派遣スタッフの福利厚生|派遣先の配慮義務とは?

2024.03.14

派遣スタッフの福利厚生|派遣先の配慮義務とは?

派遣スタッフの福利厚生は基本的に雇用主である派遣会社(派遣元)が提供するものですが、派遣スタッフが実際に就業することになる派遣先企業の福利厚生施設(食堂・休憩室・更衣室)に関しては派遣スタッフの利用を認めることが義務づけられています。派遣スタッフの安定就業のためにも、福利厚生について確認しておきましょう。

法定福利厚生は派遣会社(派遣元)が提供

健康保険や雇用保険など、法律で定められる福利厚生に関わる費用は、雇用主である派遣元の会社が負担します。

なお、年次有給休暇を与える義務は、派遣会社にありますが、創立記念日などで派遣先が法定外休暇を設けている場合は、派遣契約に基づいて決定されます。

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法定外福利厚生は、派遣会社・派遣先企業から提供

福利厚生に対する基本的な考えは「同一労働同一賃金」

同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

同一労働同一賃金という言葉からイメージする待遇は、給与や賞与・各種手当といった賃金にかかわる点であると思いますが、それだけではありません。2020年の法改正を経て、賃金のみならず福利厚生やキャリア形成・能力開発支援等も含めた「待遇全体」での格差解消が企業に求められています。

派遣会社は、待遇差改善を図る具体的な方法として「派遣先均等・均衡方式」か「労使協定方式」のいずれかを採用し、派遣スタッフの待遇を定めます。

そのため、派遣スタッフの法定外福利厚生は、派遣会社が「労使協定方式」「派遣先均等・均衡方式」のどちらを選んでいるかによって異なります。

派遣スタッフの待遇決定方式が「労使協定方式」の場合には、派遣スタッフの福利厚生は派遣会社と合わせる形となるため、派遣先企業の福利厚生の対象にはなりません(後述する福利厚生三施設を除く)。一方「派遣先均等・均衡方式」の場合、福利厚生は派遣先企業に合わせることになります。

派遣先均等・均衡方式の場合の福利厚生

派遣先均等・均衡方式は、派遣先の労働者と比較したうえで、派遣スタッフの「均等待遇」「均衡待遇」を図る方式です。

そのため、派遣会社は、比較対象となる派遣先の労働者のすべての待遇について派遣先から情報提供を受けます。すべての待遇には、基本給、賞与、手当のほか、教育訓練や福利厚生の情報も含まれます。

派遣会社は、派遣先からの情報提供を参考にガイドラインに従って、福利厚生を含む派遣スタッフのすべての待遇を決定します。

比較対象となる派遣先の労働者の待遇がすべて派遣スタッフに当てはまるわけではありません。職務の内容に違いがある場合、派遣会社は待遇ごとに検討し、違いに応じてバランスをとって決定します。

労使協定方式の場合の福利厚生

労使協定方式とは、派遣会社と労働者の過半数で組織する労働組合もしくは労働者の過半数を代表する者とが労使協定を締結し、派遣スタッフの待遇を決定する方式です。

この場合、派遣スタッフの賃金については、厚生労働省が公表する「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」を満たすことが求められます。

福利厚生を含む賃金以外の待遇に関しては、派遣会社の正規社員との間に不合理が生じないよう定められます。

福利厚生施設の利用に関しては、利用を認める義務が派遣先にある

派遣スタッフの待遇決定方式が「労使協定方式」「派遣先均等・均衡方式」いずれの場合でも、派遣先企業は「食堂」「休憩室」「更衣室」に関して、派遣スタッフの利用を認めることが義務づけられています。

そのほかにも、物品販売所や病院など、派遣先が設置・運営し、派遣先の労働者が通常利用している施設等については、派遣スタッフも利用できるよう配慮する義務があります。

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まとめ

同一労働同一賃金の観点から、賃金だけでなく福利厚生においても「正規社員と非正規社員の不合理な待遇差の解消」が企業に求められています。派遣スタッフの適切な待遇を整える責任は派遣会社にありますが、職場において享受できる福利厚生においては派遣先にも利用を許可する義務や配慮する義務があります。派遣スタッフが安心して就業できる環境を整えていきましょう。

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