派遣法に抵触したらどうなる?|労働契約申込みみなし制度

2021.10.25

派遣法に抵触したらどうなる?|労働契約申込みみなし制度

ある日、あすかさんは派遣先から相談を受けました。

「労働契約申込みみなし制度って、派遣法に抵触したら派遣先が派遣スタッフに雇用契約の申し込みをしたとみなされる制度ですよね。その場合の雇用形態は正社員ですか?また、スタッフが希望しなかったらどうなるのでしょうか」

「(必ず正社員採用ではなかったような…)いろいろ確認します!」

あすか

リクルートスタッフィング入社1年目、派遣営業部所属。
口ぐせは「確認します…」と「教えてください!」

さとし

リクルートスタッフィング入社8年目、法務部所属。
好きな業務はリーガルチェックのテスト作成


教えてください!

はい、なんでしょう。


労働契約申込みみなし制度って、派遣法に抵触したら派遣先が派遣スタッフに雇用契約の申し込みをしたとみなされる制度ですよね。その場合の雇用形態はどのようになりますか?必ず正社員になりますか?

労働契約申込みみなし制度の雇用形態は正社員に限らないですよ。


あれ…そうでしたっけ。

まず、労働契約申込みみなし制度について以下3点をおさえましょう。

1.派遣先が違法派遣を受け入れた時点で発生する
2.派遣先が、その派遣労働者の雇用主(派遣元事業主)との労働条件と同じ内容の労働契約を申し込んだとみなす
3.労働契約を申し込んだものとみなされた場合、みなされた日から1年以内に派遣労働者がこの申込みに対して承諾する旨の意思表示をすることにより、派遣労働者と派遣先との間の労働契約が成立する


なるほど。1の違法派遣とはなんでしょう?

違法派遣とは、次の4点です。

 ・派遣禁止業務への派遣受入
 ・無許可事業主からの派遣受入
 ・派遣受入可能期間制限違反(事業所単位の期間制限違反、個人単位の期間制限違反)
 ・いわゆる偽装請負等


そうなのですね! 2の「派遣先が、その派遣労働者の雇用主(派遣元事業主)との労働条件と同じ内容の労働契約を申込んだとみなす」というのがちょっと難しいのですが…


派遣スタッフはもともと派遣元企業と賃金や契約期間に関して労働契約を結んでいますが、「同じ条件で派遣先が該当する派遣スタッフに直接雇用を申し込んだ」とみなしますよ、ということですね。



原則として「派遣元と派遣スタッフが取り交わしていた労働契約内容」がそのまま適用されます。つまり、有期雇用の契約を派遣元と結んでいた場合は、派遣先も有期雇用で労働契約を申し込んだことになります。


必ず無期雇用の正社員というわけではないんですね。派遣スタッフが断ったらどうなるのでしょうか?

労働契約が成立するのは、派遣スタッフが直接雇用の申込を承諾したときなので、承諾がなければ成立しません。なぜなら、「労働契約の申込みをしたとみなす」制度であり、「雇用したとみなす」わけではないからです。
ただし、労働契約の申込みは、申込みをしたとみなされた日から1年間は撤回することはできません。


なるほど。1年の間に派遣労働者から承諾の意思表示がない場合は、申込みは失効することになるんですね。
ちなみに、違法派遣と知らなかった場合はどうなるのでしょう?

善意無過失の場合は適用除外となる場合があります。
つまり、違法行為を行っていると知ることができずに、また違法事実の認識がないことに過失がなかったのであれば免責されることもあります。

ただし、労働契約申し込みみなし制度は「違法派遣の根絶」を目的にしており、派遣法の認識不足や確認すべきことを怠ったなどは、善意無過失とは認められません。


日ごろから違法行為を認識しておくとともに、該当していないかの確認が必要ですね!


POINT
労働契約申込みみなし制度

・派遣先が違法派遣を受け入れた時点で発生
・派遣先が、その派遣労働者の雇用主(派遣元事業主)との労働条件と同じ内容の労働契約を申し込んだとみなす
・労働契約を申し込んだものとみなされた場合、みなされた日から1年以内に派遣労働者がこの申込みに対して承諾する旨の意思表示をすることにより、派遣労働者と派遣先との間の労働契約が成立する
・必ずしも正社員としての直接雇用ではない
・労働契約の申込みは、申込みをしたとみなされた日から1年間は撤回することはできない

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