4つのプロセスで形式知に変換する「SECIモデル」

2022.05.02

4つのプロセスで形式知に変換する「SECIモデル」

企業が競争優位を築くうえで、個人の経験やノウハウを組織として活用することがますます重要になっています。SECIモデルは、4つのプロセスで構成されるナレッジマネジメントの核となるフレームワークです。今回は、SECIモデルを設計するうえで重要な4つの変換ステップについてご紹介します。

SECIモデルを理解するために重要な「暗黙知」と「形式知」

企業内の知的資源の共有化と、その活用に積極的に取り組むためには、SECIモデルについて正しく理解することが大切です。まずは、SECIモデルを理解するうえで重要なキーワードとなる2つの用語についてご紹介します。

暗黙知|明示されていない個人の知識や経験

企業内には、ベテラン社員がその豊富な経験によって積み上げてきた知識や感覚的なノウハウなど、言語化されにくく、図表などを用いて明示することのできない属人的なナレッジが数多く存在します。これらを「暗黙知」と言います。業務を通じて得られる知識や経験には、人によって大きな差がありますが、これらの知識や経験を共有することができれば、組織全体の業務効率を向上させ、組織として取り組むべき課題の達成に、高いパフォーマンスを期待することができます。

形式知|誰もが同レベルで共有できる知識や経験

各個人がそれぞれの業務経験を通じて得た知識や積み上げてきたノウハウなどを組織内に伝承するために、誰もが同じようなレベルで共有できるナレッジとして残したものを「形式知」と呼びます。単に言語化するというだけではなく、誰もが理解し活用できるように、数値や図表などを用いて明示する必要があります。

SECIモデルはナレッジマネジメントのコアフレーム

SECIモデルは、ナレッジマネジメントの核となるフレームワークです。共同化(Socialization)、表出化(Externalization)、連結化(Combination)、内面化(Internalization)という4つの変換プロセスで構成されているので、各プロセスの頭文字をとって「SECI(セキ)モデル」と名付けられました。これらの変換プロセスを回し続けることによって、組織としてのナレッジを効率的にかつ持続的に再生産することを目的としています。

SECIモデルは、4つの変換プロセスで構成

暗黙知を共有する「共同化」

グループ内での共通の経験を通して、個人の暗黙知からグループの暗黙知へと発展させるプロセスです。グループ内のメンバーが対話を重ね、それぞれが持つ暗黙知を共有し合うことで、グループの暗黙知としていきます。新入社員に対するOJTで、先輩社員がマニュアル化されていない業務のコツやノウハウなどを伝授するのも「共同化」にあたります。

暗黙知と形式知化する「表出化」

「共同化」した暗黙知を、形式知に変換するプロセスを「表出化」と呼びます。グループ内での共通の経験や対話を重ねることで得られた知識やノウハウを、言語や数値、図表などを用いて表現することで、誰もが理解し共有できる形式知に落とし込んでいきます。暗黙知は、それを保有する個人の主観的なものですが、「表出化」された形式知は、客観的に整理された知識となります。

新たな形式知を創る「連結化」

「表出化」によって新たに創造された形式知を、既存の形式知や他部署で活用されている形式知などと組み合わせてブラッシュアップさせるプロセスです。たとえば他部署でおこなっている手法を参考に業務効率の向上を図ろうとする取り組みなどでは、グループの枠を越えた対話や協働が生まれ、互いの部署に新しく有用な形式知が創造されることもあります。

形式知の実践によって体得する「内面化」

「内面化」とは、新たに連結された形式知を活用し、これを実践することによって、個人のスキルやノウハウとして体得するプロセスのことです。形式知の実践によって個人が獲得した知識やノウハウは、SECIモデルサイクルで、新たな暗黙知として「共同化」されることになります。

このようにSECIモデルでは、4つのプロセスを繰り返すことによって、組織として活用できるナレッジを進化させていくことができます。

知識の変換プロセスをおこなう「場」づくりが大切

知識を創造し、組織として共有、活用していくためには、個人やグループによる知識創造のための活動を効果的に結びつけるための「場」をつくることが大切になります。SECIモデルによる知識創造経営を実現するためには、これらの「場」をどのように設定し、運用するかが鍵になります。SECIモデルの各変換プロセスに合わせて創出すべき4つの「場」についてご紹介します。

共同化がおこなわれる「創発場」

「創発場」とは、共同化のプロセスにおいて知識の交換、共有がおこなわれる場のことです。知識や経験は、作業をしながら伝えられることもあれば、休憩室での何気ない雑談として語られることもあるでしょう。特定の場を設けるというよりも、フラットなコミュニケーションがおこなえる状況をつくり出すことが、暗黙知の共同化を促すためには重要になります。

表出化がおこなわれる「対話場」

「対話場」は、暗黙知を形式知に変換する場となります。暗黙知をチーム内の対話を通じて言語化するという作業を伴うため、確かなミッションを定め、ブレーンストーミングやディスカッション形式などで、建設的な意見交換がおこなえる場を設定する必要があります。フラットな意見交換がおこなえる雰囲気づくりが大切です。

複数の形式知を持ち寄る「システム場」

それぞれの部署やグループ内で言語化された形式知を持ち寄る場で、関係者が一気に増えることになります。グループミーティングも対面ならではのメリットはありますが、この工程では、イントラネットやグループウェア、SNSなどのITCも積極的に活用しましょう。個々の形式知の共有や編集、組み換え、必要に応じて質疑応答やディスカッションなどを適宜おこないながら、効率的に連結化を進めていきます。

形式知を体験する「実践場」

連結された形式知を、研修やシミュレーションによる学習、あるいは実際の業務を通じて実践してみる場になります。形式知は、言語化された情報ですが、それを実践してみることによって、新たな気づきを得たり、さらにひと工夫を加えることによって活用しやすくなったりします。こうして得られた一人ひとりの暗黙知を、さらに組織として活用しやすい形式知に変換していくという新たなサイクルを創出する場でもあります。

まとめ

個人が、それぞれの業務経験のなかで培った暗黙知が、チームやグループ内に自然に波及し、伝承されていくのを待つだけでは限界があります。SECIモデルは、暗黙知を形式知化するために必要なプロセスを明示しているので取り組みやすいのではないでしょうか。SECIモデルの実践は、個人の成長と組織の競争力強化を同時に促すことになるでしょう。

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