自治体BPOの可能性と課題|業務効率化への新たなアプローチ

自治体BPOの可能性と課題|業務効率化への新たなアプローチ

近年、自治体業務の多様化や複雑化が進み、職員の負担増や業務効率の低下が課題となり、自治体では業務改革が急務となりました。 こうした背景の中で注目を集めているのが、自治体業務の一部を民間のBPO受託会社に委託する自治体向けのBPO(Business Process Outsourcing)です。BPOは、コスト削減や業務品質向上を可能にするだけでなく、職員がより重要な戦略業務に集中できる環境を整える手段として期待されています。 今回は、自治体向けBPOの導入が進む背景や特徴、具体的な活用分野、メリット、課題や導入のポイントについて解説します。

自治体BPOが注目される背景

BPO(Business Process Outsourcing)は、アウトソーシングや業務委託のように、業務の一部だけを切り出して委託するのではなく、業務プロセスを外部の受託会社に委託する点が特徴です。
2015年に、政府が「経済財政運営と改革の基本方針2015」として自治体サービス改革の必要性を掲げたことで、汎用的なノンコア業務の民間委託が進んできました。今後はさらにほかの業務領域への拡大が期待されており、そこで注目されるのが自治体向けBPOです。

さまざまな自治体で、人口減少による財源不足や職員不足が深刻化しています。しかし、多様化する住民のニーズに伴い、自治体が提供するサービスは年々複雑化してきました。
人口が減って利用者が少なくなったとしても、自治体の事業は縮小や撤退ができません。少人数の職員でこれまでどおりの規模、これまで以上の水準の業務を遂行するために、業務プロセスを一括で委託でき、業務効率化が可能になるBPOが注目されるようになりました。

また、「デジタル庁」の設立や、政府が推進する自治体の手続きのオンライン化に伴い、自治体でもデジタル化の対応が求められるようになったことも、自治体でBPOの導入が検討される要因でしょう。既存の体制ではデジタル化やDXの推進が難しく、IT人材の新たな確保も困難ななかで、外部リソースの活用が有効な解決策として注目されています。

自治体BPOのおもな導入分野

自治体業務の範囲は、子育てや介護、税金、戸籍など多岐にわたり、そのどれもが住民の生活に関わる重要な業務で、正確性や安全性への高い配慮が必要です。
これまで自治体が民間に委託する業務は、総務事務や施設管理などのノンコア業務が中心でしたが、最近は下記のように、より専門的な業務もBPOの対象とされるようになってきました。これらの分野でのBPO導入は、自治体の限られたリソースを効率的に活用し、市民サービスの向上や業務改革を実現する助けとなります。

<自治体BPOの導入分野>
住民サービス関連業務

業務 内容
窓口対応 書類作成や郵送対応
各種証明書発行事務 給与計算、研修事務局業務、派遣管理デスク、入退社手続き
コールセンター業務 住民からの問い合わせに対応するコールセンターの設置・運営

税務・会計関連業務

業務 内容
地方税の徴収・収納代行 住民税や固定資産税などの収納業務
会計処理・決算補助業務 庁内会計処理の効率化や決算書類の作成

庁内サポート業務

業務 内容
文書管理 公文書の作成や保存
庁内ITインフラの運用保守 システム運用やトラブル対応
データ入力・データ分析 データを迅速かつ正確に処理

自治体BPOの導入メリット

BPOを利用することで、自治体はコスト削減や業務品質の向上といったさまざまなメリットが得られます。

コスト削減効果


BPO 受託会社に依頼することで民間事業者のノウハウを活用でき、効率的に業務を遂行しやすくなります。結果的に人件費や残業時間といった経費の削減が可能です。
自治体では柔軟な人員配置が難しく、閑散期に余剰の人件費がかかりがちですが、BPOを利用することで状況に合わせた人員体制を築けます。繁忙期に合わせて臨時職員を採用するコストをかけることなく、繫忙期・閑散期に必要な人員を無駄なく配置できるでしょう。
また、BPOでは即戦力となるスタッフが配置されるため、教育にかけるコストも削減できます。専門的なスキルや知識があるスタッフを配置することで、業務効率が向上し労働時間短縮や残業時間の削減といった効果も期待できます。

業務品質の向上


民間のBPO受託会社を活用することで、専門的な知識やノウハウ、スキルが獲得できるメリットがあります。BPO受託会社は、委託された業務プロセスについて、高度なスキルや経験を持った専門チームを組みます。スキルや経験のあるスタッフが業務にあたることで、手続きミスやデータ入力ミスを減らし、市民へのサービス品質を向上させられるでしょう。
さらに、BPO受託会社からアドバイスを受けたり、マニュアルや知識を共有されたりすることによって、自治体職員のスキルの向上も期待できます。

職員の負担軽減


BPO受託会社にノンコア業務を委託することで、職員の業務量の削減が可能です。労働人口の減少で自治体の職員数は年々減少しているにもかかわらず、地方分権の推進で自治体の負うべき役割は増加しています。結果的に、職員一人あたりの業務量は増加しました。

BPO受託会社の活用を通じて業務プロセスを見直すことで、客観的に改善策を検討でき、業務を効率化して職員の負担が軽減できるでしょう。BPOで民間事業者に業務を委託することで、職員はコア業務に集中できるようになり、ノンコア業務の業務効率を向上させる効果もあります。

また、職員の休職や退職、欠勤などで業務が滞るリスクがなく、異動が多い自治体でも引継ぎを気にせず業務遂行できる点もメリットです。

デジタル化の推進


BPO受託会社の持つITの最新知識や専門知識を活用することで、自治体のデジタル化を推進できるでしょう。
自治体の採用方式では、主導する人材の採用が難しく、なかなか自治体業務のデジタル化は進んでいないケースが多いようです。BPOを導入することで、BPO受託会社からデジタル化が可能な業務や、自治体の要件に合ったデジタルツールの提案を受けられるでしょう。受託会社によっては、導入支援や運用まで一気貫通でサポートを受けられることもあります。

自治体BPO導入にあたっての注意点

自治体向けBPOは、他の分野のBPOと異なり、住民に直接関わる重要な業務を扱うため、特別な配慮が必要です。BPOをより効果的に活用するため、導入にあたっての注意点を押さえておきましょう。

セキュリティ性の確保


自治体業務では、住民基本台帳や税務情報などの機密性が高いデータを扱います。外部の受託会社に委託することでデータ漏洩リスクや、委託業務が法令や自治体の規則に反して運用されるコンプライアンス違反リスクがあることには注意しなければなりません。
BPOの依頼前に受託会社のプライバシーマークなどの取得を確認し、契約の際は業務内容やデータ取り扱いについてもしっかり確認しておきましょう。定期的に情報セキュリティの監査を実施し、万が一情報漏洩などがあった際にどのように対応するのかも、確認しておくと安心です。

また、自治体業務は国や地方自治体が定める法令や条例に基づいて運営されています。そのため、BPO受託会社はこれらのルールに精通していることが必要です。契約時には、法令遵守に関する要件を明確にし、定期的に監査する仕組みを構築することが推奨されます。

契約・品質管理


外部委託業者が期待される品質を維持できない場合、住民サービスの低下やトラブルが発生する可能性があります。

こういったリスクを避けるため、業務の開始前に処理件数や作業時間といった、成果を測るKPI(重要業績評価指標)を設定しておくことが重要です。定期的な業務監査を実施して問題点を特定し、都度改善していけるような体制も必要です。BPOの契約条件に柔軟性を持たせ、必要に応じて見直しができる体制を整えましょう。

自治体BPO導入のポイント

自治体がBPOの導入を成功させるためには、明確な目的の設定や適切なパートナー選定などが重要です。導入をスムーズに進めるためのポイントを解説します。

明確な目的の設定


BPO導入の目的を明確にすることで、期待する成果を実現しやすくなります。
コスト削減や住民サービス向上、職員の戦略業務へのシフトなど、目的が明確であれば、それに合ったBPO受託会社や契約条件の選定が可能です。目的を明確にしておくことで、導入後の効果測定や評価も容易になるでしょう。

適切なパートナー選定


自治体業務には自治体ならではの特徴があり、それを理解している受託会社を選ぶことが、自治体がBPO導入を成功させるカギです。選定時は自治体業務の実績と経験を確認し、セキュリティ体制、運用実績、サポート内容、価格などの評価項目を決めて総合的に評価しましょう。自治体の独自要件に柔軟に対応できるかも見極めが必要です。

契約・ガバナンス体制の整備


BPO受託会社との契約内容を明確に定め、運用中のガバナンスを確保します。業務範囲や期待される成果を具体的に定義して、役割と責任を明確化しましょう。定期モニタリングを通して、進捗状況や業務品質を監視し、改善を提案する仕組みを構築することも重要です。万が一トラブルが発生した場合の対応手順も契約書に明記し、リスク管理をおこないましょう。

スムーズな移行計画


現行業務からBPO運用への移行を円滑に進めるための計画を立てます。BPOを導入することで、業務の委託やプロセスの変更に伴い、運用体制を再構築する必要もあるかもしれません。新しい業務フローやBPOの目的を職員に周知し、運用のための研修なども実施しましょう。
引継ぎ期間はBPO受託会社と綿密に連携し、問題があった場合は協力して改善しながら、スムーズなBPOの運用体制を構築しましょう。

BPOを導入して自治体業務を効率化

労働人口の減少や、住民ニーズの多様化などにより、自治体業務には変革が求められています。ただし、自治体の職員も減少傾向にあり、人材を業務の変革に割くのは難しいのが現状です。そういったなかで、自治体向けBPOは自治体業務の効率化を実現するための有効な手段となるでしょう。職員の業務負担の軽減や住民サービスの質向上を目指すために自治体向けBPOの導入を検討してはいかがでしょうか。

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