派遣社員にやらせてはいけないこと|派遣活用における注意

派遣社員にやらせてはいけないこと|派遣活用における注意

少子高齢化による労働人口の減少などから企業の採用難が続くなか、人材派遣は即戦力を迎える手段として期待されています。ただし、派遣スタッフの働き方は労働者派遣法で規定されており、業務を依頼できる範囲には決まりがあります。トラブルなく派遣を活用するためにも、法的に従事させられない業務や、指示してはいけないことなどを知っておく必要があるでしょう。 今回は、派遣スタッフに対して、具体的にどのようなことが禁止されているのか解説します。

派遣スタッフにやらせてはいけない業務

どんな業務も派遣活用ができるわけではありません。派遣法で禁止されている業務や契約書に記載がない業務など、派遣スタッフにやらせてはいけない業務があります。

派遣の受け入れが禁止されている業務

労働者派遣法や施行令では、適用除外業務など労働者派遣が禁止されている業務があります。派遣依頼の際は、依頼しようとしている業務が、下記のような受け入れが禁止されている業務に該当しないか、はじめに確認しておきましょう。

派遣の受け入れが禁止されている業務

港湾運送業務 湾岸と船舶の間の貨物の搬入など港湾での運送に関わる業務
建設業務 建設現場での建設に関わる業務
(資材の運搬、組立、車両誘導等)
警備業務 巡回、巡視、交通整理などの警備 業務
医療業務※ 医療に関わる業務
(医師、看護師などの業務)
士業 弁護士、司法書士、公認会計士、 税理士、弁理士、行政書士等

※紹介予定派遣の場合、医療業務への派遣を受け入れることは可能です。

適用除外業務(港湾運送業務、建設業務、警備業務、医療業)は一部例外があるものの、原則として派遣の受け入れはできません。適用除外業務で派遣をおこなった場合、派遣元企業は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」という罰則の対象になり、労働者派遣の事業停止命令を受ける可能性もあります。派遣先企業も、適正な派遣就業のための措置をとるよう勧告され、従わなければ企業名が公表される罰則の対象となります。

また、派遣先企業が適用除外業務で違法派遣を受け入れた場合、「労働契約申込みみなし制度」の対象となるため、注意が必要です。

<労働契約申込みみなし制度>
違法な派遣労働があった場合、それを受け入れた時点で、「派遣先企業が、その時点の派遣元における労働条件と同じ労働条件で、当該派遣労働者に対して労働契約の申込みをした」とみなす制度です。派遣労働者が承諾すれば労働契約が成立し、違法状態が終了した日から1年間は、労働契約の申込みを撤回できません。

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労働契約申込みみなし制度|知っておきたいリーガル知識

契約に記載がない業務


派遣先企業と派遣元企業の間では労働者派遣契約書が作成されており、派遣スタッフが従事する業務内容や就業場所、所属部署、労働時間などが明記され、契約書に記載のないことを指示することはできません 。
下記のようなことは、契約書に記載がなければ指示できないため、チェックしておきましょう。

残業


契約書に残業(所定外時間労働)に関する記載がなかったり、残業がないと記載されていたりすれば、派遣スタッフに残業させることはできません。残業させる場合は、派遣会社が36協定の締結や届け出を提出している必要があり、派遣先企業は派遣元会社の36協定の範囲内で残業を指示することができる点にも注意が必要です。

出張


契約書に記載のない出張を命じることはできません。派遣スタッフの出張が予定される場合は、出張業務がある旨を契約書に記載しておき、出張先の事業所名や業務内容、期間なども明記する必要があります。出張費用や手当などの詳細も記載しておくとよいでしょう。

部署異動


契約書に記載されていない部署や営業所などでの労働は禁止です。そのため、原則として部署異動はできません。「予定していた業務が思ったより早く終わったので、別の部署の業務を手伝ってもらう」といったことも、違反となる可能性があります。
部署異動は派遣先企業と派遣スタッフ双方の合意があれば可能です。その際も、契約書の内容を変更しなければならないことに注意しましょう。

派遣スタッフに任せる業務範囲を増やしたい場合は、契約書の内容を変更する必要があります。派遣契約内容に関する事項については、時期等も含め、派遣スタッフとではなく派遣会社と相談しなければなりません 。

派遣活用で注意が必要なこと

派遣を活用するためには、業務に関すること以外にも気をつけたいポイントがあります。日雇派遣や二重派遣は派遣元である派遣会社が注意すべきことですが、派遣を依頼する側も基礎知識として確認しておきましょう。

日雇派遣


労働者派遣法では、派遣会社と派遣スタッフが雇用関係を結ぶ際は、原則「31日以上の雇用期間」の契約を結ぶよう義務付けられています。1日や1週間といったスポット派遣も可能ですが、派遣スタッフは派遣会社と31日以上の雇用契約を結んでいる必要があります。
ただし例外として、ソフトウェア開発や機械設計など、一部の業務では日雇派遣が禁止ではありません。「60歳以上」「雇用保険の適用を受けない学生」「日雇い派遣に副業として従事」「世帯収入が500万円以上で主たる生計者でない」のどれかひとつに該当する場合も、日雇い派遣が認められています。

二重派遣


二重派遣は派遣スタッフを他の企業に再派遣する行為です。責任の所在が不明確になり、中間搾取のおそれもあるため、契約違反であり、法律によっても禁止されています。
再派遣しているつもりがなくても、関連会社や子会社、取引先などで派遣スタッフを働かせた場合も二重派遣になる可能性があります。

事前面接


法律では、派遣先企業が受け入れ前に派遣スタッフを特定する行為を禁じています。そのため、事前に面接や履歴書の提出を求めることはできません。就業前の職場見学は可能ですが、あくまで派遣スタッフが希望した場合に実施できるものです。派遣先企業が派遣スタッフを選考したり特定したりすることを目的とするものではないことを押さえておきましょう。

派遣活用のためには、やらせてはいけない業務に注意

派遣の働き方には直接雇用の従業員とは異なるルールがあり、知らないまま受け入れれば、意図していなくても契約違反や法令違反になってしまうかもしれません。契約外の業務を任せてしまわないためにも、契約締結の際は記載する業務内容や業務範囲をしっかり確認しておきましょう。定期的に契約内容を見直すことでも、トラブルを防げます。実際の運用に際して不明な点や判断に迷うことがありましたら、リクルートスタッフィングの担当までお問い合わせください。

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