派遣と業務委託(BPO)の違い|適している業務、注意すべき比較ポイント

2022.04.20

派遣と業務委託(BPO)の違い|適している業務、注意すべき比較ポイント

「自社で採用をしている時間がない」「一時的に人材が必要」といった場合、派遣や業務委託といった外部人材を活用する手段があります。派遣は、「派遣会社と派遣スタッフ、派遣先企業」、業務委託は「受託会社と登録スタッフ、委託会社」の3者間での取引になりますが、その目的や向いている業務が異なります。また、法律上の観点からそれぞれ注意したいこともありますので、違いを確認しておきましょう。

派遣とは

派遣とは、派遣会社に雇用された派遣スタッフを派遣先企業に派遣して就業してもらう仕組みです。派遣スタッフは、派遣会社と雇用契約を結んでいる労働者ですが、日々の業務指示や労務管理は派遣先企業が行う必要があります。

派遣の目的

人材派遣の目的は、おもに「人材が不足している業務を補うための人材確保」であり、業務を実施した時間に対して報酬が支払われます。

派遣が向いている業務

派遣は派遣先企業で業務指示を行う必要があるため、社内で継続的に行われている業務の一時補填に適しています。たとえば、決算期や繁忙期など人手が不足する時期に合わせて活用することで、正社員の業務負担軽減や、ミスの削減にもつながります。

また最近では、Webサイトの作成や運用、新規事業の立ち上げにおける法務手続きなど、専門的なスキルを必要とする業務を任せる「プロフェッショナル派遣」の活用も進んでいます。さらに、派遣期間中に実際の働きぶりを見て、直接雇用化のオファーもできるため、入社後のミスマッチを軽減した採用にもつながります。

派遣が向いている業務の例

・社内で継続的に行われる業務
・決算や年末調整などの定型業務や高度なスキルが求められる業務
・現場の社員が直接指示を出す必要がある業務
・業務指示はできるものの、Web制作など社内にスキルが担保されていない業務
・事業立ち上げなど、専門知識を有し短期的に即戦力として任せたい業務

業務委託(受託会社へのアウトソーシング)とは

業務委託とは、その名のとおり、自社で対応できない業務を外部に委託することです。業務を発注する側と引き受ける側は雇用関係を結ばず、対等な立場で依頼を受けます。正確には、日本の法律において「業務委託契約」という契約は存在せず、「請負契約」と「委任契約」の2つの契約形態があります。

請負契約
請負契約は「成果物の納品」に対して報酬を支払う契約です。受託会社は業務を完成させる義務を負い、業務に従事する労働者に対する業務指示や労務管理も受託会社が行います。発注者である委託会社が業務指示を行うと「偽装請負」とみなされるので注意が必要です。

委任・準委任契約
委任・準委任契約とは、「特定の行為の遂行」に対し、報酬を支払う形態です。弁護士や税理士などに法律行為を行う業務を委託する場合は「委任契約」、弁護士や税理士に限らず法律行為以外の業務を委託する場合は「準委任契約」となります。

業務委託の目的

業務委託の目的は、「依頼した業務の納品もしくは遂行」であり、成果物の納品(請負契約)や業務の実施(委任・準委任契約)に対して報酬が支払われる形態です。

業務委託が向いている業務

業務委託に向いているのは、企業の中心業務から外れるノンコア業務と言えるでしょう。長年のノウハウや経験が必要とされる専門的な業務をプロに委託することで、社内人材をよりコア業務へ集中させることができます。

業務委託が向いている業務例

・人事や経理といった間接業務
・社内ですべて行わなくても問題のない業務
・直接管理しなくてよい業務
・IT関連部門などの専門技術や知識が必要とされる業務
・採用活動、プロジェクトなどある程度まとまった業務
・新規事業の立ち上げなど専門性や経験を必要としながらもスピーディーな業務実施が求められる業務
・社内スペースや必要設備の準備が難しい業務

BPOとアウトソーシングの違い

業務委託のひとつとして、「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」があります。BPOは、業務の一部を委託するのではなく、業務プロセスの設計から運用までを一括して委託、もしくは移管することをいいます。そのため、業務委託と比較し、期間も長期になることが多くあります。

BPOに関しては以下の記事も参考にしてください。
プロセス設計から委託する「BPO」|人材不足解消と業務効率化に

個人事業主(フリーランス)へ依頼する業務委託

委託会社を通さず、個人に直接業務を依頼するケースもありますが、これも業務委託の一部と考えられます。企業に依頼するほど大規模な業務ではない場合や、チームとしてのまとまった労働力より専門的なスキルや知識を必要としている場合には、フリーランスの活用もひとつの選択肢です。

派遣と業務委託の比較ポイント

派遣と業務委託、どちらを利用したらよいのか悩む方も多いと思います。そもそも目的が異なる人材活用方法ですが、比較するうえで特に注意したい点は、指揮命令や依頼できる業務、期間などです。

業務指示・指揮命令

派遣と業務委託における大きな違いは、業務指示や指揮命令の可否です。派遣は派遣先が業務指示を行う必要がありますが、業務委託においては、委託会社が請負人の労働者に対して直接、指揮命令を行うと「偽装請負」とみなされるため注意が必要です。労働時間や就業場所、服装、業務の進め方などを委託会社が直接労働者に指示することはできません。

派遣では、依頼したい業務の経験やスキルを派遣スタッフが持っていたとしても、業務に慣れるまでは派遣先でのフォロー、日々のマネジメントが必要になります。一方、業務委託では、自社で教育・管理する必要がない反面、社内にスキルやノウハウが蓄積されていかないという懸念点もあります。

業務

派遣においても業務委託においても、依頼できる業務は契約で交わした内容のみとなります。
また、派遣ではそもそも、医療関連業務や建設業務など、受け入れが禁止されている5つの業務があります。

派遣が禁止されている業務に関しては以下の記事も参考にしてください。
派遣が禁止されている業務|知っておきたいリーガル知識

期間

派遣労働という働き方およびその利用は臨時的・一時的なものでなければなりません。そのため、常用代替(直接雇用の労働者を、間接雇用である派遣労働者に置き替えてしまうこと)を禁止する目的から、派遣受入期間には3年の上限が設けられています。60歳以上など例外となる派遣スタッフを除き、引き続き同じ職場・部署で継続して就業してもらう場合、正社員・契約社員・無期雇用派遣社員など、雇用形態を切り替えなければいけません。一方、業務委託には期間制限がなく、契約で取り決めた期間依頼することが可能です。

派遣受入期間の制限に関しては以下の記事も参考にしてください。
【抵触日】派遣受入期間の制限|知っておきたいリーガル知識

コスト

派遣と業務委託にかかるコストは、それぞれ派遣費用と業務委託費用です。いずれも保険料などを負担する必要がないことは、企業にとってメリットのひとつと言えるでしょう。

ただし、業務委託の場合はある程度まとまった業務を管理も含めて委託するため、比較的コストが高くなります。とくに専門性の高い業務の場合、報酬が高額となり、直接雇用するよりもコストがかかるケースもあります。ただし、それば派遣においても同様です。いずれも専門知識や高スキルを要する業務を依頼する場合は費用がかかるため、コスト削減を目的としている場合は注意が必要です。


派遣と業務委託(BPO)の活用事例

法律やルールの違いは理解したものの、どのようなケースが派遣に向いているのか業務委託に向いているのかイメージしにくいと思われる方も多いと思います。そこで、実際に派遣を活用された例と業務委託(BPO)を活用されたケースをリクルートスタッフィングの事例でご紹介します。

派遣の活用事例

医療機器を扱うA社ではリースの受注受付~在庫管理、リース返却管理などの一連の業務を担う受注センターを持っています。倉庫や商品ごとに在庫管理の特性があり、ルールが煩雑なため、それぞれに管理する社員が必要です。そのため、派遣スタッフをそれぞれの社員とペアで配置し、直接指導&サポートする形で派遣を活用されています。

POINT
社員のサポートやアシスタント業務、社内管理者と密に連携をとる必要のある業務は派遣が適しています。

業務委託(BPO)の活用事例

これまでの企業向け卸業務に加え、個人顧客から直接オンライン受注を受けることになったB社。受注センターの業務が多忙となり、年間を通じで業務量の増大が見込まれていました。現状の受注業務は定型化されていましたが、新規受注は初めてのことが多く、業務設計なども煩雑で社員の手が足りない状況でした。そこで、既に定型化されている業務をBPOとして切り出すことにより、社員は新たなオンライン受注の仕組みをつくる業務に集中することができました。

POINT
新たな事業やサービスに取り掛かったり、業務整理を行ったりするために、明らかに人的リソースの不足が見込まれる際、社内管理する必要がない定型化業務の切り出しなどに業務委託(BPO)は適しています。また、社内にノウハウがなく、定型化されていない業務の仕組みづくりから依頼することも可能です。

まとめ

人材の確保が難しくなっている今、必要な時に必要なスキルを持った人材を短期間で活用したり、一部の業務を外部に委託したりする派遣や業務委託の活用は、多くの企業にとって欠かせなくなっています。外部人材の短期的活用という点では派遣と業務委託も共通ですが、それぞれ目的や適している業務が異なるので注意が必要です。目的やルールの違いを理解したうえで活用しましょう。

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