企業成長につながる『テレワーク力』とは。約6割の指揮命令者が派遣スタッフのスキル向上を実感

2021.03.24

企業成長につながる『テレワーク力』とは。約6割の指揮命令者が派遣スタッフのスキル向上を実感

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、急速に普及したテレワーク。コロナ禍をきっかけに働き方が転換期を迎える一方で、いまもなお「スタッフが時間を持て余してしまうのでは」「対面でないと正当に評価しにくい」などの懸念があり、テレワークに懐疑的な経営者が多いのも事実ではないでしょうか。そうしたなか、リクルートスタッフィングでは、2020年、2021年にテレワークに関する実態調査をおこないました。そして、テレワークによって身に付くスキルを『テレワーク力』として定義しています。テレワーク力を身に付けた人材が今後の企業成長に与える影響について、スマートワーク推進室 室長の平田朗子がお伝えします。

導入前の不安が大きいテレワーク。しかし、導入後の満足度は高い結果に

テレワークの導入に踏み切れない企業は、業務効率・業務管理・コンディション管理・業務上のコミュニケーションなど、多岐にわたってマネジメント上の不安を抱えています。
2020年におこなったテレワークの実態調査では、派遣スタッフのマネジメントをしている派遣先の上司(指揮命令者)から、以下のような声が聞かれました。

●「時間を持て余してしまうのではないか」(58.5%)
●「相手の気持ちや思っていることが分かりにくくなるのではないか」(56.2%)
●「パフォーマンスを正確に評価できるか」(56.1%)

しかし、テレワーク導入前はマネジメントをする立場にある担当者たちの不安が大きかったにもかかわらず、テレワーク導入後の実感値は、意外なものでした。

派遣先の上司(指揮命令者)にオフィス勤務とテレワークでの“業務効率”を比較してもらうと、テレワークになって『良くなった』と回答した割合は33.2%、51.2%が『どちらとも言えない』と答えています。一方、『悪くなった』という回答はわずか15.6%でした。テレワーク導入企業の約8割は、業務効率に対してマイナスの印象を抱いていないことがわかりました。

その裏付けとして、8割以上の企業が「新型コロナウイルス収束後も派遣スタッフのテレワークの導入を推奨していく」と回答しています。実施前の不安に対し、実施後の満足度が高く、今後のテレワークの可能性を物語っています。

これらの結果から、テレワーク導入前の不安は杞憂にすぎなかったという企業や担当者の心情が読み取れます。細かな課題があったとしても、当初想定していたほどではなく、実施後の工夫によって改善できるものであり、テレワークそのものが業務に支障をきたす可能性は低いようです。

テレワークによって身につく4つのスキル

リクルートスタッフィングでは、テレワークで得られるメリットを可視化するため、2021年に再び調査を実施しました。そして、派遣先の上司(指揮命令者)に「派遣スタッフがテレワークによって身についた・向上したと感じるスキル」について聞いたところ、【役割遂行力】【判断する力】【伝える力】【受援力】という4つのスキルがテレワークで身につくことがわかりました。当社では、これらのスキルをまとめて『テレワーク力』と定義しています。ひとつずつ具体的にご紹介します。

役割遂行力


自分に求められる役割を理解し、判断軸を上司とすり合わせ、その役割を遂行する力

<具体的な項目>
●「業務を進める上で、自分で判断できるような判断軸を事前に指揮命令者とすり合わせすることができる」(70.4%)
●「指揮命令者への報告連絡相談を必要な頻度でできる」(67.0%)
●「会議に参加する際には、会議の目的や自分の役割を理解した上で参加できる」(67.0%)

テレワークでは、オフィスで仕事をしているときに比べ、ひとりで判断する機会も増えるため、ある程度の判断基準を日ごろから指揮命令者とすり合わせおく必要が生じます。その結果、どのような軸で判断すればいいのかを自分で考える機会が増え、報告・連絡・相談のタイミングも個々で考えるようになります。このような機会を通じて、今までに以上に組織や業務フローのなかでの自分の役割を俯瞰して考えるようになります。会議への参加の際にも、目的や自分の役割をより強く意識するようになるようです。

テレワークでは、メンバーそれぞれの役割が不明確だと業務に支障がでてしまいます。対面のように容易に話し合ったりができないからこそ、役割を明確に決め、自分がおこなうべき仕事を理解したうえで業務にあたるため、チームとしての成果にも期待ができるのではないでしょうか。

判断する力


業務の優先順位付けや自身がおこなうべき仕事を、自分で判断する力

<具体的な項目>
●「自分はこの仕事にどれだけ時間がかかるか理解できる」(69.2%)
●「指示や命令がなくても、自分がやるべきだと思ったらやるようにしている」(66.0%)
●「業務の優先順位に従い、自分でマイルストーンを設定できる」(65.5%)

テレワークでは、ある程度ひとりで業務をするため、今までに以上に自身で業務設計をおこなう必要が生じます。そのため、ひとつの業務にかかる時間を意識するようになり、業務の優先順位をつけながら時間内で仕事を進めていくことで、作業効率がアップします。また、必要に応じて、ひとりで判断をする機会が増えます。

個人の判断力が上がれば、一人ひとりの作業効率も上がります。「判断する力」は、テレワークという環境下でこそ伸ばせるスキルといえます。

伝える力


業務内容や進捗を周囲に共有し、わかるように伝える力

<具体的な項目>
●「業務内容を周囲にもわかるように共有できる」(64.3%)
●「仕事の進捗を周囲にもわかるように共有できる」(63.6%)
●「伝わりやすい文章を書くことができる」(59.2%)

対面で仕事をする際は、上司にちょっと声をかけて業務進捗を共有したり、実際に資料を見せながら話したりすることが容易にできますが、遠隔で仕事を進めるテレワークではなかなかできません。遠隔ですぐにわからない状況だからこそ、こまめに進捗を共有したり、どうやったら相手に伝わるかを意識したりして業務をおこなうようになり、結果として協業していくために必要な、「相手にしっかりと伝える能力」も向上する傾向にあります。

受援力


ひとりでは解決できないときに、周囲に助けを求めることができる力

<具体的な項目>
●「一人では解決できないことが起きた時に周囲に相談できる」(67.7%)
●「周囲に相談したい時に、誰に相談したらいいか判断できる」(67.5%)
●「仕事に行き詰まった時に、自分から相談できる」(65.3%)

同じオフィスにいれば誰かが気づいてくれるかもしれませんが、テレワークでは誰も見てくれません。とはいえ、電話やチャットツールを使えば気軽に相談ができる状況です。「助けを求めるのが苦手」という人も多いですが、今までのように近くで誰かが見てくれているわけではないため、必要に応じて自分から発信し、然るべき人にサポートを受けることが大事になります。このような「周囲に助けを求める力」も、テレワークで養われると実感されている力のようです。

企業の成長につながる『テレワーク力』。働き手の能力開発としても推進すべき

テレワーク力を身につける働き手が多いほど、企業の成長にもつながります。上記でご紹介した『テレワーク力』は、指揮命令者だけではなく、派遣スタッフ本人も身に付いたと回答している人の割合が高い傾向にありました。働く人がこのようにテレワーク力を身につければ企業の生産性もあがります。その観点からも、テレワークを早めに導入するメリットは大きいといえるのではないでしょうか。

また、テレワークは人材調達の観点でも非常に大きな効果があります。リクルートスタッフィングの派遣求人において、テレワークが可能な案件とそうでない案件では、応募数に2倍の開きがあります。自社に必要な人材を集める手段としてもテレワークの導入は有効といえるでしょう。

テレワークに関する調査の詳しい内容については、以下の記事もご覧ください。
派遣スタッフのテレワーク実態調査|生産性の向上を目的においた設計を
テレワークを行うことで身につくスキル『テレワーク力』の実態調査

平田朗子

株式会社リクルートスタッフィング
スマートワーク推進室室長


1985年に株式会社リクルート入社、2004年に株式会社リクルートスタッフィングに転籍。その後、全国の派遣スタッフ数の多いクライアントに、人材派遣や人材採用に関する総合的な提案を行う「総合戦略推進部」の部長や、無期雇用派遣や障害者雇用など多様な働き方を推進する「エンゲージメント推進部」の部長などを歴任。2019年より現職。

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