派遣先責任者の選任

人材派遣を受け入れる際、派遣先企業は、派遣先における派遣労働者の就業管理を一元的におこない、適正な就業を確保するために、「派遣先責任者」を選任しなければならないとされています。派遣元との連絡調整役も担う派遣先責任者について、選任方法や職務内容を詳しく紹介します。
派遣先責任者の選任方法
派遣先責任者は事業所ごとに専属の者を選任する必要があります。この場合の「専属」とは派遣先責任者の職務のみに従事するということではなく、「ほかの事業所の派遣先責任者を兼任しない」という意味であるとされています。
派遣先責任者の数は、事業所ごとの派遣労働者の数に応じて決まります。
派遣労働者の数 | 派遣先責任者の数 |
---|---|
1人〜100人以下 | 1人以上 |
101人〜200人以下 | 2人以上 |
201人〜300人以下 | 3人以上 |
派遣先の事業所における派遣労働者数1人以上100人以下を1単位とし、1単位ごとに1人以上ずつ派遣先責任者を選任しなければなりません。
ただし、事業所における派遣労働者の数と派遣先が雇用する労働者の数を加えた数が5人以下の場合は選任の必要はないとされています。
派遣先責任者を選任する義務のある事業者がそれを怠った場合、30万円以下の罰金に処せられる場合があります。
派遣先責任者の資格
派遣先責任者に必要な専門資格等は特にありませんが、以下のように派遣先責任者の職務を的確に遂行できる者を選任するよう努めることが推奨されています。
(1)労働関係法令に関する知識を有する者であること
(2)人事・労務管理などについて専門的な知識、または相当期間の経験を有する者であること
(3)派遣労働者の就業に係る事項に関する一定の決定、変更をおこない得る権限を有する者であること
派遣先責任者の職務
派遣先責任者は、派遣先企業における派遣労働者の適正な就業を確保するため、次のような役割を担います。
(1)指揮命令者や関係者等へ派遣法や契約内容を周知すること
(2)派遣受入可能期間の延長通知に関すること
(3)派遣先における均衡待遇の確保に関すること
(4)派遣先管理台帳の作成、記録、保存および記載事項の派遣元への通知に関すること
(5)派遣労働者から申し出を受けた苦情の処理に当たること
(6)安全衛生などに関して、派遣元と必要な連絡調整をおこなうこと
(7)そのほか派遣元との連絡調整に関すること
「派遣先責任者の選任」でよくある質問
Q.派遣先責任者をほかの事業所(本社等)から選任できますか?
A.できません。派遣先責任者は、派遣労働者が就業する同一の事業所から選任する必要があります。
Q.派遣先責任者を派遣労働者が就業している部署とは違う部署から選任してもよいでしょうか?
A.同一の事業所であれば、他部署の方でも問題はありません。
Q.正社員ではなく、契約社員から派遣先責任者を選任することは可能ですか?
A.法律では禁止されていませんが、派遣責任者の職務を全うするだけの権限がない場合は望ましくありません。
Q.役員を派遣先責任者に選任できますか?
A.株式会社および有限会社の役員は派遣先責任者になることができます。ただし監査役は業務の性格上、派遣先責任者に選任することはできません。
Q.派遣先責任者として選任できる人がいない場合はどうすればよいですか?
A.派遣先責任者の選任は派遣法に定められた規定であり、労働者派遣契約書(個別契約書)に記載すべき法定項目にも含まれるため、選任できる人がいない場合は派遣契約を締結することができません。
まとめ
人材派遣を受け入れる際に必要となる「派遣先責任者の選任」についてご紹介しました。派遣先責任者は、派遣労働者の適正な就業を確保するための重要な役割を担います。派遣先責任者の選任数や選任方法、職務等について何かご不明な点があれば、お気軽にお問い合わせください。