6%、10年以上29.1%
※女性6.3%、男性93.7%
※未婚19.8%、既婚80.2%

「時間の使い方」で5タイプに分類

ミドル・マネジャーが担う役割は多岐にわたっていますが、今回の調査ではミドル・マネジャーのおもな役割(業務)として、以下の5つをあげています。

  • 業務マネジメント(業務の計画、割り当て、進捗管理、トラブル対応、問題解決、など)
  • 方針づくり(組織の方向性やビジョンを考え・提示する、戦略や戦術の決定や修正、など)
  • 部下マネジメント(方針や業務分担の意味を伝える、意欲や能力を高める、相談に乗る、など)
  • 対外的活動(社内外のネットワーキング、情報収集、対外発信、など)
  • プレイヤー業務

ミドル・マネジャーの役割を5つに分類したうえで、「それぞれの業務に割いている時間の割合」別に5タイプに分類しました。

時間配分の典型5タイプ/出典元:リクルートマネジメントソリューションズ 「ミドル・マネジャーの役割に関する実態調査」

たとえば、業務計画や仕事の割り当て、進捗管理などの業務マネジメントにもっとも多く時間を割いている人は【業務マネジメント重視タイプ】、組織の方向性やビジョンを考え提示、戦略や戦術を決定するなどの方針づくりに多くの時間を割いている人は【方針重視タイプ】という具合です。

各タイプの月間労働時間|【プレイングマネジャータイプ】は長時間労働傾向

時間配分タイプごとの月間労働時間の分布と時間感覚/出典元:リクルートマネジメントソリューションズ 「ミドル・マネジャーの役割に関する実態調査」

5タイプごとに月間労働時間を調査したところ、長時間労働者の割合がもっとも高かったのは【プレイングマネジャータイプ】で、月間200時間以上働いている人の割合が43.1%でした。マネジャー業務を忙しくしている要因のひとつは、マネジャー自身のプレイヤー業務にあると考えられます。

プレイングマネジャータイプが、プレイヤー業務をする理由/出典元:リクルートマネジメントソリューションズ 「ミドル・マネジャーの役割に関する実態調査」

なぜ、マネジャーでありながらプレイヤー業務に多くの時間を割いてしまうのでしょうか。おもな理由は以下です。

  • 難易度の高い業務を任せられる人材がいない
  • 難易度は高くない業務だが、遂行する人材が不足している
  • イレギュラーな業務が発生した際に、自分が対応する必要がある

難易度の高い業務やイレギュラーな業務のみならず、任せられる人がいない「人材不足」が要因となっているようです。

時間配分タイプごとの管理職としての役割を果たす上での課題/出典元:リクルートマネジメントソリューションズ 「ミドル・マネジャーの役割に関する実態調査」”

しかしながら、「部下に仕事を任せられない」と感じているのは、【プレイングマネジャータイプ】だけではないようです。【方針重視タイプ】以外は、約5割の人が「部下に仕事を任せきれない」ということを管理職としての役割を果たすうえでの課題としてあげています。

一方、【方針重視タイプ】は部下に仕事を任せることでプレイヤー業務の割合を10%程度に抑え、方針づくりと業務マネジメントに約30%ずつ時間を割いています。「時間を割いて作った確かな方針にもとづいて業務マネジメントを進めることで、部下に仕事を任せやすくなる」という好循環が生まれていることが推測されます。

理想的な時間配分|時間をかけたいのは部下マネジメント

本来、ミドル・マネジャーたちはどのような時間配分を望んでいるのでしょうか。時間配分を増やしたい業務と減らしたい業務について尋ねました。

時間配分タイプごとの時間を増やしたい/減らしたい業務/出典元:リクルートマネジメントソリューションズ 「ミドル・マネジャーの役割に関する実態調査」

【方針重視タイプ】を除き、時間を増やしたい業務でもっとも多かったのは「部下マネジメント」でした。【方針重視タイプ】のみ、「部下マネジメント」より「方針づくり」を優先させる傾向が見られました。すでに約30%の時間を「方針づくり」に割いている【方針重視タイプ】ですが、約半数の人がもっと時間をかけたいと考えており、方針づくりに手応えを感じていることがうかがえます。

また、時間配分をもっとも減らしたい業務として、5タイプすべてが「プレイヤー業務」をあげました。

時間配分を変えられるかは組織のサポート次第

時間配分を変える難しさ/出典元:リクルートマネジメントソリューションズ 「ミドル・マネジャーの役割に関する実態調査」

理想と現実にギャップが見られる時間配分ですが、時間配分を変えることの難しさについて聞いてみると、「とても難しい」「やや難しい」と答えた人は、合わせて86.9%にのぼりました。

時間配分を変えるための具体的な手段を尋ねたところ、「人員の確保がいちばんだが、なかなか難しい(営業・販売)」などの意見がありました。一方で「自動化と権限委譲(開発)」「仕事の断捨離、他担当との業務分担見直し(企画・事務)」など業務効率化による可能性や、「人材の底上げ(営業・販売)」「経営幹部の意識改革(企画・事務)」など組織力の向上に期待する声もあがっています。

「働き方改革」はミドル・マネジャーを助けているか

近年、日本社会全体で取り組まれている「働き方改革」ですが、時短勤務やリモートワークなど、多様な働き方の普及に伴い、ミドル・マネジャーの負担感は変わっているのでしょうか。「マネジャー業務の時間配分の変えにくさ」と「働き方改革」との関連性について見ていきます。

この2〜3年の働き方の変化と、時間配分の変えにくさ/出典元:リクルートマネジメントソリューションズ 「ミドル・マネジャーの役割に関する実態調査」

「時間配分を変えにくい」と考える群と「時間配分を変えるのは難しくない」と考える群別に、働き方の変化と時間配分の変えにくさについて調査しました。「仕事に使う時間(労働時間)が減った」「働く場所や勤務時間をより柔軟に変えられるようになった」「周囲に多様な勤務形態や属性の人が増えた」という働き方改革による変化そのものに関する認識には、双方に差異はありませんでした。

しかし、「働き方の多様化により、管理職の負担感が増している」と感じている人は、時間配分を変えにくいと考えるミドル・マネジャーのほうにより多く見られました。管理職の役割変更を阻害するのは、働き方の変化そのものではなく、そのことにより管理職の負担が高まる場合であると考えられます。

「働き方改革」の影響と時間配分の変えにくさ/出典元:リクルートマネジメントソリューションズ 「ミドル・マネジャーの役割に関する実態調査」

また、「働き方改革」が個人や職場に及ぼした影響との関係から見ていくと、効率一辺倒で余裕が失われたり、会社のビジョン実現に向けた求心力が低下したり、お互いの仕事をフォローし合うような協働の精神が失われたりといった影響が見られた組織では、ミドル・マネジャーの役割変革がおこなわれにくいことも調査結果からわかっています。

人事や経営層による組織的な施策でミドル・マネジャーをサポートすることが、「働き方改革」を成功させる鍵となるでしょう。

本調査でわかったこと

本調査では、一口にミドル・マネジャーといっても、時間のかけ方の違いにより5つのタイプに分類されることがわかりました。また、それぞれが管理職として本来の役割を果たすために、現状に課題を感じ、時間配分の変革を望んでいることも明らかになりました。本調査を実施したリクルートマネジメントソリューションズは、調査結果から以下の2点を提言しています。

多くのミドル・マネジャーが「部下のマネジメント」に時間を増やしたいと考えている

ミドル・マネジャーが部下のマネジメント業務により多くの時間を割くためには、現状多くの時間を費やしているプレイヤー業務を減らすことが必要と思われます。しかしながら、「部下に仕事を任せられない」「人材が不十分」という課題感から、それを実現できないのも事実です。

そしてその課題解決の鍵として「方針づくり」に力を注ぐことが示唆されました。部下と一緒に将来のビジョンを語りあい方針を見出すことで、部下の自律性を高めて仕事を任せやすくすることは、部下の成長やキャリア開発にも役立つのではないでしょうか。

ミドル・マネジャーの役割変革は個人の努力だけでは難しい

ミドル・マネジャーの役割変革は個人の意識と努力だけで果たすのは難しいという現実も明らかになりました。近年、急速に進む「働き方改革」や「HRBP(HRビジネスパートナー:現場に出ていく人事)」のトレンドは、まさにこの点を意識しておこなわれるべきでしょう。

ミドル・マネジャーの時間の使い方を理想に近づけ、本来力を発揮すべき業務に集中できるように、スキルの低い人やメンタル面で問題を抱える人のケアを人事などが組織横断でおこなったり、求心力や協働を高める組織開発の支援をしたりするなど、組織全体でのサポートが求められています。

まとめ

「働き方改革」が進んでも、なかなか減らないミドル・マネジャーの労働時間や負担に悩んでいる企業は多いのではないでしょうか。今回の調査結果から見えてきた課題解決の糸口を参考に、管理職の役割変革に取り組んでみてはいかがでしょうか。

「ミドル・マネジャーの役割に関する実態調査」に関してより詳細に知りたい方は、時間配分の5タイプに見る管理職の役割変革 鍵となる組織サポートをご覧ください。

また、リクルートスタッフィングでは「働き方改革における管理職への影響と変化」に関する調査も実施いたしましたので、ご参考にしてください。
働き方改革における管理職への影響と変化 調査結果

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