採用や人材育成で注目されている社会性の知能指数「SQ」
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人間の能力を表す指標のひとつ「SQ」をご存知でしょうか。「SQ」は「EQ」「AQ」と並んで採用や人材育成をおこなううえで有効な指標とされ、リーダーシップの資質として注目を集めています。「SQ」とは「EQ」「AQ」とどのような違いがあるのでしょうか。企業ではどのように「SQ」を活用したらよいのかも含めてご紹介します。
目次
「SQ」とは
人間の心の能力を数値化する指標のひとつ
「SQ」はSocial Intelligence Quotientの略で、日本語では「社会性の知能指数」「生き方の知能指数」などと訳されています。よく知られている「IQ」は人間の知能レベルを数値化したものですが、「SQ」は人間の心の能力を数値化する指数のひとつです。人と人との関わり、社会性に焦点を当て、他者の感情をどれだけ慮ることができるか、さらに自分の行動や言動が相手に与える影響を理解したうえで人間関係を結べるかがポイントで、対人関係スキルを測る指標として、近年、採用や人材活用において注目されています。
「EQ」「AQ」との違い
ビジネス分野の能力を測るのに役立つ指標として、「SQ」のほかにも注目されている指標がいくつかあります。なかでも近年よく知られているのが「EQ」と「AQ」で、いずれの指数もアメリカでビジネス能力を測るために提唱されたものです。それぞれの概要、「SQ」との関係について ご紹介します。
EQは「心の知能指数」
「EQ」はEmotional Quotientの略で、「心の知能指数」「感情知能」と訳されています。他者と自分の感情を冷静に把握し、いかに状況に応じて感情をコントロールして表現できるか、感情の知能指数を表す指標です。「EQ」が高い人は、自分の感情はもちろんのこと、他者の感情もよく理解し、なおかつその場の状況を見極めた感情表現ができるので、まわりの人によい波動を与える傾向が見られるといわれています。
AQは「逆境指数」
「AQ」はAdversity Quotientの略で、日本語では「逆境指数」と訳されます。逆境に陥ったときにどのくらいストレスに耐えられるか、人間の心の強さを数値化して示す指標です。
この「AQ」も「EQ」と同様、ビジネス分野における能力を測るために考え出されました。変化が激しく先が読めない時代にあっては、組織がいつ逆境に陥るとも限りません。あらかじめ「AQ」指数の高い人材が誰かわかっていれば、時機を逃さず 的確な人材配置をおこなうことができるでしょう。
SQは、EQの概念を広げたもの
現在、世界のビジネスシーンで注目されている「SQ」ですが、もともと米国の心理学者エドワード・ソーンダイクが「人を管理する能力」として提唱したものを、2007年に米国の心理学者ダニエル・ゴールマンが再定義したものです。ダニエル・ゴールマンは、『EQ ・こころの知能指数(Emotional Intelligence)』(1998年刊)という著書によって、全世界に「EQ」という概念を広めました。そして彼が「EQ」の概念を深め、最新の脳科学を取り入れて提唱したのが「SQ」です。
「EQ」が「自分と他者の感情、内面を理解する能力」であるのに対し、「SQ」はさらに「他者との関係を踏まえたうえで行動できる能力」を示す指標といえます。ビジネスでリーダーシップをとる人は「SQ」値が高い傾向にあると考えられています。
「SQ」で測られる能力
「SQ」の傾向を測定するには、ESCI(Emotional and Social Competency Inventory)と呼ばれる測定ツールが使われます。専門家による「SQ診断」やWeb上でできる自己診断用の簡単な心理テストがあります。
「SQ診断」によって具体的に測定されるのは以下のような項目です。
共感力
人の言葉に耳を傾け、相手の気持ちを推し量ろうと努力する力。相手の気持ちを汲んで寄り添う力。自分とは異なる考えの人の動機づけを理解する力。
組織理解
自分が所属している組織の理念や文化を大切に思い、そこでの自分の役割を理解して行動する力。
ビジョニング
つねに自分が「こうありたい」という姿・状態を思い描く力。
影響力
まわりの人に積極的に働きかけ、周囲を巻き込んでよりよい方向に行動を変えさせる力。
啓発力
自分の意志で自己啓発に努め、人間な成長を目指せるか。組織としての前向きな感情を育む力。
チームワーク
チームのメンバーと連携して、個々の力を最大限に活かし、その相乗効果によって目標を達成する力。
「SQ」の高い人が組織に与える影響
SQが高い人は優れたリーダーシップを発揮し、周囲の人を巻き込む力で業績やチームの雰囲気など、組織によい影響をもたらすといわれています。
業績に好影響を与える
「SQ」を提唱したダニエル・ゴールマンの研究によると、「SQ」の高いリーダーがいる組織と「SQ」が低いリーダーがいる組織とでは、業績に大きな違いが生じるといいます。全米の大手金融機関がエグゼクティブを対象におこなった調査では、パフォーマンスに大きな影響を与えるのは、「EQ」より「SQ」の優劣であることがわかったそうです。
「EQ」が高い人は自己管理能力や自己認識能力に優れていますが、「SQ」が高い人はそれに加えて周囲の人を巻き込んでリードする能力に長けています。そのため、より大きなパフォーマンスを生む可能性があると考えられます。
チームの雰囲気に好影響を与える
チームの業績をアップさせるには、円滑な人間関係や前向きな空気が必要不可欠でしょう。別研究では、リーダーがより多く部下の笑いを引き出している組織のほうが、平均的なリーダーより3倍も高い業績をあげているという調査結果もあるようです。
このことは「ミラーニューロン」という脳内細胞の働きに関係していると考えられています。「ミラーニューロン」とは、他人の行動を見たときに鏡のように行動してしまう脳神経細胞のことです。人は相手の明るい表情や笑顔を見ると、つられて笑ってしまうということがあります。それが「ミラーニューロン」です。
つまり、リーダーがつねに明るい表情で笑っていると、メンバーの間にも「ミラーニューロン」が活性化され、笑顔が多くなり、組織の空気全体が明るくなるという好循環が生まれます。チームの雰囲気がよくなれば、自然と前向きな空気が醸成され、メンバー同士の連携もスムーズにおこなわれるようになり、高いパフォーマンスが生み出されるというわけです。
「SQ」を高める方法
「SQ」は社会的指数であるため、積極的に周囲と関わることで、磨かれ高められるといわれています。日々の人との関わりのなかで、次のようなことを意識すると「SQ」が高まっていくと考えられています。
- 周囲の反応や仕草をよく観察する
- 相手の言葉に積極的に耳を傾けるよう心がける
- 自分の言動が周囲に与える影響をつねに意識する
自分がどのように動けば周囲によい影響を与えられるかを考える習慣を持つことが大切だといえるでしょう。
まとめ
「SQ」は、組織のリーダーを配置するうえで参考になる指標といわれています。すべてのメンバーの「SQ」値が高いほうがよいということではなく、「SQ」「EQ」「AQ」、それぞれの数値が高い人材をバランスよく配置していくことが、個々の能力が活かされた強い組織づくりにつながっていくでしょう。