2022年10月より短時間労働者の社会保険適用範囲が変更されます

2022.03.18

2022年10月より短時間労働者の社会保険適用範囲が変更されます

パートタイムなどの短時間労働者の数が増えていることを受け、2022年10月から、短時間労働者の社会保険加入要件の適用範囲拡大が段階的に実施されます。自社が対象企業に含まれるかどうか、短時間労働者の要件に当てはまる従業員が何人いるか、改正後のルールと照らし合わせ確認しておく必要があります。そこで今回は、短時間労働者の定義や社会保険加入の要件、適用拡大による変更点、また企業が準備すべきことについて解説します。

短時間労働者とは

「パートタイム労働法」によると、短時間労働者とは、「1週間あたりの労働時間が、同じ事業主に雇用されている通常の労働者の労働時間よりも短い労働者」と定められています。

「通常の労働者」は、業務の種類ごとに判断をし、「正社員」や「正職員」など、いわゆる正規雇用の労働者がいれば、その労働者を指します。

事業所内に正規雇用の労働者がいない場合は、フルタイム勤務で働いている非正規雇用の労働者より短い労働時間の労働者が短時間労働者に該当します。

したがって、パートタイマーやアルバイトに限らず、「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」などでも、通常の労働者より短い労働時間であれば短時間労働者とみなされ、労働基準法や労働安全衛生法をはじめ、原則通常の労働者と同様の労働者保護が適用されます。

短時間労働者の社会保険加入要件

社会保険は、週の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上であれば加入対象となります。これをいわゆる4分の3要件と言いますが、4分の3要件に該当しない場合でも、以下の要件を満たせば社会保険の加入対象となります。

<事業所に関する要件>
・事業所の規模:常時500人超

<短時間労働者に関する要件>
・労働時間:週の所定労働時間が20時間以上
・賃金:所定内賃金の月額が8万8000円以上
・勤務期間:継続して1年以上使用される見込み
・適用除外:学生ではない

社会保険適用拡大による変更点

2020年6月5日に公布された年金制度改正法により、短時間労働者の社会保険加入要件適用が拡大されます。今回、段階的に変更がされるのは、「事業所の規模」「労働者の勤務期間」です。

変更点1. 事業所の規模:500人超から100人超へ

現在、短時間労働者を社会保険に加入させる義務がある事業所規模の要件は「同一事業主が雇用する一つまたは複数の事業所で、短時間労働者を除く常時501人以上の被保険者の労働者を使用する事業所(特定適用事業所)」です。また、従業員の総数が500人以下の企業についても、労使の合意があれば、短時間労働者に社会保険が適用されます。

しかし、2022年10月からは、雇用する被保険者の従業員数が101~500人の事業所で働く短時間労働者が、新たに社会保険の適用になります。さらに、2年後の2024年10月からは、雇用する被保険者の従業員数が51~100人の事業所で働く短時間労働者が社会保険の適用となり、対象事業所規模の要件が段階的に拡大されます。

また、適用拡大後は従業員の人数のカウント方法も変わるので注意が必要です。

従業員のカウント方法

<現在>
短時間労働者を除く労働者の総数

<2022年10月以降>
通常の労働者+現在加入要件を満たしている短時間労働者

適用従業員数は1ヶ月ごとにカウントし、6ヶ月以上基準を上回っている場合は適用対象となります。一度適用対象となれば、その後基準を下回っても原則として適用され続けます。

変更点2. 勤務期間:継続して1年以上から2ヶ月超に

これまで、社会保険が適用される短時間労働者の勤務期間に関する要件は、「継続して1年以上使用される見込み」でしたが、2022年10月からは「継続して2ヶ月以上使用される、または使用される見込みであること」が新たな要件に加わりました。契約上の期間が2ヶ月となっていても、更新の可能性が明示されている場合は、2ヶ月を超えて使用される見込みがあるものとして取り扱われます。

企業がすべきこと

2022年10月から段階的に始まる短時間労働者の社会保険適用拡大に向けて各企業が実施すべき事前の準備や対応について解説します。

従業員数と加入対象者の把握

まずは、従業員数の把握を行いましょう。従業員数は、すべての正社員、パート社員数ではなく、現在の厚生年金保険の適用対象者でカウントします。

そして、新たな社会保険の加入対象となりうる短時間労働者の把握を行います。契約上は所定労働時間が20時間に満たない場合でも、雇用後の残業により実労働時間が2ヶ月連続で週20時間以上となり、引き続きその状態で雇用されると見込まれる場合には、3ヶ月目から社会保険の加入とする必要があります。

社会保険加入対象者を把握した上で、会社が負担する社会保険料を試算し、対応の方針を決定しましょう。

対象者への説明と意向の確認

新たに要件を満たす短時間労働者を把握した後は、適用対象となる短時間労働者に通知を行い、説明します。

社会保険は、要件に当てはまれば、本人の意思にかかわらず加入するのが原則です。しかし、給与から社会保険料が引かれることから、手取りが減ることを懸念する従業員もいるでしょう。その際は、今後の労働条件などについて話し合うことが必要ですが、社会保険加入のメリットをきちんと伝えましょう。

<社会保険入のメリット>

・老後・障害・死亡の基礎年金に3つの年金(厚生年金)が上乗せになる
・傷病手当金、出産手当金などの医療保険による保障が充実する
・万が一、亡くなった場合は、遺族に遺族厚生年金が支給される
・保険料を会社と自身で折半することになるので、現在、国民年金や国民健康保険に加入している一部の人は、保険料が安くなることがある

それでも、「配偶者控除内で働きたいので社会保険への加入したくない」という場合は、加入要件に該当しない労働条件に変更すれば適用から外すことはできます。ただし、その分従業員の収入は減ってしまうため、収入を106万円以内まで下げて扶養内で働くべきか、目先の負担でなく長期的な視点で話し合ってみるとよいでしょう。

被保険者資格取得届の届出

適用対象者に説明をし、加入の意向を確認したら、期限までに被保険者資格取得届を提出する必要があります。

雇用する被保険者の従業員数が101~500人の事業所には、2022年8月までに日本年金機構から新たに適用拡大の対象となることを知らせる通知書類が届きます。通知があった事業所は、届出に必要な書類を作成し、2022年10月5日までに申請を行います。雇用する被保険者の従業員数が51~100人の企業の届出の提出時期は、2024年10月です。

詳しい手続きは以下の特設サイトを参考にしてください。
日本年金機構|「被保険者資格取得届」の届出に関するご案内

労務管理の徹底

短時間労働者の社会保険適用範囲拡大を機に、労務管理の徹底を行いましょう。

適用拡大後は、雇用契約書や就業規則で短時間労働者の1週間の労働時間を20時間以内と定めていても、残業時間込みで20時間を超えて働く期間が2ヶ月を超えていた場合は、社会保険の加入が必要になります。従業員が適用要件に該当するにもかかわらず、社会保険の未加入が判明した場合には、遡及して支払いが発生するなどのペナルティーが課せられます。

社会保険未加入のままにしたい場合は、20時間を超えて残業をしないようチェックを徹底するなど、より厳密な労務管理が企業に求められるでしょう。シフト管理や人材確保も社会保険の適用・非適用を踏まえた上での管理が必要になります。

まとめ

働き方改革が促進されるなか、正社員のみならずパート・アルバイトをはじめとした短時間労働者の働き方や労働時間を見直すなどの対応が必要とされています。社会保険適用範囲拡大のタイミングで、現行制度の見直しを検討してみてはいかがでしょうか。

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