派遣スタッフの労働時間管理、派遣先の役割は?

2021.11.18

派遣スタッフの労働時間管理、派遣先の役割は?

ある日あすかさんは派遣先の担当者からこんな質問を受けました。

「今月は決算で忙しくて、経理業務をお願いしている派遣スタッフの残業時間が45時間を超えてしまいそうで…どうしたらよいでしょう?」

「それは大変ですね…確認します!」

あすか

リクルートスタッフィング入社1年目、派遣営業部所属。
口ぐせは「確認します…」と「教えてください!」

さとし

リクルートスタッフィング入社8年目、法務部所属。
好きな業務はリーガルチェックのテスト作成


派遣スタッフの労働時間管理について教えてください!

はい、なんでしょう。


決算月などの繁忙期に派遣スタッフの残業時間が45時間(※)を超えてしまいそうなときにはどうしたらよいでしょうか?

※リクルートスタッフィングでは36協定で残業時間の上限を45時間と定めています。上限時間はその企業が締結している36協定の内容により異なります。

まずは労働時間について確認しておきましょう。
労働基準法にて、原則として働いてよいのは以下のように定められています。

 

・1日8時間/週40時間
・法定休日:毎週少なくとも1日以上

 

この法定労働時間を超えて社員に時間外労働をさせる場合や、法定休日に労働させる場合には、労使協定の締結および、所轄労働基準監督署長への届出が必要となります。
この労使協定が、労働基準法第36条に基づく労使協定=「36協定(さぶろくきょうてい)」と言われるものです。社員に残業をさせるには36協定が必要になります。


36協定は派遣スタッフにも適用されますか?

はい、適用されます。ただし、36協定の締結や届け出は派遣元がおこないます。


なるほど。では派遣スタッフの労働時間管理は派遣元がおこなうということですか?

労働基準法では、雇用主には労働時間の管理義務があります。
派遣においては就業の特殊性から、「労働時間管理の枠組み(36協定の締結など)の設定は派遣元事業主の責任/実際の労働時間の管理は派遣先企業の責任」と、役割の分担が定められています。

 

そのため、日々の派遣スタッフの労働時間管理の責任は派遣先にあります。ただし、派遣先の36協定の範囲内ではなく、派遣スタッフには派遣元の36協定が適用されるため注意が必要です。リクルートスタッフィングの場合は、36協定で残業時間の上限を45時間と定めていますので、派遣先企業ではそちらを遵守していただく必要があります。

派遣スタッフの労働時間に関する責任
・派遣元:労働時間管理の枠組み(36協定の締結など)の設定
・派遣先:派遣スタッフの労働時間管理 ※派遣元の36協定が適用される


派遣先は派遣元の締結した労使協定の範囲内で派遣スタッフの残業や休日を管理しなければならないということですね。今回のように残業時間が36協定の範囲を超えてしまう場合はどうしたらよいのでしょうか?

まずは、派遣先企業内で業務調整などをおこない、36協定の範囲内に収まるよう努めていただきたいです。それでも、どうしても残業時間が上限を超えてしまいそうな場合には、36協定の特別条項により労働時間を延長することができます。その際、派遣先は事前に派遣元に特別条項を利用する旨を通知し、派遣元は必要な手続きを取る必要があります。


事前に派遣元に連絡をしておけば、労働時間を延長することができるんですね!

はい、ただしリクルートスタッフィングでは、基本の「月45時間」を超え、特別条項が適用されるのは1年に6回までです。


守らなかった場合はどうなるのでしょうか?

特別条項の申請を行わずに45時間を超えることになると、派遣先が労基法第36条に違反したことになり、罰則を受けることとなります。


派遣元の定めた上限を守って管理すればいいんですね。

法律上はそうなりますが、範囲内であればよいというわけではありません。派遣スタッフが望まない残業はもちろんさせるべきではありませんし、36協定内の時間外労働だとしても、心身の健康などに配慮する義務があります。


残業が続いてしまいそうな場合はどのようにしたらよいでしょうか?

まずは派遣スタッフの業務量が適正であるか見直しましょう。時期によって業務量が増えてしまうのであれば、あらかじめほかの社員の時間を確保しておくなど準備をしておくのが望ましいです。
臨時的な対応として、短期の人材活用を検討する方法もあります。人数やほしい人材にあわせてパートやアルバイト、派遣などの外部人材活用の仕組をうまく使うことをおすすめめします。


なるほど!そのほうが派遣スタッフも不安なく働くことができ、派遣先も適正な労働管理ができますね。


POINT
派遣スタッフの労働時間管理

・派遣元は労働時間管理の枠組み(36協定の締結など)の設定をおこなう
・派遣スタッフの労働時間管理の責任は派遣先にある
・派遣スタッフには派遣元の36協定が適用される
・残業時間が上限を超えてしまいそうな場合には、事前に派遣元に連絡しておくことで36協定の特別条項により労働時間を延長することができる
・派遣スタッフの残業が続いてしまう場合は業務量が適正であるかを見直す

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