【事例紹介】発達障がい者の就業|適した業務や接し方のポイント

2022.09.05

【事例紹介】発達障がい者の就業|適した業務や接し方のポイント

発達障がいは、生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態です。しかし、大人になってから診断され障がいを認識される方も多くいます。特性に応じた支援を受けることができれば十分に力を発揮できる可能性があります。そこで今回は、発達障がいとはどのような特性があるのか、適した業務や職場での接し方のポイントを紹介します。実際に働かれている方の事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

発達障がいとは

発達障がいは、脳機能の発達に関係して起こる先天的な障がいです。幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がみられることが多いものの、徐々に症状が目立たなくなるケースもあれば、就職してから気づくケースもあります。

発達障がいがある人は、コミュニケーションや対人関係をつくるのが苦手な傾向にある一方で、なにかひとつの物事に対して極めて高い集中力を発揮することがあります。スポーツ選手や起業家のなかに発達障がいの人が見られるのは、そのような特性からでしょう。

ただし、自身に障がいがあることに気づいていなかったり、周囲の理解が得られなかった りすると、ストレスや自信喪失につながり、2次障がいとして気分障がい(鬱など)を後天的に発症するケースもあります 。

発達障がいには、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)、学習症(学習障がい)、チック症、吃音などが含まれます。同じ障がい名でも特性の現れ方が違ったり、いくつかの発達障がいを併せ持ったりすることもあります。代表的なものを紹介します。

ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)

ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)は、「言葉の発達の遅れ」「コミュニケーションの障がい」「対人関係・社会性の障がい」「パターン化した行動、こだわり」などの特徴をもつ障がいです。言葉や視線、表情、身振りなどを用いてコミュニケーションをとることや、自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを読み取ったりすることが苦手です。また、特定のことに強い関心をもっていたり、こだわりが強かったりします。感覚の過敏さを持ち合わせている場合もあります。

ADHD(注意欠陥・多動性障がい)

ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、発達年齢に比べて、「落ち着きがない」「待てない(多動性-衝動性)」「注意が持続しにくい」「作業にミスが多い(不注意)」といった特性がある発達障がいです。大人になると、落ち着きのなさなどの多動性・衝動性は軽減することが多く、多くの困難を経験していても、その症状は目立ちにくくなります。

LD(学習障がい)

LD(Learning Disability)は、全般的な知的発達には問題がないのに、読む・書く・計算するなど、特定の学習のみに困難が認められる状態をいいます。その背景には、読み書きや計算に求められる何らかのステップ(視覚・形態認知、音韻への変換・処理、数概念の処理など)に何らかの機能障がいがあると考えられます。

発達障がい者の雇用状況

障がい者雇用促進法の改正によって、2018年4月より発達障がい者を含む精神障がい者の雇用が義務化されました。また、障がい者雇用率(法定雇用率)の算定基準に加えられたこともあり、発達障がい者の就業者数は年々増加傾向にあります。

厚生労働省の「平成30年度障がい者雇用実態調査」によると、従業員規模5人以上の事業所に雇用されている障がい者数は82万1,000人で、そのうち発達障がい者は3万9,000人とのことです。また、就業中の方の精神障がい者保健福祉手帳の等級は3級が48.7%で最も多く、症状別では「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障がい」が76.0%と最も多いことが分かりました。

発達障がい者に適した業務

「平成30年度障がい者雇用実態調査」によると、発達障がいのある方の現在の職業は、以下のような結果でした。

・販売 39.1%
・事務的作業 29.1%
・専門的、技術的職業 12.0%

発達障がいの人全般に向いているのは、マニュアルがしっかりとあり、コツコツ続けられる仕事だと言われていますが、発達障がいでも障がいの種類によって適している業務は異なります。

ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)の方に向いている業務

ASDの方に向いているのは、ひとつの物事に抜群の集中力を発揮できるという特性を生かした仕事です。例として、プログラマーや研究職、校正者が挙げられます。また、決まった作業を繰り返すことが得意な方も多いため、ルーティン業務中心の事務職や工場のライン作業に適性がある場合もあります。他人とのコミュニケーションを多く取る必要のない仕事が向いているでしょう。

ADHD(注意欠陥・多動性障がい)の方に向いている業務

ADHDの方に向いている仕事は、旅行ジャーナリストや物作りに関する仕事や料理人などが挙げられます。毎日同じことをするのではなく、その日その日で違う事をできる職業だと集中力が途切れにくくなります。逆に、集中力が続きにくいので同じことをコツコツと続けていく事 は苦手とされています。

LD(学習障がい)の方に向いている業務

LDの方に向いている業務は、苦手な能力によって異なります。例えば、「失読症」ならば、視覚で物事を把握できるデザイナーやカメラマンなどが向いているでしょう。近年はさまざまなITツールやアプリケーションがあるため、このようなツールで苦手なことをカバーすることもできます。

その他の職業でも、配慮や雇用管理を工夫する、特徴を短所ではなく「長所」「強み」として活かす ことで、労働者が持つ力を十分に発揮できる場合があります。

職場における発達障がいの方への接し方のポイント

発達障がいの方への接し方のポイントを5つの場面からご紹介します。基本的には、一般的な同僚と同じように接するのが望ましいでしょう。障がいの有無に関わらず、急な関係作りは難しいものです。本人も周囲もお互いに慣れてきたら、個々の特性に応じて、柔軟で自然な関係作りを目指しましょう。

参考
厚生労働省「精神・発達障害者しごとサポーター 養成講座 」

出勤時

他の同僚と同じように、まずは挨拶から。緊張のため自分からの挨拶がなかなかできない場合であっても、周囲から挨拶されると歓迎されていると感じて緊張が緩和される場合もあります 。

困っていることがありそうだったら

何か困っていることがあるのか、声をかけてみましょう。困っているとのことであれば、内容に応じて解決方法(誰に聞けばよいかを含め)を一緒に考え、困っていないということであれば、そっとしておきつつ、指導・管理担当者等に一声かけておくのが望ましいでしょう。

メモをとるのに時間がかかるようだったら

書面を準備して説明するとよいでしょう。メモを取る習慣が身についていても、指示のどこが重要なのかを判断できず、一言一句全てをメモしようとしてしまう場合があります。メモ作業を極力少なくするために、仕事の指示は口頭のみではなく、書面で提示し口頭で補足するなどの配慮があるとスムーズです。

休憩時間にひとりでいたら

「もしよかったら」という前提で輪に加わることについて声をかけたうえで、本人の主体性を尊重するのが望ましいでしょう。休憩時間は独りで過ごす方がリフレッシュできる人もいたり、日によっては輪に加わりたい場合もあったりするため、可能な限り本人の希望に沿って声をかける(かけない)とよいでしょう。

社内イベント(歓迎会や飲み会)があるとき

他の同僚と同様に声をかけてみましょう。最初から「参加しないだろう」と決めつけず、例えば「参加は強制ではない」といった前提で参加希望を確認し、本人の主体性を尊重するのが望ましいです。

発達障がい者の活用事例

リクルートグループが運営する障がい者向け人材紹介事業アビリティスタッフィングをとおして就業された発達障がい者の方の事例を紹介いたします。
※年齢は取材時のときのものです

得意な仕事に集中できる/大手特許事務所 校正担当(28歳・女性)

発達障がいの傾向があると数年前に診断されていたものの、特に困ったことはなかったので障がいがあることを伏せて仕事をしていたAさん。しかし、税理士事務所で働くようになってから、いつまでたってもできないこと、わからないことが多く、発達障がいの影響を疑うようになりました。できないことも多くあり、障がいをオープンにして苦手なことは避けていく働き方をしていかないと難しそうだと思ったため、障がい者手帳を取得されました。

<現在のお仕事>
大手特許事務所で書類の校正作業の仕事をされています。得意な仕事内容のうえ、ひとつのことに集中して仕事ができるので、とても仕事がしやすいとのこと。翻訳の勉強をしていて 、今後は英語力を身につけ 仕事に活かしていけたらと考えているそうです。

フルタイム勤務で残業にも対応/金融業 法務部(41歳・男性)

大学卒業後、正社員として金融業・商社・不動産管理に従事していたBさん。自分自身に障がいがあるとは思っていませんでしたが、たまたまテレビで発達障がいの特集番組を見て、もしかしたら自分に該当するのではと思い、診察を受けたところ、発達障がいと診断されました。

<現在のお仕事>
金融会社で会社の業務や規定が各種法令に則っているかチェックする仕事をしてされています。フルタイム勤務で、残業にも対応。自分の障がい特性や適性に合った仕事をさせてもらっているこのこと。今後、仕事は長く続けていきたいと思っているので補助的なお仕事から担当業務を持たせてもらえるように成長していきたいと考えられています。

仕事と並行して学位・資格 の取得を目指す/テレビ局 経理事務(27歳・女性)

発達障がいの診断を受けるまでは、非常勤としてフルタイムで働いていたCさん。発達障がいの診断を受け、医師の後押しがあったことと、自身の症例では手帳が不要になれば返還が可能なことを知り、障がい者手帳を取得されました。

<現在のお仕事>
テレビ局の経理課で、伝票審査の業務をされています。 就業時間を段階的に伸ばしていき、フルタイム勤務となりました。とても働きやすい環境で、自分の強みを生かせる仕事をさせていただいているとのこと。また、通信大学に進学し、仕事と並行して学位の取得、さら簿記2級の資格取得を目指し、仕事に活かしていきたいと考えられています。

まとめ

発達障がいの方は、得意なこと ・苦手なことが明確に分かれているケースが多くあります。アビリティスタッフィングでは、それぞれの特性や希望に合わせてお仕事のマッチングをいたします。 障がいの特性、また一人ひとりの特性を知ったうえで、やりがいを感じられる職場環境を作っていきましょう。

リクルートグループが運営する障がい者向け人材紹介事業アビリティスタッフィング

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