派遣を理解する3つのポイント

派遣を理解する3つのポイント

派遣にはさまざまな法律やルールがあります。派遣依頼に慣れないうちは、不安になったり混乱したりすることも多いのではないでしょうか。そこで今回は、2022年に開催したリクルートスタッフィングのセミナーをもとに、派遣を理解するためにまず押さえておきたいポイントをまとめました。基礎を確認・理解したうえで、派遣という働き方を活用しましょう。

派遣法の歴史から学ぶ派遣の背景

日本で派遣法が施行され成立したのは1986年と、派遣の歴史はそこまで長くありません。派遣法施行成立後も規制緩和があったり規制強化されたり、時代の要請を受け、さまざまに変化してきました。大きな流れをおさえておくと、派遣という働き方の理解が深まるかと思います。

派遣法が施行された成立した1986年時点では、派遣できる業種は13業務8形態に限定されていました。その後、約20年にかけては規制緩和がされ、最終的には5業務を除き、全業務可能となりました。2010年頃からは、再び規制強化となり、規制緩和によって広げすぎたものを引き締め、派遣労働者の権利が保護される時代がありました。

派遣法成立からちょうど30年を迎えた2015年には、抜本改正ということで全体的なルールが見直される機会がありました。そして、昨今は働き方改革の流れを受け、同一労働同一賃金という概念に基づき、適正な待遇に重点が置かれています。

派遣法の歴史については、こちらの記事も参考にしてください。
労働者派遣法①|わかりやすく解説「派遣法」の歴史【前編1986〜2004】
労働者派遣法②|わかりやすく解説「派遣法」の歴史【後編2008〜2020】

人材派遣を理解する3つのポイント

派遣は臨時的・一時的な人材活用法であるため、派遣スタッフにとっては期間や職場を固定せず、働きたいときに働けるという利点がある反面、不安定でもあります。また、短期的な働き方がそぐわない職種もあります。そのため、派遣には派遣スタッフを守ることや、適切なサービスを提供することを目的とした、いくつかの特徴があります。まずは以下の3点を抑えておきましょう。

1.派遣スタッフの雇用主は派遣会社
2.派遣可能な業務業界・職種が限定されている
3.派遣可能な期間が限られている

1.派遣スタッフの雇用主は派遣会社

派遣を理解するうえではじめに抑えておきたいポイントは、派遣スタッフの雇用主は派遣会社であることです。

例えば、直接雇用は、企業と労働者が一対一の関係にあります。当然ですが、この間で雇用契約が結ばれ、業務指示や労務管理が行われます。

一方、派遣契約は、派遣会社(派遣元)・派遣労働者(派遣スタッフ)・派遣先企業の3者関係です。雇用契約は派遣会社と派遣労働者の間で結ばれ、賃金の支払いや福利厚生の提供は派遣会社が行います。ただし、業務指示と労務管理は派遣先企業が担います。

3者間の人材活用という点では、業務委託という方法もあります。業務委託契約は発注者、受託者、労働者による3者関係です。

派遣との違いは、業務指示や労務管理まで受託者が行う点にあります。そのため、あるプロジェクトや事業を丸ごと任せる(アウトソーシング)でよく活用される方法です。もし、発注者から労働者に対して指揮命令や労務管理を行ってしまうと、それは「偽装請負」となります。実態は労働者派遣であるにもかかわらず、形式を請負契約のように偽装する行為とみなされてしまうので注意が必要です。

派遣契約も業務委託も3者間での取引になりますが、上記のような違いがあることをご認識ください。

2.派遣可能な業務業界・職種が限定されている

どんな業界、業種にも派遣を活用できるわけではありません。派遣には受け入れが禁止されている5つの業務があります。

例えば、医療に関わる業務には、医師や看護師など、専門知識を持ったチームの構成員が互いの能力や治療方針を把握しあい、十分な意思疎通のもとに業務を遂行することが不可欠です。臨時的・一時的に労働力を提供する労働者派遣はこれにそぐわないことから、派遣することが禁止されています。

派遣が禁止されている業務については、こちらの記事も参考にしてください。
派遣が禁止されている業務|知っておきたいリーガル知識

3.派遣可能な期間が限られている

派遣労働という働き方およびその利用は臨時的・一時的なものでなければなりません。そのため、常用代替(直接雇用の労働者を、間接雇用である派遣労働者に置き替えてしまうこと)を禁止する目的から、派遣受入期間には上限が設けられています。

派遣には、「契約期間に定めのある有期雇用」「契約期間に定めのない無期雇用」の2種類があります。3年ルールが適用されるのは、有期雇用の派遣です。

派遣の有期雇用契約とは、雇用期間を制限し、契約終了を迎える前に派遣スタッフ、派遣先企業の意向を確認して更新するか否かを決めていくという働き方です。一方、無期雇用契約では、定年という一つのバーはあったとしても、雇用契約の更新を都度交渉する必要がありません。

個人単位の期間制限

契約期間に定めのある雇用契約(有期雇用)には、ふたつの制限があります。まず一つ目は「個人単位の期間制限」です。例えば、派遣スタッフAさんが人事課での就業をスタートしました。3年後、Aさんは同じ人事課で働くことはできません。業務を変えたとしても同一組織内での派遣受入は禁止されています。また、途中で派遣会社が変わったとしてもこの3年はリセットされることがありません。Aさんが行っていた仕事は、別の方にお願いをすることになります。

しかし、Aさんが同一の派遣先企業で二度と働けないわけではなく、別の組織であれば、また新たに最長3年就業することができます。ただし、派遣先企業から「Aさんでお願いします」と指名することは特定行為となるため、できません。どの企業に誰を派遣するかは、派遣会社に決定する義務があります。

事業所単位の期間制限

派遣の有期雇用契約に適用されるもう一つの3年ルールは、「事業所単位の期間制限」です。

事業所Aを例にあげて解説します。事業所Aの部署Aで就業を開始したAさん。途中でBさんCさんDさんも事業所Aで派遣として働き始めました。それぞれ就業開始時が異なっても、事業所単位の3年ルールは初めに働き始めた方に合わせます。つまりAさんが就業を開始した日を起算日として3年です。ただし、BさんCさんDさんは意見聴取をすることで延長することができます。

<意見聴取の目的>
意見聴取には、派遣の常用代替を防止する目的があります。例えば、事業所Aが派遣スタッフAさんの受け入れを開始した時点では、派遣社員は正社員の半分ぐらいだったとします。しかし、3年経ってみたらその割合が逆転をしていたということがあったとすると、事業所Aでは派遣スタッフを正社員の代わりに活用している(常用代替している)恐れがあります。よって、事業所単位の期間制限による意見聴取には、「派遣先の事業所単位できちんと確認をしてから次の派遣受け入れを開始してください」という確認が根底にあります。

派遣の期間制限に関するルールは少しややこしいですが、派遣受入には3年の期間制限があること、期間制限には、個人単位と事業所単位の2種類があることを認識しておきましょう。

派遣受入期間については、こちらの記事も参考にしてください。
【抵触日】派遣受入期間の制限|知っておきたいリーガル知識

まとめ

派遣依頼をする前に抑えておきたい派遣の特徴をお伝えしました。疑問に思うことや分からないことはリクルートスタッフィングの担当者までお気軽にご相談ください。

後藤 裕治

株式会社リクルートスタッフィング
総合戦略推進部


2011年1月、株式会社リクルートスタッフィング入社。2000年より人材派遣業界に携わり約12年間首都圏を中心に派遣営業経験を経て、2012年総合戦略推進部へ異動。総合戦略推進部では、営業部門と連携し取引先へ様々な情報提供やご提案をおこないながら、労働関連法改正時やお客様ニーズに応じて延べ100回以上のセミナーも実施。

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