優秀な人材はここに眠っている。日本企業が気付かぬ「盲点」

2022.09.15

優秀な人材はここに眠っている。日本企業が気付かぬ「盲点」

少子高齢化による労働力人口の減少トレンドが続く中、日本企業にとって「優秀な人材の確保」は大きな課題となっている。 実際、「専門性が高く、コア(中核)業務を担う人の採用が難しい」といったマネジャー層の嘆きを聞く。 だが、そこに旧来型の人事制度の枠組みにとらわれた「思い込み」はないだろうか?  官民挙げての女性活躍推進、副業解禁、コロナ禍によるリモートワークの普及など、近年、労働環境は激変している。 ワークスタイルが多様化する時代にふさわしい人材活用のあり方について、リクルートスタッフィングの川畑美穂・エンゲージメント推進部部長と、Googleで人材開発や組織改革に関わったプロノイア・グループ代表のピョートル・フェリクス・グジバチ氏に、語り合ってもらった。

こちらの記事はNewsPicks Brand Designにて取材・掲載されたものを当社で許諾を得て公開しております


柔軟な人材採用の足枷となる日本の雇用慣行

──コロナ禍で停滞した経済活動が回復基調になり、企業は再び「優秀な人材の確保」という課題に直面しています。

ピョートル 
これは企業、個人ともにですが、日本社会は「正社員」という雇用形態に拘り過ぎているように感じます。例えば米国のハイテク企業などは、オフィスワーカーの4、5割が専門スキルを持った非正規社員かもしれません。彼らは一つ一つの仕事について、正社員がやるべきか、アウトソーシングすべきか、異なる雇用形態で人を雇うべきか、そもそも人ではなくAI(人工知能)などのテクノロジーに委ねるべきか、といったことを企業内で議論している。そういう議論を積み重ね、人材を適材適所に配置することで、結果を出し続けているのです。

先進的な欧米企業に比べて、日本企業は雇用スタイルが凝り固まっている上、組織の中で根本的な仕事やスキルについての議論が希薄になっている。それが、人材確保がうまくいかない一因ではないでしょうか。

川畑 
同感です。さらに日本企業では、雇用形態によって仕事の難易度が決められがちなことも問題だと感じます。「専門性の高いコアな業務はフルタイムの正社員が担い、それ以外のノンコアな部分をパートタイマーに任せる」といった考え方です。

近年は労働環境が大きく変わってきました。それを踏まえれば、スキルや知識といった人材の「能力」は、必ずしも働く時間や雇用形態に規定されるものではないと思います。ところが、多くの日本企業には、先ほど述べたような「コア業務=フルタイム正社員」という固定観念が根強く残っている。

ピョートル 
その発想が優秀な人材を遠ざけてしまっていることに気づいていない、と。

川畑 
そう思います。例えば日本では、出産や育児などで女性の就業率が30代を中心に下がる「M字カーブ」が生じており、この30年で大きく改善されたものの、完全な解消には至っていません。これは日本企業が今なお求める「フルタイムの正社員」では働きにくいことが原因の一つでしょう。

もちろん男性でも、親の介護などで「フルタイムの正社員」では働くことが難しくなるケースもあります。これらの人たちの中には、高いスキルをお持ちの方も大勢いらっしゃいます。リモートワークが普及し、副業が解禁されつつある今、高度な専門性を備えた人材を短時間でも働けるようにしていけば、企業にとっても人材難の解消につながるのではないでしょうか。

マネジャーに今求められる二つのスキル

──なぜ日本企業は「コア業務=フルタイム正社員」という発想に縛られるのだと思いますか。

ピョートル 
認知バイアスが強く残っているからでしょうね。「派遣社員など非正規の人たちはスキルが低い」という思い込みです。だから、コアではないタスクばかり非正規の人たちに任せようとする。でも、実は非正規の時短労働者の中にも、正社員にはない高いスキルを備えている人たちがたくさんいます。

マネジメントとは本来、どんな価値をどういう布陣で生み出すかを考え、最適化を図る仕事。自分のチームが組織のビジネスにどう貢献しているか、あるいは社会や顧客にどんなインパクトを与えようとしているか──。そういった「アウトカム」(社会に与える影響、成果)を明確にした上で、目的達成に必要なジョブを整理し、社内外の適任者に仕事を割り振ることが、マネジャーの役目です。チームのジョブを分析した上で、足りていないスキルや経験、工数は外部の時短労働者からでも採り入れるべきなのです。

川畑 
「組織の仕事」が何によって成り立っているかをジョブ単位で分解し、パズルのようにデザインしていく。その上で、分解したジョブを必要なスキルを備えた人たちに振り分ける。これを私たちは「ジョブ・アサインメント」と呼び、今の時代、マネジャー層に求められるスキルと考えています。

例えば、フルタイムの正社員が1人でやっていたジョブを二つに分け、2人の時短労働者に任せたほうが生産性の向上につながる場合もあります。ここで言うジョブには、ノンコアだけでなく、コア業務も含まれます。ただ、企業側には「どういうふうにジョブを切り出し、アサイン(振り分け)したらいいかわからない」「周囲の理解を得られない」という壁があるようで、「コア業務にも専門性の高い時短労働者を充てる」といった人材活用術はまだまだ普及していないのが現状です。

ピョートル 
「ジョブの切り出し方やアサインの仕方がわからない」というのは、マネジャーが組織に任された仕事をこなすだけの受け身の状態に陥り、チームが出すべきコアバリューを深く理解できていないことが原因かもしれませんね。

ただ一方で、凝り固まった人事制度と就業規則がボトルネックになって、切り出したジョブを最適な社員や外部人材に割り振れないケースも少なからずあるでしょう。現場のマネジャーレベルでは、組織のルールを越えた意思決定はできないことが多い。

川畑 
その「ボトルネック」を取り払う術として、当社では「ZIP WORK(ジップワーク)」というサービスを提案しています。高い専門知識やスキルを備えた方々に特化した時短ワーカーの派遣サービスです。

先ほどお話しした通り、専門性や技能を持ちながら、出産・育児で離職したままの女性は少なくありません。また、親の介護などの事情を抱えた方もいらっしゃいます。さらに男女を問わず、副業解禁の流れを受けて「ダブルワークをしたい」「社会人だがもう一度学び直したい」といった希望を持つ人たちも増えています。


ZIP WORKERは、ノンコア業務はもちろん、コア業務を担うことも可能です。また、派遣社員は派遣先の人事制度や就業規則に縛られないので、組織のルールがボトルネックになることもありません。
企業が「コア業務=フルタイム正社員」という考えを捨て去り、多様な人材活用の道を開くようになれば、「ZIP WORK」は優秀な専門人材を確保しやすいワークスタイルと言えます。

ピョートル 
なるほど、社内の規則を変えずに、高度なスキルを持った潜在的な即戦力人材を活用できるわけですね。個人的には、コア業務の一部を外部人材に任せることにより、マネジャーが新たな価値を創造する時間を生み出せることが大きなメリットと感じます。

僕は「仕事」のタイプを次の四つに分けていて、マネジャーは右上のポジション、つまり学びが多く、インパクトの高い仕事に多くの時間を費やすべきだと考えています。それが組織の成長のみならず、マネジャーの昇進やキャリアアップにもつながっていくからです。


そのためには、専門性は求められるがマネジャーにとってはルーチンワークの一つにすぎないジョブ、つまり象限「3」に該当する仕事をいかに処理するかが課題になります。ZIP WORKERにはそこを任せられるのが良いですね。

川畑 
そこはwin-winというか、専門的な業務を任されることは、ZIP WORKERにとってもやり甲斐や喜びにつながるものと考えています。これは当社のケースですが、営業職の正社員の業務から「派遣スタッフの方の就業サポート」を切り出し、週3日の時短勤務の方々に任せたことがありました。そうすることにより、就業サポートの質が向上し、それに価値を感じたクライアントから、案件の依頼が大きく増えたのです。

限られた時間ですが、働ける場を得たZIP WORKERの方々は、 お客様からの感謝によってモチベーションを高め、高いホスピタリティーとパフォーマンスを発揮してくれました。

営業職の正社員は負荷が減った分、コア業務に時間を割けるようになり生産性が向上したことだけでなく、 案件の増加という想像を超えた成果をZIP WORKERの方々が出してくれたことで、営業部全体の業績につながりました。

VUCA時代、強いだけの企業は生き残れない

 

──フルタイム社員と時短スタッフが混在することで、チームが混乱しないか懸念する向きもありそうですが、その辺りはどうでしょうか。

川畑 
「ZIP WORK」を導入したある企業では、混在チームをうまく回す工夫として、共有データベースの整備やコミュニケーションツールを活用するなどして、相互の情報共有を徹底していたといいます。
さらに各自のジョブディスクリプションを明確にし、業務の進捗状況とともに誰が何の役割を担っているのかをオープンにした。それによって何が起きたかというと、各メンバーが専門性を活かして成果を上げることに集中するようになっただけでなく、フルタイム社員の時間管理の意識も高まったといいます。

ZIP WORKERには「専門性を活かし、アサインされたジョブを短時間で効率的にやろう」という意欲を持つ方が非常に多い。フルタイム正社員と時短スタッフが業務の進捗を共有する中で、チーム全体にタイムマネジメント意識が醸成されたのです。

他にも「社風や会社の雰囲気が変わった」といった声や、「ZIP WORKERから新たな知見や広い視座を得られた」という声もありました。異なる立場同士の議論の中から新しいアイデアやイノベーションが生まれることも「ZIP WORK」の良さです。

ピョートル 
いわゆる多様性のメリットですよね。私が在籍していたGoogleは、世界中で使われるサービスを提供しているので、国籍、性別、宗教、年齢などの多様性を大事にしていました。チーム内に思考のダイバーシティーがあるからこそ、新しいアイデアが生まれ、さまざまなアイデアを柔軟に取り入れることで、適切な意思決定が可能になる。

進化の理論でも同じですが、長期的に見た場合、最後に勝つのは強い生物ではなく、最も柔軟な生物です。企業も同様で、柔軟性を高めていくことが不確実性の高い時代における最も重要な生存戦略になります。

──日本企業は「コアな業務はフルタイムの正社員が担うもの」という意識を変え、雇用や人材活用の柔軟性を高めていかなければ生き残れない、ということでしょうか。

ピョートル 
もちろんそうです。考えてみてください。典型的な日本企業では、同質性の高い社員がぐるぐる異動しています。目的達成に最適化された集まりを「チーム」と呼ぶなら、日本企業のそれは単なる「グループ」です。思考、スキル、経験などの多様性に乏しく、組織の目的に最適化されているとも言い難い。にもかかわらず、「与えられた条件で戦え」と言われたら、マネジャーは本来やるべき仕事に取り組めなくなる。そんな状況を当たり前と思わず、そのおかしさに今すぐ気づいたほうがいい。

川畑 
そこはどう変えていったらいいのでしょうか。

ピョートル 
例えばマネジャーは、自分ではなくても構わない仕事は自分でやらない。代わりに、スキルのある人たちを一時的にでも、断続的にでも周りに置いておくようにする。そうした柔軟性がないと、ジョブ型雇用ではない日本企業では、本来その人がやるべき業務にリソースを割くことができず、組織のアウトカムを達成する足かせになってしまうかもしれません。そういうマネジャー層にとって「ZIP WORK」は心強いサービスだと思います。コロナ禍でリモートワークが進み、今後はオフィスとリモートが半分半分のハイブリッドワークになるでしょう。ZIP WORKERのような時短労働者にとっても、働きやすい環境が整ってきたと感じます。

川畑 
率直に言って、「コア業務を派遣社員に任せるのは無理だ」とおっしゃる企業の方もいらっしゃいます。でも実際にご利用いただくと、「いけるね」に変わってリピートしてくださいます。そもそもZIP WORKERは、コア業務をバリバリこなされていた人たちばかり。育児などで職場を離れなければ、組織の中核人材になっていた人たちが多くいます。こうした専門スキルを持った時短ワーカーが年々増えています。マネジャーや管理職の方々には、これまでの常識に縛られず、潜在的な即戦力人材をぜひ活用していただきたい。それが、この人材難の時代に組織を成長に導く有効な方法であると、私たちは確信しています。

即戦力×専門スキルの派遣なら「ZIP WORK」

執筆:河井健
撮影:持田薫
デザイン:久須美はるな
編集:下元陽

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