自律的に働くことに関する実態調査|「自律」と「協働」の関係

2022.02.14

自律的に働くことに関する実態調査|「自律」と「協働」の関係

新型コロナウイルス感染拡大の影響からテレワークの導入が進んでいます。こうした環境下では従業員一人ひとりが自律して仕事に臨むことが求められる一方、行き過ぎた自律の追求は個人主義を助長し、協働がおろそかになるのでは、と懸念する意見も少なくないようです。今回は、リクルートマネジメントソリューションズが実施した「自律的に働くことに関する実態調査」をもとに、自律と協働に関する「現場の声」をお届けします。

テレワーク環境下で注目される従業員の「自律」

「自律した人材」「自律型の組織」「自律的な働き方」…。予測不能な時代、社会情勢や経済環境が激しく変化し、コロナ禍で在宅勤務をはじめとしたテレワークの導入が急速に進むなか、組織のパフォーマンスを左右する要素のひとつとして「自律」というキーワードに注目が集まっています。

組織が個人に期待する自律について、従業員はどう捉えているのか。自律は協働を妨げるのか。リクルートマネジメントソリューションズが435名の一般社員と管理職を対象におこなった実態調査から、「自律」と「協働」の現状が見えてきました。ここではその一部をご紹介します。

自律的に働くことに関する実態調査 調査概要

◇調査対象
会社勤務の、正社員として働く一般社員および部下をもつ課長相当の管理職
※年齢は20~59歳
※勤務先の従業員規模は300名以上
※職務系統(営業/サービス/事務/技術)が均等になるように回収
※一般社員は年齢層(20代/30代/40代/50代)が均等になるように回収

◇調査内容
会社から「自律」を期待される程度、自身の「自律」の実態、「自律」の促進要因・阻害要因、仕事や会社の状況、適応感など

◇調査方法
インターネット調査

◇実施時期
2020年6月12日~13日

◇有効回答数
435名

◇回答者の属性
製造業30.3%、非製造業63.4%、その他・不明6.2%
従業員規模:300名以上500名未満17.2%、500名以上1,000名未満15.6%、1,000名以上3,000名未満19.8%、3,000名以上5,000名未満8.5%、5,000名以上10,000名未満11.7%、10,000名以上27.1%
一般社員80.0%、部下をもつ課長相当の管理職20.0%
女性37.7%、男性62.3%

企業は「従業員の自律」を期待している


マネジメント層からの「自律」への期待/出典元:リクルートマネジメントソリューションズ「自律的に働くことに関する実態調査」

約8割が「自律を期待されている」と回答

企業で働く人々は、「自分たち従業員に自律が求められていること」を実感しているか調べるために、「あなたの所属している会社は、従業員が自律的に働くこと(自ら思考・決定・遂行すること)を期待するメッセージを出していますか」と聞いたところ、約8割が「期待するメッセージが出されている」、または「期待されていると感じる」と回答しました。

「自律して働くことを強く期待するメッセージが、経営者やマネジメント層から出されている」「ある程度期待するメッセージが、経営者やマネジメント層から出されている」「具体的なメッセージはないが、自律が期待されていると感じる」と答えた合計は、全体で83.4%。一般社員と管理職を分けて見てみると、一般社員で80.7%、管理職においてはじつに94.3%が、自律を期待されていると回答しています。

「自律」は企業にとって重要な課題であり、従業員側もそれを実感していることが読み取れます。

「自律を期待されている」回答者は、経営の合理的な判断と解釈


会社が従業員に「自律」を期待する理由/しない理由/出典元:リクルートマネジメントソリューションズ「自律的に働くことに関する実態調査」

「会社から自律を期待されている」と答えた人に、会社が従業員の自律を期待する理由や背景について尋ねたところ、一般社員・管理職ともに「会社の業績を高めるために、現場の工夫や提案を求めているから」という回答がもっとも多く、次に多かったのが「従業員の働きがいが高まると考えているから」という回答でした。自律への期待は合理的な経営判断だと捉えられていることがうかがえます。

また、自律が期待される理由を、「上司が正解を示せる時代ではなくなったから」と答えた人の率は一般社員よりも管理職のほうが3.6pt高く、「部下の仕事の専門性が高まり、管理職が細かい指示をすることは不可能だから」と答えた率も管理職のほうが8.9pt高いなど、「自律」が求められる背景には業務の高度化・複雑化も影響しているようです。

「期待されていない」回答者は、諦めと役割意識が強い

「会社は従業員に自律を期待していない」と答えた一般社員が挙げた理由としてもっとも多かったのは、「結局、上位者の気に入る案しか実行する気がないから」という諦めともとれる回答でした。
次に続く、「上司や会社の指示に従うことが会社員の仕事だから」「明快な指示を出すことが、経営陣や管理職の仕事だから」といった回答からは、会社という組織を構成する者としての役割意識や、上層部への期待の強さなども見られます。

8割以上の個人は、「自律的に働きたい」と望んでいる


「自律」に対する意識/出典元:リクルートマネジメントソリューションズ「自律的に働くことに関する実態調査」」

自律的に働きたいが、周囲に阻まれている

個人の側は自律的に働くことを望んでいるのか、「自律」に対する意識を尋ねた結果、84.1%の人が「自分自身は、自律的に働きたい」と答えています。
約8割の従業員が会社から自律を期待されていると感じ、従業員自身も約8割が自律を望んでいるならば、会社と従業員の意向は一致しているように見えます。

しかし、実際は自律的に働きたいとする人の約半数にあたる人が、「上司や会社から、自律的に働くことを阻まれている」「周囲に、自律的に働くことを望んでいる人は少ない」「自律を求められることに、息苦しさを感じる」と考えていることがわかりました。
“自分は自律的に働きたいが、周りがそれを阻む/望んでいない”、”自分が自律を望むことと、他者から求められることは別物”という認知が、少なからず存在していることが示唆されています。

マネジメントの在り方は、やり方を任せてくれる上司が人気

「自律」に関わるマネジメントのタイプとしては、「きめ細かく指示をしてくれる上司」より「業務遂行や判断を大きく任せてくれる上司」のほうが人気が高く、働き方や生き方を「上司や人事がある程度計画し提示してくれる会社」と「個人が選択することを奨励する会社」でも、後者への支持が高くなっています。

年代により「自律」と「支持する上司像」に違い

「自律に対する個人の意識」には年代によって違いが見られます。20代の人々は、他の年代と比べて「自律的に働きたい」と考えている率が低く、逆に「自律を求められることに、息苦しさを感じる」「きめ細かく指示をしてくれる上司が、自分自身にとって好ましい」とする率が他の年代より高いという結果が出ています。

一方、「上司や会社から、自律的に働くことを阻まれている」「自律を求められることに、息苦しさを感じる」「きめ細かく指示をしてくれる上司が、自分自身にとって好ましい」といった意識は、30代→40代→50代と年代が上がるごとに低下し、「大きく任せてくれる上司」が好まれる傾向にあります。

「自律志向」と「協働志向」は両立するのか?

「これからは、多くの人に自律的に働くことが求められる」と思っている回答者が約9割に上る反面、6割以上の人が「多くの人にとって、自律的に働くことは難しい」と回答しています。また、53.8%が「自律ばかり強調すると、協働がおろそかになる」という見通しをたてているのも留意したいポイントです。

「自律した行動」に対するイメージの違いから葛藤が生まれる

「会社から自律を期待されていると感じているのに、上司や会社から、自律的に働くことを阻まれているとも感じる」、
「自分自身は、自律的に働きたいと思っているが、周囲に、自律的に働くことを望んでいる人は少ないと思うし、自律ばかり強調すると、協働がおろそかになるとも思う」。

このような葛藤が生まれるのは、「自律とはどういう行動を指すのか」というイメージが人によって異なるからかもしれません。
そこで本調査では、自律という「行動」を、「自律の対象」と「変化対応の柔軟さ」によって3種類・4段階に分けて定義しました。

そしてそれぞれの行動をどれくらいできているかについても尋ねた結果、「自律的キャリア形成」や「自律的職務遂行」という自己志向の自律のポイントが平均以上の人は、チームや組織と調和する「自律的協働」のポイントも高いという結果が見られました。つまり、「自律」と「協働」は両立するようだという見解を出しています。

詳しい内容は、「自律的に働くことに関する実態調査」をご参照ください。今回紹介した内容以外にも、自律に関するさまざまな考察がなされ、自律を促す要因、また会社や人事にできる施策などについても示唆されています。

リクルートマネジメントソリューションズ|
RMS Message vol.59 (2020年11月)|
組織と個人が求める「自律」に関する実態調査

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